動物行動学者の小西正一氏は,『小鳥はなぜ歌うのか』の中で,次のように言っています。「幼鳥を防音室の中で隔離して育てると,異
常な歌をうたうようになる。今までに研究された鳴禽類のなかで,隔離状態の下で正常な歌をうたった種は一つもない。どんな小鳥でもう
たう能力は先天的に持っているが,野生の仲間のようにうたうには,若鳥が成鳥からうたい方を習わなければ,うたえないのである。」
ウグイスなどの小鳥のさえずりは,本能的行動ではないのです。先天的に持っているうたう能力(本能)を基礎にしながら,若鳥の特定
の時期に,成鳥の歌を聴いて学習しなければ,野生の仲間のようには,うたえないのです。本能だけで生きている単純な動物も存在しますが,より複雑な動物になってくると,本能を基礎にしながら,学習して獲得する行動の
仕方が増えてきます。ボノボと呼ばれる類人猿の集団には,集団のルールがあり,ボノボの子供たちは,そのルールを学習して身につ
けます。それでは,人間にも,行動の仕方としての本能があるのでしょうか?
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