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さて皆さん、私はとうとう処置室にやってまいりました。担当の助産婦さんも来てくれました。
若く見えますがなかなかどうして、テキパキと手順を踏んでいきます。
「宝塚さん、陣痛が15分おきになったのは、何時頃?」
「え〜〜〜〜と、2:00AM頃だったかな〜〜〜〜(心臓バクバク)。」
「ふ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん‥‥‥‥。」
と言いながら内診する助産婦さん。ひょっとしたら、嘘だってのがばれてたかも知れませんね。
ところで皆さん、前回のお産を覚えていらっしゃいますか?
ここで一つ、覚悟の必要な事がありましたね。
(できてるよ、覚悟の一つや二つ。さあて“浣腸”よ、来〜〜〜い!)
と構えていたら、助産婦さんが、
「あー、もう7cm開大だ。浣腸できないね。」
と言うじゃありませんか。
(なんですと!?浣腸できないですと!?)
そりゃラッキーだ!!と一瞬喜びかけましたが、よく考えてみると、
浣腸でお産の進みに加速がつくことが知られていますね(ムスコの時もそうでした)。
腸の中身をきれいさっぱり出せば赤ちゃんが進むのに邪魔になるものが無くなるのと、
排せつする時の腸の運動そのものがお産を進ませるのと、二つの理由が考えられます。
妊娠初期などに下痢をすると、その刺激で流産してしまう事もあるという話も聞きます。
てことはですよ。
今の私のこの状態で浣腸でもしようもんなら、うんちといっしょに赤ちゃんまで出てくる可能性があるってわけですか!?
ムスコだって病院に入った時はたしか7cm開大で、それでもしっかり浣腸しましたから、
それを考えると二人目のお産というのは決して「慣れてるから平気」というものでは無いんだと、
このとき改めて思ったのです。
隣のナースステーションにもう一人、補助の助産婦さんが入ってきた気配があります。
さっきの助産婦さんがまた内診してくれて、
「あー、8cmだねー。やっぱり開くの、早いねー。」
と言いつつ、ナースステーションに戻って行きました。
ナースステーションから二人の助産婦さんの会話が聞こえてきます。
「今8cm。あー、宝塚さん二人目だから、産ませちゃおっか!」
う、産ませちゃおっか!?8cm開大で!?そ、それっていくらなんでも大雑把過ぎないか〜〜〜!!??
犬や牛じゃないんだぞ!!冗談じゃねぇ!!!ふざけんな!!!!!
と思っているところに助産婦さんまたもや登場。
「宝塚さーん、分娩室行くかー。」
「‥‥‥はい‥‥‥。」
素直な私。
前回同様、頻繁に来る陣痛をかわしつつ、自力で歩いて分娩室入りしました。
時間は6:00AM頃だったでしょうか。
分娩台では約2時間前にお産をした方が、経過観察のためにまだ休んでいました。
助産婦さんが彼女をストレッチャーでガラガラ運び出して行きます。
分娩室には他にも分娩台があるのですが、助産婦さん達の使い勝手がいいからでしょうか、
もっぱらこの台が使われるようなんです。
お産が重なったりしたらつい立て一枚で隔てただけの隣の分娩台で、2組のお産をさばくことになるのかしらんと思いつつ、
言われるままに台にのり、脚をひろげる私。
白い膝上まである木綿の袋を履かせられ、足台に固定。そして剃毛。そこで助産婦さんの「あれ?」の声。
「宝塚さん、前の時、ここ、こういうふうに切ったんだ!?」
「‥‥‥はあ‥‥‥。」
(”切った”んじゃないよ!”切られた”んだよ!!そこらへんハッキリ言っとくけど!!)
と心の中で思ったって、ハッキリ言ったことにはなりませんわね〜〜〜〜〜。
(しかもただ切られたんじゃないんだもん!!血腫になっちゃってぎゅうぎゅう絞られて、縫いなおされたんだもん!!)
心の叫びはまだ続くのですが、今はとりあえずお産に専念しなくてはいけませんね。
この後のことは、また後日お話しましょう。
(2000/1/6)


