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22時間半にも及ぶ帰省の旅を終えた私は、実家でもそれまでと同じように仕事をしていました。
「お産で実家にいるのに、なにも仕事をすることはないだろう。」と思われるかもしれませんが、
この仕事が好きなんだからしょうがないですよ、はい。
仕事も切れずにありましたし。
ただ今回は2度目のお産ということで、心のどこかに(根拠のない)安心感のようなものがあって無理をしていたのでしょうか。
ムスコの時と比べて、お腹がやたら張っていたんですよね。
ここで「お腹が張る」というのがどういう状態をさすのか、ご説明いたしましょう。
これはムスコの時の切迫流産の安静入院時看護婦さんに教えてもらって、その後、私が実感した事でもあります。
皆さんご承知の通り、お産というのは子宮の強い収縮によって起こります。
陣痛というのはその収縮に伴う痛みであったり刺激であったりするわけですね。
「お腹が張る」というのは、この「子宮が収縮している」状態をいいます。
通常の場合であれば、時期がくるまではその張りはすぐにお産に結びつくものではありません。
(運悪く結びついてしまった場合、“流産”とか“早産”とかいう事態になります。)
だいたい妊娠中に一度もお腹が張った事がない妊婦さんなんて、いらっしゃらないと思います。
「私は張った事がないよ。」とおっしゃる方は、たんに張ってる事に気付いていないだけのことでしょう。
では、具体的にどういった症状があるのでしょうか。症状はたった一つ。「お腹が硬くなる」ことです。
お腹に触ってみると、まるで子宮に石でも入っているみたいに硬くなります。ガチガチです。
痛みを伴う人もいるでしょう。キュ〜〜〜〜〜ッと子宮を絞られてるように感じる人もいるでしょう。
妊娠後期で大分お腹が大きくなってからキツイ張りがあると、息苦しく感じる人もいるかもしれません。
私の体験から言わせていただきますと、
やはり仕事が忙しかったり、精神的にストレスがあったり、立ち仕事などで体が疲れている時などに多く起こるようです。
そういう時には「あ、疲れてるのかも。」と思って、座るか、できれば横になって休みましょう。
通常の「張り」であればじきにとれて、また柔らかいお腹に戻るでしょう。
さて、5月24日のことです。なんとなく「小さな張り」がずーっと続いていて、ちょっと気にはなっていたんですよ。
でも持ってた仕事が終わるまではもう少し時間が必要だったし、予定日まではまだ数日あったので、
体をだましだまししながら仕事や家事手伝いなどをしておりました。
昼間、母と一緒にムスコや妹の子(つまり、ムスコのいとこですね)を連れて買い物に出かけ、
それに伴ってかなりな距離を歩いたり、急な坂道を登り降りしたりしました。それで体が疲れていたのでしょうか。
張りがなかなかとれないんですよ。しかもちょっとづつ強くなってきているようなんです。
「変だなー。」と思いつつ入浴し、夜の12時近くまでかかって手持ちの仕事を終わらせました。
いつもならこのまま寝て翌日仕事の梱包をするのですが、なんとなく「虫の知らせ」とでもいうのでしょうか。
この日はちゃんと梱包を済ませ、送り状まで書いてしまったんですね。
そうして25日の午前0時過ぎ、布団に入ったのです。
2:00AM頃、ムスコが「お腹が空いたー。」とむっくり起きました。
実は前日の買い物の後、いとことの遊びに夢中になって昼寝をしそびれてしまい、
5:00PM頃に夕食もとらずに眠ってしまっていたのです。
そりゃあお腹も減るだろうとバナナを食べさせ、もう一眠りしようと一緒に布団に入ったのですが、
すぐに寝入ってしまったムスコの横で、私はなんだか寝られなくなってしまったのでした。
いや、ムスコが起きる前からその徴候はあったのです。
ずっと張り続けているお腹が時々さらに強く張るんですね。
で、強く張ってる時は寝ようとしても寝られないんです。
疲れていたので強引に眠ろうとしてうとうとしだした時に、ムスコが起きたというわけです。
今度は本当に眠れなくなってしまいました。
お腹が強く張る時はどうしたことか尿意を催して、頻繁にトイレに行きました。
「膀胱炎?」と思いましたが、どうも違うようです(それまで3度、膀胱炎にかかった事がありました)。
「まさか・・・・・・いや、まさかね・・・・・・。」と、頭のすみに浮かんできた考えを打ち消しました。
だって、生理痛のようだったムスコの時とは、痛み方が全く違っていたんですから。
実際この時はまだ「痛い」という感じではなく、あくまで「張ってる」という感覚でしかなかったのです。
ところがそうしているうちに、お腹が強く張ってる間は横になる事すら辛くて、出来なくなっていきました。
布団の上で犬のように四つん這いになって頭を抱え込み、
歯を食いしばって何かに耐えているらしい自分の姿に気付いた時、
やっとこの張りが陣痛であることを認める気になったのでした。
一人目と二人目で陣痛のタイプが違うなんて、そんなことがあるの?と思うでしょう。あるんですよ、こんなふうに。
「お産は1回1回違うもの。」と言われる理由の一つは、ここにあるのだと思います。
ムスコの時はあまりに用心していて病院に連絡するのも入るのも遅れてしまった私ですが、
今回ははたしてどうだったのでしょうか。
それは次でお話する事にいたします。
(2000/1/4)


