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それでは出産後のお話をしましょう。ある意味、お産より痛くて悲惨ですよ。
覚悟はできましたか? では、いってみましょう。
「宝塚さん、男の子だよ、おめでとう。」という助産婦さんの声。
「ほんと? じゃ次(に産むの)は女の子だ。」と今の今まであった陣痛をものともしない私の返事。
「3700g!」とG先生。
すぐに、「あ、(赤ちゃん)おしっこした。」と助産婦さん。
赤ちゃんの鼻腔や咽にたまっている羊水をチューブで出して、身長体重の測定。
「あ、先生惜しい。3620g、おしっこの分減ったね。」と助産婦さん。
あ〜、和気あいあいですね〜。なんてのどかなんでしょうか♪
ムスコは身長50.0cm、体重3620g、胸囲33.5cm、頭囲35.0cmと、
なかなか立派な体格で生まれてきました。平成4年6月4日、2:44PM、妊娠第39週での誕生です。
母子手帳を見ると、分娩所要時間は「7時間46分」となっています。初産にしては早いですね。
普通分娩所要時間というのは「陣痛が10分おきになってから計りはじめるもの」だそうですが、
私の場合先に述べたような理由(「2」参照)で看護婦さんに10分おきになった時間を少し遅めに申告していたので、
本当の時間はこれよりもう少し長かったものと思われます。
そして2:47PM、胎盤娩出。
私は大丈夫でしたが、このとき胎盤が子宮内に残ったりすると、それを掻き出さなくてはいけない事になります。
医者が子宮内に手を突っ込んで掻き出した、という記事を読んだ事もあります。痛そうで気が遠くなりますね。
助産婦さんに産湯を使わせてもらってさっぱりと仕上がった赤ちゃんと対面した後、
G先生がさっきまで助産婦さんがいた位置に陣取りました。
しっかり椅子に座って、なにやら膣の辺りを見ているようです。
「宝塚さんね、会陰切開したんだけど、そこ以外に自然に裂けちゃったところもあるんです。尿道口の近く。
このままだとおしっこする時しみて大変だから、こっちも縫っときますね。
普通は麻酔使わないんだけど、あー、うーん、ここは使おうか。ちょっとチクッとしますよ。ごめんなさいね。」
(え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!?)
返事をする間もなく麻酔をかけだしました。
「会陰切開のところも、麻酔、かけますね。ちょっと傷が大きいから。」
(ええ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!?)
「会陰切開」の説明をいたしましょう。「会陰」とは膣口から肛門に至る、とても敏感な部分の事です。
「7」で説明したように、助産婦さんは膣口をあっちにひっぱりこっちにひっぱりして、
赤ちゃんが産道を降りてきやすいようにサポートするのですが、
赤ちゃんが大きかったり会陰部の皮膚が硬かったりして赤ちゃんの頭が出にくそうな時は、
わざと会陰をメスやはさみで切って膣口を広げ、赤ちゃんが出てきやすいようにするのです。
私が感じた「ギチッ、ギチッ、バチンッ!」というのがまさにそれだったのですね。
普通は陣痛がきていきんでいるときにあわせて切開するので、
ほとんど痛くはないのですが(ムスメのときは上手くタイミングが合って、ちっとも痛くなかったんですよ)、
このときは一度で切れないで私がいきむのを止めた瞬間に強引に切ったので、物凄い痛みを感じたワケです。
切開する時は、普通、麻酔はかけません。
切開した傷を縫合する時は病院によってまちまちですが、M総合病院ではかけないやりかたのようでした。
それを「麻酔をかける。」と言うのですから、傷はどんなことになっていたやら。
余談ですが、漫才出身の血の気の多い俳優で、
やくざとけんかして陰嚢をドスで切られた、でも自分は麻酔をかけないで縫ってもらったというのを自慢にしている人がいますが、もうお分かりのように、そんなのは出産経験者のうちでもかなりの人が、ごくあたりまえにこなしていることです。
それをことさらに自慢するなんて、ははっ、笑ってしまいますね。
「あのさ、あの糸取って。ぼくが好きな溶けちゃうヤツ♪」
G先生のご陽気な声が聞こえてきました。
会陰切開を縫合する糸は、1ヶ月くらいで溶けて体内に吸収されてしまうものを使う事が多いようです。
これなら抜糸の辛さに耐える事もありません。
ただし帝王切開の縫合では、従来の抜糸の必要な糸を使うようですから、混同しないようにしましょう。
しばらくチクチク縫っていたG先生ですが、
「う〜〜〜ん、ちょっと(膣の)奥の方の傷が縫いにくいなあ。んんん、ちょっとごめんなさいねー。」
と言うが早いか、肛門に指を突っ込んで、膣の内側の皮膚を表にひっくりかえすようにして縫い出しました。
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「ちゃんと縫っとかないと、後で大変な事になりますからね♪」
(ばかやろー、いきなり何すんだ!それならそうとちゃんと一言ことわってからやりやがれ!)
と私が思ったか思わなかったか、あなたはどっちだと思いますか?
元気な赤ちゃんを産んだと安心したのもつかの間、なにやらすごいことになってきましたね。
この傷が後でどうひびいてくるのか、詳しい事は次の回でお話しましょう。
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