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そうそう、分娩台に上がる前に、「陣痛って、どんな感じの痛みなの?」という疑問にお答えしましょう。
一口に「痛い」と言っても、いろいろなタイプの痛みがありますからね。
よく「ズキズキ痛む」「ひりひり痛む」「ガンガン痛い」「ニヤニヤ痛い」「キリキリ痛む」などと表現しますね。
実は陣痛はこのどれにも当てはまらないと思われます。
出産経験をお持ちの誰に聞いても、このような表現をした人はいないからです。
では、具体的にはどのような痛みなのでしょう?
聞いた事、読んだ事があるのは「子宮をわしづかみにされてるみたいだった。」とか、
「お腹がはじけるかと思った。」とか、
「大きな手で身体をまっぷたつにへし折られるみたいだった。」とか、様々です。
では、宝塚の女はどうだったのか?
私は「生理痛の猛烈にスーパースペシャルウルトラハードなヤツで、子宮を腰ごとしぼられてるよう。」でした。
こんなふうに書くとおちゃらけてると思われるかもしれませんが、これ以外の適切な表現が見つかりません。
生理痛の無い方には分りにくいと思いますが、ホントにこうだったんです。
で、この陣痛のある間は声も出ないし、痛いのに身じろぎ一つできないときたもんです。
少しは、イメージが湧いてきましたか? さて、それでは分娩台に上がるとしましょう。
それにしても分娩台って高いんですよ、上がる位置が。もちろん踏み台はありますけどね。
でも大きなお腹と陣痛でフラフラな妊婦さんが自力で上がるには、かなりハードである意味危険です。気を付けましょう。
分娩台の上で横になって、陣痛をやり過ごします。助産婦さんはテキパキとお産の準備を進めています。
滅菌シートを拡げたり、鉗子やはさみを並べたり、分娩台を「お産モード」に変形させたり。
「宝塚さん、ちょっと横向きのままいきんでみるか。」
「え? もういきんでもいいの?」
「うん、ためしにちょっとやってみて。」
(は〜〜〜〜、助かった〜〜〜、あ、陣痛きたきた、せーの)
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!はぁはぁはぁ・・・・・・・・」
「うん、陣痛の波にのってね。」
(波にのるの? 陣痛が来て、どこらへんでのればいいのかな? あ、またきた、せーの)
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!はぁはぁはぁ・・・・・・・・」
「うん、大丈夫大丈夫。じゃあ、今度は仰向けになってみようか。」
仰向けになった私の両足に、木綿でできた膝上まである長い袋を被せました。
たぶん衛生面での配慮と、妊婦さんは下半身がはだけたままですからね、保温の意味もあるんでしょう。
そして分娩台の足を乗せる台に、両足を乗せました。
ところがこの台が、今までの妊婦検診で乗ってた台の足台にくらべて、角度がキツイんです。
股関節はなるべく柔らかくしておきましょう。
さて、ここで皆さんが浣腸と並んでもう一つ「やだなー」と思っている事をしなければいけません。
「剃毛」です。
といっても陰毛をまるまる全部剃るわけじゃありませんよ。膣の周囲の部分だけです。
前から見たぶんには、なんら変わりありません。
ですから病院で剃られるのは嫌だからと自宅で自分で剃ってしまうと、もっと恥ずかしい事になります。
だいたい大きなお腹では、手が届きません。
剃らなければ出産時不衛生だし、会陰切開や自然に裂けた傷を縫合するのに邪魔になるし、
縫合の糸に絡まって引っ張られちゃうかもしれないし、とにかく目も当てられません。ここは覚悟を決めましょう。
「ガタン!」という音がして、分娩台のおしりを乗せる部分が下に下がりました。
「陣痛が来たら頭の上にあるレバーを握って、上に押し上げるようにしていきんでみて。」
(レバー? あ、これか、きたきた、せーの)
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!はぁはぁはぁ・・・・・・・・」
「うふふ、まだ一人目だもんねえ。二人目になると、いきむのも最初から上手くいくようになるんだけど。」
(へー、そうなんだ、やっぱりいきむコツがあるんだね。ふう。あ、またきた。)
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!はぁはぁはぁ・・・・・・・・」
しばらくこんな事が続いたでしょうか。赤ちゃんはちゃんと出てきてくれるのかしら?と思った私は、
「・・・・少しは赤ちゃん、進んできてますか? 自分ではよくわからなくて。」と助産婦さんに聞いてみました。
すると、「うん、ちゃんと進んできてるよ。見せたいくらいだ。」と言うじゃありませんか。
「え? もう見えるところまできてるの?」
「うん、見えるよ。めんこい頭が見える。おー、髪の毛、多いなー。」
(あともう少しだ、もう少しだ、もう少し。きた!!)
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!」
いよいよ赤ちゃんが生まれるのか!?でもちょっと疲れましたね。ひと休みしましょう。
(99/12/11)


