osumesu_.gif



ところで皆さんは、「陣痛がある間は妊婦はどうしているんだろう?」と考えた事はありませんか?
昔の人が言っていた「障子の桟が見えなくなる」程の痛みが何時間も、
場合によっては一日以上も続くなんて、想像もできませんよね。
のたうちまわってるんじゃないかしら?何かに掴まって必死で耐えてるんじゃないかしら?
そう思って不安になるのも無理のない事です。では実際はどうなのか?私はこうでした。

8:30AMに病棟に入って血圧測定、内診、浣腸などの検査、処置をし、
そろそろ10:00AM頃にもなっていたでしょうか?
トイレから出てきたら、母が心配そうにロビーに座っていました。
と思ってよく見たら、他の妊婦さんに付き添ってきたお母さんと、あれこれしゃべっていました。
考えてみれば彼女は経験者。どっしりしたものです。さらに、
「アタシさ、ちょっと孫(妹の子)の薬貰わないといけないから、小児科外来に行ってくるから。」
と言って、陣痛に耐える娘を残して、孫のためにさっさと行ってしまいました。あららら・・・・・・。
仕方がないのでロビーの椅子に座り、やはり陣痛が始まって私の前に入院してきたという妊婦さんや、
彼女のお母さんと話しはじめました。聞くとむつ市の隣の川内町(かわうちまち)から来たとのこと。
そうしていても陣痛は2分から5分くらいの間隔でやってきます。
陣痛がくると座っていられないので立ち上がって少し前屈みになって陣痛をやり過ごし、
陣痛が去るとまた座って話を続ける、というのをくり返しました。
「あれ〜、今宝塚ってところさいだの?」(←川内町のお母さん)
「そだのさ、お産で帰って来るのもゆ(陣痛到来)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(陣痛去る)るぐなくてさー。」(←私)
いや、笑い事でなく(←マジ)
陣痛の間は彼女のお母さんが腰をさすってくれたので、随分助かりましたよ。
むこうも経験者ですからね。どの辺りがツボなのか、わかるんでしょう、きっと。
つい笑ってしまいそうになったのが、そのお母さん、有効な陣痛がなかなか来ない自分の娘に向かって、
「ほれ、おめもよ〜ぐ見でおがせ。こうならねばわがねんだど。こったふうになるんだど。このふとみてに耐えるんだど。」
(訳:ほら、おまえもこの人をよく見ておきなさい。お産にはこういう陣痛が来ないといけないんだよ。
お産というのはこういうことなんだよ。ぎゃーぎゃー言ってないで、この人みたいに我慢するんだよ。)
と、私を指していった事です。あたしゃ、教材かい!?

さてそうこうしているうちに間が持たなくなってきたので、廊下を歩く事にしました。
病院の廊下には手すりがついているので、それに掴まりながらゆっくりゆっくり。
「陣痛があるのに歩けるの!?」と思うでしょう? 歩けるんですよ。陣痛がきたら立ち止まってやり過ごすんですが。
むしろ歩くのは子宮口を開く助けになっていいんだそうです。大変ですけどね。
ゆっくり歩いて時々立ち止まっていると、母が産婦人科病棟に上がってきました。
で、私を見るなり「・・・・飲み物要る?」と聞くじゃありませんか。
「?」と思いながら母の視線をたどって自分の身体を見ると、汗びっしょり。
気付きませんでした(←気付けよ、ふつー)。
「・・・うん、じゃ、何か欲しい・・・。」と言ったものだから、母はまた下の売店へと降りて行ってしまいました。
ぽつ〜〜〜〜〜ん‥‥‥‥‥。

陣痛が来たので立ち止まってふと足下を見ると、両足の間の床が濡れています。
一瞬失禁したかと思いましたが、すぐに違うとわかりました。「破水(はすい)」したのです。
みなさんご存知のように胎児は羊膜(ようまく)に包まれています。
この膜のおかげで胎児は細菌やウイルスに感染しないでいることができるのですが、
破水したとなると細菌やウイルスの侵入口ができたということですから、気を付けなければいけません。
落ちてきた羊水は少しづつだったので、たぶん羊膜の上の方が破れたんじゃないでしょうか?
「看護婦さんに言わなきゃ・・・・・。」と思っていると、向こうから私の様子を見に来てくれて、
私を見るなり「分娩室一つ空いてるし、ちょっと早いけど行こうか。」と言うじゃありませんか。
さっきまで話してた妊婦のお母さんとおばあちゃん(赤ちゃんからみたらおばあちゃんとひいおばあちゃん)の、
「がんばっせ、もう少しだして。夕方までには生まれるごった。今日だっきゃ“大潮(おおしお)”だね。
のエールを背に、お昼前に分娩室へと向かったのでした。
後で上がってくるだろう母に、よろしく伝えてくれるように頼んで。

やっと分娩室が出てきましたね。
これでついに出産か、と思ったあなた。ごめんなさい、まだまだかかるんです。初産ですから。
では分娩室でどう過ごしていたのか。それは次回にお話します。

(99/12/9)

osumesu_.gif

1.gif3.gif