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妊娠、出産を控えた女性の皆さん、こんにちは。だんだん暑くなって参りましたが、いかがお過ごしですか?
こう暑くなってくると、妊娠初期の方々はただでも辛いつわりがますます辛くなるし、妊娠中期でむくみの出ている方々は水分摂取を制限されるせいでひたすら喉が乾くし、妊娠後期にかかっている方々はそれこそ腕を伸ばすだけで汗が吹き出してくる、といったような、一日エアコンのきいたオフィスでスーツを着たまま仕事をしているダンナには想像も出来ないような地獄な毎日になったりします。
私はニ度の出産が両方とも似たような時期でして、初秋に妊娠が判り、冬になって年を越す頃に妊娠中期を迎え、早春のまだ寒い時期に妊娠後期に入り、二人とも39週で産みましたがその誕生日は2週間しか違わないという、とても上手・・・・いやいや、はたから見たら実に計画的な妊娠・出産でした。
いえ、実は本当は計画的だったわけでもなんでもなくて、ある事情に合わせた結果そうなったという、ただそれだけのことなんですが。
でも二度の妊娠、出産が似たような時期だというのはとても都合のいいもので、まず一生のうちにほんのわずかな時期しか着ないマタニティウエアを着まわしできる(もちろんサイズが前回と極端に違っていなければの話ですが)、あるいは上の子の新生児用の服や乳・幼児期の服をそのまま使えるなど、まぁハッキリ言ってしまえば要は「服」のことなんですが、特にマタニティ・ウエアなんかは子どものものと違って自分のものなので、前回は冬、今回は夏、な〜んて季節が全く違ったりすると、それだけでも出費が結構かさんでしまって、なんだか憂鬱になったりしますよね(え?なりませんか?)
宝塚市に引っ越してきてすぐに繋留(けいりゅう)流産をした事は「ムスコ編」で書きましたね。
子宮内に死んだ胎児が残っていると母体の為に良くないですし、次の妊娠の為にも、辛くても子宮の内容物を外に掻き出す処置をして、子宮内をきれいにしなければいけません。そしてその後3ヶ月間は、子宮の回復の為に避妊します。
11月に処置をして3ヶ月間避妊していましたが、その3ヶ月が終わる頃、また妊娠できるかどうか不安になっていた私は、その間毎日つけていた基礎体温表を持って産婦人科に行きました。
「排卵はちゃんとしていますね。ホルモンの働きを助ける飲み薬と注射で、しばらく様子を見ましょう。」
という先生の言葉で、それからも毎日基礎体温をつけ、生理の周期に合わせて産婦人科に通うようになったのです。
詳しい事はあまりよく覚えていないのですが、排卵日を境に黄体(おうたい)ホルモンの分泌量が増えるせいで体温は上がりはじめ、高温期に入ります。この黄体ホルモンは妊娠を継続させる働きがあるということなので、それを注射と飲み薬で補助しようというわけです。いえ、実際にきちんと血中の黄体ホルモンの量を調べたわけではないので、私の黄体ホルモンの分泌量が少なかったかどうかは判らないのですが、まぁ、これがまずだいたい一般的に最初に行われる方法だということなのかもしれませんね。
その後数カ月間は、生理が終わって何日か経った頃に産婦人科に基礎体温表を持って行き、排卵日に合わせてホルモン注射をし、先生の「今夜あたりが”チャンス”ですよ。」の言葉に従って夫婦で「努力」し、飲み薬を飲みながらもう一度受診して注射をしてもらい、それなのに次の生理が来てしまってがっかりするということが続きました。
そうして季節は初夏になった頃、ふと思った事がありました。
「今このまま不妊治療をしていてもし妊娠してしまったら、夏に帰省できなくなる???」
これは大問題でした。妊娠は心底したい、でも夏に帰省できなくなるのは切なさに身が焼かれるほど辛い。
考えに考えた末、一つの結論に達しました。それは、「秋になるまで、不妊治療をいったん休もう。」というものでした。
先生に相談してみると、「そうですね、そんなふうにちょっとひと休みしていたら、ひょいと妊娠する事ってよくあることなんですよ。解りました、それじゃ都合がよくなったらまたいらっしゃい。」とのことでした。
正直ほっとしました。夏に帰省できるからという事ももちろんありましたが、「不妊治療は休んでもいい」という先生の言葉に、義務感から必死で肩に担いでいた重すぎる荷物を下ろしてもらったような気がして、心の底からほっとしたんです。そうして夏の帰省がすんで、「そろそろまた産婦人科に行かなきゃなぁ。」と思った頃にまるで医者の言葉を裏付けるような身体の変調に気付き、市販の妊娠検査薬と産婦人科の診察で、妊娠している事を知ったのでした。
この時生まれたのがムスコですが、繋留流産から不妊治療、夏の帰省の為の不妊治療の休憩、妊娠、出産と、ムスメもほぼ同じ経過をたどって生まれました。二人の誕生日がごく近いのは、そういうワケなんですよ。本当に計画的だったのでもなんでもないんです。
「機械じゃないんだから」とはいえ、人の身体というのは、本当に不思議で面白いものですね。
え?どうしてそこまで夏の帰省にこだわったのかって?
そうですね。帰省なんて妊娠中期になって母体と胎児が安定してからでも、あるいは赤ちゃんを産んでからゆっくりしたっていいんですもんね。
でも私にはどうしても夏でなければいけない理由があったんですよ。冬や春ではダメな理由が。
「田名部祭」は夏しかやってないんですから。
(2000/6/4)


