平成22年の桃の管理

平成22年は生育初期(4月初旬)の低温、霜災害によりやや遅い生育となりました。
園地によっては“灰星病”が発生し大きな被害が出ました。

また、5月下旬の大雨とその後の高温、更には6月後半から7月初旬の多雨により清水白桃では全般に核割れや生理的落果が多く発生しました。

我が農園では清水白桃の袋掛けを遅らせ、出来るだけ核割れや生理的落果に対応する体制をとりました。
その効果もあってか袋掛け数の80%以上の収穫を行うことが出来ました。

このようにいろいろなことがありましたが、総じて糖度が高く

味覚の点では消費者の方には喜んでもらえたのではと思っています。
平成22年の1年間の管理状況につきましては、下記のとおりです。

なお、栽培している桃の品種については、「桃の栽培品種」をご覧下さい。


《目  次》
1.冬季剪定
2.摘  蕾
3.ツリー&鳥よけ
4.防草シートの敷設
5.花粉採取と受粉
6.環境に配慮した防虫対策
7.予備摘果(1回目)
8.袋掛け
9.順調な成長
10.初出荷
11.「白鳳」の本格出荷
12.「清水白桃」の収穫
13.「おかやま夢白桃
14.「白麗」「サンゴールド」
15.「夏(秋)剪定」
16.「部分深耕」


冬季剪定

冬季剪定

剪定については、一昔前までは冬季剪定で一気にすべての枝の調整を行っていたようです。
しかし最近は、いろいろな研究から冬季に全ての剪定を行うと「木があばれる」(とんでもない所に徒長枝が吹くなど)
ということで冬季の剪定は弱い剪定にとどめるという流れとなっています。
なぜ「木があばれる」かというと…冬までの間に木は、枝のために養分を貯め込みます…ところが冬に大きな枝を切ってしまうと
…春に目覚めたときにあるはずの枝がなくなっているので、貯め込んだ養分を切った枝の付近にまた勢いよく枝を出す…
つまり「木があばれる」ということになるそうです。言われてみると納得でしょうか。
そこで大きな重なり枝や徒長枝など木に影響が大きい剪定は、養分を貯め込む前の収穫後の夏に行われるようになりました。
一昔前までの冬季剪定は寒空の中、結構時間がかかって大変でしたが、昔に比べると比較的楽な作業となったでしょうか。

摘蕾後

摘蕾前

摘  蕾

桃は写真右に見るように枝に結構たくさんの蕾を付けます。小さな2cm 程の枝でも5つも6つも付いていることも多いです。
この蕾が全部花を咲かせると、花見には絶好ですが、多くのエネルギーを要しますから、
やはり良い実を成らせることが難しくなって参ります。
そこで、この蕾を間引いてやる必要があります。その作業が摘蕾作業ということになります。
指導では枝に5〜10cmに1つ残す(枝先と枝元も落とします)ような摘蕾をと言われていますが、当園ではなかなかそこまで思い切った摘蕾は出来ていません。
鳥が蕾を食べたり、遅霜でやられたなどのリスクもやはりあるものですから……
それでも今年は写真左に見るように昨年に比べてかなり摘蕾を思い切ってやったと思ってます!
写真右のポツポツ付いている蕾が写真左ではほとんどなくなっています。分かりますでしょうか
この地区では、一昔前には摘蕾をあまりやる農園は少なく、今でも摘蕾をやらない農園はありますが、
良い桃ができるのであればと当園では数年前から摘蕾作業をやるようになりました。


ツリー

鳥よけ

ツリー&鳥よけ

桃は収穫時期になるとその重量は大きいものでは300gを超えることになります。
大きな枝になりますと、かなりの数の桃が実りますので枝に相当の重量が掛かり、かなりの枝でも風が吹いたりすると容易に折れてしまいます。
そこで、その重量を支え枝折れを防ぐため、少し前までは主に竹などによる支え(写真手前の竹)をしておりました。
しかし、多くの枝を支えるためには、それこそ竹が林のように林立することになります。
その結果として、雨水対策シート張り、あるいは農薬散布の作業効率が大変悪くなりますので、最近は支柱を立てて枝を吊るツリー方式(写真後方のツリー)を採用する農園が多くなりました。


当園でも作業効率を考えてこのツリー方式を採用することとしました。
…ぐ〜と作業効率が良くなると期待しています…
右の写真は、園の周囲に張り巡らされた鳥よけの光るテープと角かどの支柱に取り付けた手製の風車です。
この手製の風車は、ビールの缶を利用したもので、本当は「もぐら」よけに誰かが考案したものです。
くるくる光りながら回るので鳥よけになるのではと取り付けてみました。
さあ〜効果の程は?


防草シート

防草シートの敷設

以前はどの桃園でも主に防草のため、敷き藁を園全面に行っていました。
今でも敷き藁をする園はかなりありますが、毎年敷き藁をすると窒素やカリの過剰になって糖度の低下や
枝の遅伸びなどの問題があると言うことで、敷き藁を控える園が多くなってきました。
敷き藁をやめますと当然に草との問題が生じてきますので、雨水も通し、また光も通しながら草を押さえる
防草シートを敷設する農園が多くなり、当園でも2年前からシートを敷設しています。
中には除草剤をする園も見受けられますが、土中の微生物も死んでしまいますので、当園では一切除草剤は
使用せず防草シートと草刈りで対応していますので、土中にはミミズなども生息し出来る限り自然との共生を
大事にするようにしております。


受粉

花粉採取

花粉採取と受粉

桃は花粉のある品種と花粉のない品種があります。
花粉のない品種は当然のことながら自家受粉出来ませんので、風等が運んできて自然に受粉をするか
あるいは、人工的に受粉をしてやる必要があります。
当然、桃の栽培となりますと確実に受粉可能な人工授粉をしないと栽培になりませんから、写真右のように
花粉のある品種の蕾が少し開きかける頃をみて、傘をぶら下げてその中に採取の蕾を落としていきます。
見たことのない方は、何をやっているのかとびっくりしますが、どうもこれが一番効率的なのだそうです。

この採取した蕾を「採葯器」にかけて「葯」のみを取り出し、暖かいところに置いておくと葯が開き
黄色から橙色になってきますので、その花粉を写真左にみるように「ぼんてん」で実を成らせたい箇所の
開花した花に受粉していきます。
当園では花粉のない品種は、白桃の栽培をやめましたので夢白桃の若木だけになりました。



コンフューザー

環境に配慮した病虫対策

最近、病害虫対策の為の農薬の使用については、その使用が大変に厳しくなり、違反すると個人だけでなく地域全体の出荷停止ということもあります。
農薬はその使用を誤ると少なからず人体に影響を及ぼしますから当然ですよね…
ですから農薬の使用については、決められた濃度、使用期間あるいは使用回数等がきめ細かく決められ、農協が厳しくチェックしています。
果樹は病害虫に大変弱いため最低限の農薬散布が必要となっています。でも、少しでも減らしたいですよね!
その一つとして2年前から写真にある紐のような交信攪乱用フェロモン剤「コンフューザーMM」による病害対策が地域全体で取り組まれています。
この「コンフューザーMM」はフェロモンを出して虫の性的な攪乱を起こし虫の繁殖を抑え、結果として農薬の使用を減少させるものです。
そのほか環境対策としては自然の持つ活力を引き出す草生栽培がありますが、当園でも防草シートを敷設して草生栽培に取り組んでいます。
少しでも農薬の使用を減らすことが出来ればと思っています。


摘果

予備摘果(1回目)が終了

今年は開花こそ例年どおり4月8日でしたが、その後の低温、雨などの天候不順で実の付きが遅れました。
また、天候不順により「灰星病」が発生してかなり被害が発生した農園が少なからずありました。
我が農園でも所々「灰星病」や「霜枯れ」などが見られ、実付きも悪いため、4月下旬から例年行う摘果作業…
今年は連休明けから行いました。幸い連休中に好天がつづき実もやっと大きくなってきました。
今週1回目の摘果作業を終えました。写真は白鳳ですが梅干し大くらいになっています。
白鳳は今月中にもう一度摘果作業をしようと考えています。清水白桃は硬核期を考えて6月中旬まで摘果作業は待とうと考えています。
写真のように1枝に2つの実は良い方を残して一つにしてしまいます。
このまま天候が順調に推移してくれればと願っています。


桃の袋

袋掛け

桃の袋掛け

早生品種の加納岩白桃と中生品種の白鳳・サンゴールドの袋掛けを行いました。
今年もほぼ例年どおりの時期に袋掛けとなり、霜害や灰星病で始まった今年の立ち上がりからすると
心配しましたが全体的には順調に推移しているようです。
写真は、左が加納岩白桃、真中奥がサンゴールド、右が白鳳です。このほか夢白桃の若木にも若干袋をかけました。
今回かけた袋は、4,500ほどです。
主力品種の「清水白桃」は、6月20日ころから 5,000程度袋をかけることとなります。

天候が順調に推移して、甘くて美味しい桃ができればと願っています。



桃

順調に成長していま〜す

先週、清水白桃の袋掛けを行い、すべての桃の袋掛けが終了しました。
写真は、「白鳳」ですが、今のところ順調に育っているようで 小さな青リンゴくらいの大きさになっております。
ただ、まだまだ小さな実のものも多く、昨年より4〜5日遅れているでしょうか。
今後は長雨が降らないことなど天候が順調に推移してもらえば良い桃が生産できそうです。
昨年の「白鳳」の初取りが7月9日(21年の桃の管理を参照)ですから今年は7月中旬になると思います。



加納岩白桃

白鳳

今年の初出荷

7月7日「七夕」の日に今年の桃の初出荷となりました。
初出荷した品種は「加納岩白桃」<写真左>と「二段接ぎ白鳳」<写真右>です。
加納岩白桃は昨年の初取りが7月3日でしたから、やはり4日遅れとなりました。
本命の「白鳳」はおそらく来週後半になると思いますが、昨年植えた「二段接ぎ白鳳」は、白鳳としては 異例の早さでの初取りとなりました。
でも、結構、糖度も乗っていて、また、写真に見るように姿も色も申し分なく、この時期に採れる桃としては上出来だと思います。
ただ、白鳳の農協受け入れがまだされていませんので、もっぱら青空市への出荷となります。
この後は、「白鳳」、それに続く「清水白桃」…いよいよ本番です。

【7月9日 収穫は終了しました】



白鳳

枝折れ

いよいよ白鳳の収穫

今年もいよいよ「白鳳」<写真左>の収穫(7月14日)となりました。
昨年より4日遅れの収穫です。「平成21年の桃の管理」参照
昨年の白鳳の収穫は好天気に恵まれて、例年になく大変に糖度の高い収穫でしたが 今年は梅雨の雨の中での収穫となりました。
糖度の方は昨年ほどではありませんが、今のところまずまずです。
ただ、雨が続くようですと糖度の維持も難しくなりますので、早く梅雨明けになって欲しいものです。
この長雨の影響で我が農園では枝倒れ<写真右>が3カ所で発生し大きくなりかけている桃が台無しになってしまいました。
この枝倒れで、ここのところ毎日のように枝を竹等で支える作業が続いています。

でも、この雨に負けないで「白鳳」の収穫がんばるぞ…

7月17日(土)いよいよ待ちに待った「梅雨明け」です。
ビニールシート敷設のお陰か!糖度も大丈夫のようです…このまま突っ走るぞ〜

【7月28日 収穫は終了しました】



清水白桃

主力品種「清水白桃」…いよいよ収穫

岡山の桃の主力品種「清水白桃」<写真左>の収穫が始まります。
7月22日(木)に査定会が行われ、翌23日から収穫を始めた農園もあるようですが
我が農園ではやっと27日(火)から収穫 … 昨年より約1週間近くの遅れです。「平成21年の桃の管理」参照
昨年の清水白桃は収穫直前の大雨で一気熟れ、果肉軟化、糖度落ちと散々でした。 今年は梅雨明けから27日で10日…今年の清水は糖度が高く甘いぞ〜との声が聞かれます。
ただ、4月の出足での天候によるつまづきから形がいびつな扁形果が多いようです。
でも「糖度が高くて甘い」と言うことであれば、消費者の方も納得して頂けるのではと思っております。

うだるような暑い中ですが8月10日頃まで収穫がんばるぞ…

写真の清水白桃は清水にしては少しピンク色が濃いですが、清水独特の白くて美しい姿にいつも感激です!
写真撮影の腕が悪くて、その美しい姿を捕らえきれてなくて申し訳ないです…
昨年の写真の方が清水の白さがよく出ているかも…
<清水白桃(7/26撮影)>

【8月11日 収穫は終了しました】



おかやま夢白桃

小粒夢白

岡山県推奨品種「おかやま夢白桃」…むつかしい品種かな?

岡山県が推奨している品種「おかやま夢白桃」<写真左>
白っぽくて 大玉 糖度が驚くほど高い とのふれ込みで岡山県が推奨している品種…
我が農園では「3年前の植え付け」と「2年前の植え付け」の若木がありますが、ちっとも実が大きくならず!!
写真右に見るとおり、農協受け入れの200gに届かない“すもも”くらいの夢白桃がごろごろ。
今日聞いた話では、実を大きく成らせない木が何本かに1本はあるとか…。
4〜5年経ってダメな木は思い切って伐採らしい〜
我が家の「夢白桃」 6本中 何本が推奨するような実を成らせてくれるのかなあ〜

4〜5年も手をかけてダメで切る なん〜て…本当 桃づくりって難しい!
まあ〜もう少し辛抱して育ててみるか…

<おかやま夢白桃(8/3撮影)>



白麗

サンゴールド

“やっと白麗とサンゴールドの収穫です”

昨日11日、「白麗」<写真左>と「サンゴールド」<写真右>を収穫しました…
昨年「平成21年の桃の管理」参照収穫を8月1日に始めていますので 約10日近くの遅れとなりました。
「白麗」「サンゴールド」共に1本づつしかありませんので、1週間足らずの収穫となりますが、
「サンゴールド」は農協の受け入れが昨年で終わりましたので、もっぱら青空市出荷となります。
「サンゴールド」は、大きいものですと500gを超すような大玉となり、どれも大変に糖度が高く実に美味しい桃で、インターネットなどでも美味しいと 紹介されており、栽培農家が少ないのでしょうか?こんな美味しい桃の農協受け入れがなくなるとは信じがたいことです。
「白麗」は写真では少しピンクが多くかかっていますが、もう少し白っぽい桃で、これも糖度が高く甘い桃です…
「白麗」「サンゴールド」で我が農園の今年の桃の収穫は終了となります。

【8月17日 収穫は終了しました】



剪定後

剪定前

“来期に向けての作業開始です”

今月から早くも来期に向けた作業が始まりました。
昔は冬剪定が主体で今の時期に剪定を行うことはあまりなかったようです。
最近は木を落ち着かせるためにも大きな剪定は今の時期に行うようになりました。
「冬季剪定」を参照してください
白鳳の剪定後<写真左>と剪定前<写真右>…どうでしょうか!
大きく突きたった徒長枝を中心に剪定しましたので写真でもすっきり感を感じてもらえる思います!
かなり古木の他の白鳳では直径10cm以上の枝の縮伐もチェンソーで思い切って行い、若木への若返りを図るようにしています…
今の剪定はのこぎりを使うような枝の剪定が中心ですが、小さな剪定は従前どおり冬剪定となります。
ただ、木によっては伸びて欲しい枝が伸びず…いらない部分の木が伸びたりと…思ったようにはいかないものです。



バックホー

“土壌改良の部分深耕作業です”

若木の土壌改良として部分深耕を行いました。
今年は抜根作業がないため、一回り小さいバックホーを借りました。
若木の一辺、長さ2m 幅50cm 深さ50cmの穴を掘って、その中に「パーライト」「ピートモス」「バーク堆肥」を入れて 耕し埋め戻す作業で、今年は13本の若木で行いました。
目次4.で昨年の土壌改良の紹介をしていますので、これで1年間のローテンションが完了と言うことになります!
なお、昨年行った「芽次ぎ」は上手くいきませんでしたが、今年の「芽次ぎ」は今見る限りでは順調のようです…
良い苗木が出来ることを願ってます…



以上が今年の「桃の管理」のローテンションとなります。
桃の品種は、「桃の栽培品種」をご覧下さい。


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