●プロローグ

　ピーチ姫が化け物ガメ・クッパの横腹をキック！

　予想外のピーチの抵抗に、クッパがうめき、のけぞった。チャンス！

　ヤツに立ち直る時間を与えてはならない！

「兄貴！」

「ＯＫ、ルイージ！」

　オレたちは高々とジャンプすると、クッパの顔面めがけてダブルキック！

　さすがのクッパも、オレたちのダブルキックをまともに食らっちゃ、もうジ・エンドだ。

「うぬぬ・・・・・・」

　低くうめくと、キノコ王国の大地に倒れ伏した。

「さあ、兄貴、とどめだ！」

「ま、待ってくれ！　ワシがバカだった・・・・・・ピーチ姫をさらいキノコ王国を乗っ取ろうなどとあ
さはかな夢に取りつかれ・・・・・・どうか、このオイボレガメを許してくれ、いや、許してくださ
い・・・・・・改心します・・・・・・」

　クッパはそのごっつい悪カメ面に滝の目涙をこぼし、オレたちにひれ伏した。

「・・・・・・とっととどこかへ消え失せろ・・・・・・」

「そんな、兄貴！　こいつを信じるのか！？」

「私もマリオさんに賛成です。抵抗しないものを殺めるなど、私の本意ではありませんわ。」

「おお！　プリンセス・ピーチ！　あなたはやはりすばらしい姫だ。どうか、お幸せに！」

へコヘコと頭を下げ、クッパはオレたちの前から姿を消した。

　あの壮絶なクッパとの戦いから数ヶ月後。キノコワールドが平常にもどったのを見届けて、オ
レとルイージ、それにピーチ姫は『恐竜ランド』へとバカンスに旅立った。

　恐竜ランドは青い海に囲まれた、ヨースター、ドーナツ、バニラ、せんべい山、迷いの森、チョ
コレー島からなる美しいリゾート地だ。

　住人である恐竜たちはみな優しくおだやかとすこぶる評判がいい。

　また、世界を守るドラゴン・３匹がこの島のどこかに眠っているという。ま、あくまで伝説だけど
ね。夢があっていいだろう？

　ヨースター島にあるホテルに荷物を置くと、オレたちはさっそくビーチへ飛び出した。

「ピーチ姫も早くこいよ！」

「ええ！　ちょっと水着がみつからないものですから・・・・・・先に泳いでいてくださいな。」

真っ白いフワフワほっぺをちょっぴり赤らめてピーチが言った。

　おお！　シリーズ４作目にしてついにピーチの水着姿にお目にかかれるなんて・・・・・・ああ、
生きててよかった！

　ワクワク

　期待に胸ふくらませ、ビーチで日光浴を楽しむ。けど、

「兄貴、それにしてもピーチ姫は遅いなあ」

「そうだな。よし、オレちょっと行って見てくるよ」

「あ！　そういって兄貴、ピーチ姫の着替えをのぞくつもりだろ！」

「ちゃ、ちゃ、ちゃ、うわい！　心配なだけさ」

　まったく。兄弟ってのは相手の考えが読めるらしい。気をつけよっと。

「だけどさあ、兄貴。ここ恐竜ランドだろ？　なのに、ちっとも恐竜と会わないね」

　確かに。それに、人気リゾート地だってのに、ホテルに客はオレたちだけだった。

「兄貴・・・・・・まさか」

「ワナ・・・・・・。ピーチ姫が危ない！」

　オレとルイージは砂浜から飛び起きると、ピーチ姫の部屋をめざして一直線！

「ピーチ！」

　体当たりでドアをあけると、彼女の部屋に飛び込んだ。が、そこにはピーチ姫の姿はなく、カ
ワイらしい花柄のワンピースが落ちているだけだった。

そして、ベッドの上にはきたないでっかい字で書かれた手紙が！

『オマヌケブラザーズへ

　カワイイピーチひめはいただいた。

　きょうりゅうたちは、ワシのどれいにするのだ。

　ワシはいぜんのワシではないぞ。

　ぐんびもぐれえどあっぷ、せんとういんもいっぱいふえたのだ。

　おまえらは、とっととシッポをまいてたちさるがいい。

　さもなくば、きさまらのいのちはない。

いだいなるまおう・クッパより』

「それにしても、あいつ、漢字ひとつ書けんのか・・・・・・」

　くそお、クッパ！　おまえさえいなければ、今頃オレたちはこのカワイラシイ水着を付けたピー
チ姫となぎさでランデブーだったのに！

　ピーチ姫を返せ！　

　恐竜たちを返せ！

　オレの青春を返せ！

　許すまじ、クッパ！　おまえの野望はこのオレが絶つ！

感想

　突如、ドンキーコングが現れたり（挿絵も迫力満点！）、マリオが銭形平次の格好をしてコイ
ンを投げたりと、物語がとても奇想天外です。中でも、ドラボンがマリオ達にウソをついてだま
す場面は印象的でした。確か、「スーパーマリオくん」でも同じような話しがあったような。どうや
ら、クッパに操られたドラボンが仲間であるヨッシーを裏切ってマリオ達をだます話しは、マリオ
コミック共通の様です。続いては挿絵についてです。マリオが鉄製のドアにぶつかってマント羽
根を手に入れたり、ルイージがフィッシングジュゲムに釣られてしまったりと、コミカルな絵が多
いです。しかし、ピーチ姫が縄でしばられ、叫びながら宙づりにされている場面はとてもリアル
で、かわいそうです。