『爺(じっ)ちゃんからの直伝・文化社会学の極意』
「難しい質問だね。その謎を解くためには、日本の歴史を振り返ってみる必要があると思う。
最古の日本人のルーツは、約3万年前、氷期であったので大陸とつながっていた時代に、陸橋を
渡り大陸から移住してきた古モンゴロイドに求められる。ナウマンゾウやオオツノジカ、ヘラジカなどの
大型動物を追ってきたんだろうね。約9万年前の地層から両面加工された石器が見つかっているの
だけれども、その石器を使っていた人類は、現生人類である新人ではなく、旧人であったとされてい
る。だから、日本人のルーツは、約3万年前に移住してきた古モンゴロイドということになる。彼らは
打製石器を使い、狩猟・採集の生活を約2万年もの間続けていた。
そして、約1万3千年前から1万年前くらいにかけて、氷期が終わり温暖化が進んでくると、日本が
大陸と遮断されるようになり、西日本はシイ・カシ・クスノキなどの常緑広葉樹が優勢な、薄暗く湿度
が高い照葉樹林帯になっていった。また、東日本では、ブナ・クヌギ・クリなどの落葉広葉樹が優勢
な、明るい森林である落葉広葉樹林帯になっていった。そして、それは大量の木の実をもたらすこと
になり、中小動物の増加につながっていった。その頃になると、磨製石器や骨角器も使われるように
なり、また、土器が作られ、木の実のあくを抜いたり、煮炊きができるようになった。貝や魚なども豊
富で、狩猟・採集と芋類や豆類などの栽培だけで定住生活ができる、まさに地上の楽園といった環境
になっていった。
水稲耕作が伝わってくるまでの1万数千年間を縄文時代と言うけれども、日本列島は食糧が豊富で
水も豊か、川の水は清く、排泄物なども川が流してくれるので、豊かで清潔な生活をすることができた
と思う。縄文人の人骨の最近の研究では、縄文人の20〜30パーセントが65歳頃まで生きていたと
いうことが分かっている。まさに理想的な生活環境だったんだ。そして、そのような生活を1万数千年
もの間続けてきたことによって、現在の日本人の精神構造の基層が築かれていったんだと考えられ
る。」
「その、日本人の精神構造の基層って、具体的にはどういったことなの?」
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