『爺(じっ)ちゃんからの直伝・文化社会学の極意』
「彼らにとって、人生の最大の関心事は救いの確信を得たいということだった。そこで、彼らは、
その目的を達成するために、自分の職業を成功させることに焦点を絞って、自分の生活を新たに
組み立て直していった。ちょうど彼らは、カルヴァン主義者として大幅な人格変容の過程にもあった
ので、これまでの中世的な、伝統主義的なパーソナリティを打破するようなパーソナリティを形成して
いった。その時、原始キリスト教時代の、霊にとらえられる精神状態と似たような精神状態になった
人も多くいたに違いない。」
「彼らはどのようなパーソナリティを形成していったの?」
「一言で言うなら、目的合理的なパーソナリティなんだ。つまり、自分の職業を成功させるという目的
を達成するために、自分の生活を合理的に組織化していった。そして、自分の会社も目的合理的に
経営していくようになった。」
「複式簿記を積極的に利用して、どんぶり勘定的な経営はやめたんだよね。」
「そうだね。この目的合理的な精神こそ、中世の枠組みを突破していった資本主義の精神なんだ。
彼らは、そのような精神で、目的達成のために禁欲的に、正直に、誠実に、勤勉に働き、合理的な
経営をしていった。その結果、人々の信用を獲得し、経営も成功し、利潤を獲得することになった。
資本主義経済成立期の経営者たちの目的は、利潤を得ることではなくて、天職に成功することにあっ
たので、彼らは、その利潤を自分の楽しみのためには使わず、成功をより確かなものにしていくため
に、設備投資に回した。こうして、資本の蓄積が行われていき、目的合理的な経営が行われる資本
主義経済が成立していったんだ。」
「ふ〜ん、そうなのか。じゃあ、現在、ギリシアやスペインなどの経済がうまくいっていないのは、宗
教的な文化が、何か関係しているのかな?」
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