2005年 個人山行 三頭山 山行記

筆者 S・Y (1年生)

2005年2月6日(日)

 
奥多摩方面の山行にしては珍しく、今回の山行のスタートは高尾駅であった。予定よりだいぶ早く到着、先輩と難なく合流する。
 信じられないようだが、なんと今回はこれで集合完了なのだ。
 実はこの前日、来る予定だった他の1年生2人がカゼなどの理由で相次いで来られなくなり(言葉は悪いが、俗に言うドタキャンというやつである)、今回の山行は先輩とわたし2人っきり。
 そんなわけで、予定より1本早い電車で上野原に入ることができた。

 駅からタクシーで鶴峠へ向かう。
 駅前で予約していたタクシーを探していると、「Yさまですね〜?」と運ちゃんの声がする。笑いをこらえるのに必死だった。今回実際にタクシーを予約したのは先輩だが、先輩の苗字があまりに珍しく分かりにくいため、先輩はややポピュラーなわたしの苗字を借りて予約していたのである。もちろん事前に先輩から話はあったが、こうして実際に名前を呼ばれると何とも言えない感じだ……。

 タクシーは上野原の街を抜けて山あいの道をぶっ飛ばす。
 路肩に積もった雪は優に30センチはあるだろう。
 先輩は去年の春合宿のラッセルの話をしてくれたが、わたしはどうしてもただうんうんとうなずきながら聞いている訳にはいかなかった。これからまさにそれと同じようなことをしそうな気がしてならなかったからである。あまりにもリアリティがありすぎる。かなり不安だ。
 おまけにメーターの数字は留まるところを知らない。不安だ……。

 やがて、タクシーが止まった。どうやらここが鶴峠らしい。
 突然だが、8500円と言われてあなたは何の値段を思い浮かべるだろうか。服? 1ヶ月の携帯料金? うまい棒850本分??
 まあ、そんなところではないだろうか。
 だがしかし、これは上野原―鶴峠のタクシー代である。
 高い。下界では終電後ぐらいにしかお目にかかれないような値段だ。
 今、先輩と2人でこれを割り勘する。ひとり4250円也。
 アプローチだけでこんなに金がかかってしまって、はたして良いのだろうか??

 タクシーを降りてパッキングを済ませ、三頭山への登山道に取り付き……たいのだが、入口が分からない。しばらく探しているうちにやっと指導標を見つけた。それにしても、分かりにくい場所にあった。
 雪がちらほら積もっているので初めからスパッツ・軽アイゼンを着けて行くことにした。尾根目指して高度を上げていく。雪がどんどん深くなってくる。軽アイゼンの存在意義がよく分からなくなってきた。

 尾根上に出た。木々の合間からの丹波・雲取山方面の展望は底抜けに良い。が、足元の雪は底抜けに柔らかい。
 どうやら鶴峠からの道はここ最近まったく人が来ていないらしく、雪がかなり柔らかい。踏み跡はまったくなく、鹿か何かの足跡が所々にあるだけだ。そんな中先輩と「何なんだよこれ……」などとグチをこぼしながらゆっくりと足を進めていった。 
 小菅方面からの道を合わせる地点で休憩をとった。もっとも、この状態で指導標を見てもこれが道に見える人はおそらくいないだろう。少なくとも、わたしにはその辺の斜面とまったく同じに見えた。
 ふと顔を上げると、12月に個人山行で通った大寺山の仏舎利塔が見える。それにしてもデカい。そして異様だ。

 休憩を終え、再び雪との戦いが始まった。
 途中小ピークを越えるあたりで、ついに雪がひざまで積もるようになった。1歩前に進むだけでも、ものすごい体力消費だ。モモ上げをしながら走っているような感じ、と言えば分かっていただけるだろうか。
 ついに先輩はヤケになって、もがくように登り始めた。しかし、そうするほかに術はないのである。先輩を見て、わたしも同じように登り始めた。もう無我夢中であった。
 「わかん欲しいねー……」登りの途中で先輩がこぼした。そのころわたしはまだわかんの使い方を知らなかったので(その後春合宿で使ったが)、この際だからということで先輩にわかんの素晴らしさを教えてもらった。なるほど、本当に欲しい。 
 いずれにしろ、軽アイゼンを着けている意味はもはや全くない。

 小ピークを過ぎてしばらく行くと、踏み跡もテープも全くなくなってしまった。方向的には間違っていないはずなのだが、一応地図を見てみることにした。結局道は正しかったが、何も目印がないと、ここまで不安になるのかと思うと恐ろしかった。
 しばらく行くと、妙に開けた広場が見えてきた。 
 「ああ、あれが山頂なんだな!?」……そこは正真正銘、三頭山の山頂であった。富士山の眺めが素晴らしい。

 しかし空腹には勝てず、軽く携帯で山頂の写真を撮ってからすぐに避難小屋へ向かった。待ちに待った昼食である。陽が差し込むテラスですするラーメンは、最高においしかった!!
 ふと時計を見ると13時を回っている。コースタイムを大幅にオーバーしていた。陽が沈むと危険なので、片付けをしてすぐに出発。

 下山に使った笹尾根はよく踏まれており、登りとは比べ物のならないほど歩きやすい道だった。かなり早いペースで下り、槇寄山で最後の休憩をとった。陽が暮れてきたので笛吹への下山はあきらめて数馬へ下山、数馬の湯でひとっ風呂浴びて帰ることにした。西原峠で数馬への下降路に入り、ひたすら下る。舗装路に入ってからは、軽アイゼンが果てしなく不快な音をたてた。

 やがてふもとの集落に到着し、スパッツ・軽アイゼンを外して再出発。
 農作業中のおじさんの「お疲れさーん」という言葉が無性にうれしかった。バス道に合流し、数馬の湯に着いた。
 温泉に入った後、バスで武蔵五日市に出て解散となった。
 わたしはバスの中で熟睡していたようだ。目が覚めると、そこはもう五日市駅手前であった。



《温泉レポート》

数馬の湯

*入館料
大人800円(/3時間)

*アクセス
西東京バス武蔵五日市―数馬線 「温泉センター」バス停歩0分

*営業時間
平日 10:30−19:00(4〜11月) 10:30−18:00(12〜3月)
土休日 10:30−20:00(4〜1月)  10:30−18:00(12〜3月)

*特徴
・ 風呂の温度は高・中から選べる。
・ 露天風呂あり。若干狭く展望はないが、入っているときの気持ちよさは格別!
・ 浴室奥に打たせ湯あり。背中をお湯に打たれる感覚は意外と心地良い。
・ 牛乳はもちろん、自販機の種類が豊富。

*コメント
ここのイチオシは打たせ湯ヨコの泡風呂!
底からボコボコ出てくる泡が山行で疲れた体をやさしくほぐしてくれる。
また、2005年4月まではもれなくタオルが1枚ついてきたが、
現在は入湯税が導入された影響でタオルはつかなくなった。
タオルのサービスは他の温泉にはない魅力的なサービスだっただけに、
非常に残念である。

 

《「稜線」第27号(2005年度)所載》



鶴峠から三頭山への道 三頭山山頂直下にて

三頭山山頂 三頭山から富士を望む



▲2004年度の山行一覧に戻る▲

▲以前の山行・目次に戻る▲

■ワンゲル・トップページに戻る■