2004年 6月山行 山行記
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筆者 S・Y (1年生)
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6月12日 〈1日目〉
今日は教育実習生の最後の授業。J組特有の感謝の儀式を一通り済ませ、授業が終わる。ザックを背負い、TとNのいるK組に顔を出し、1年部員3人で上石神井駅へ向かう。Nは今回の山行で山デビューだ。周りは皆まるで珍しいモノでも見ているかのような視線を僕達に送っているけれど(傍から見れば確かに異様ではあるが)、中学での3年間で同じような視線を何度となく浴びせられた僕には全く気にならない。と言うより、むしろ誇りさえ覚える瞬間だ。
前回の新歓では集合時間の3分前にやっと切符購入(という記録が残っている)という大失態をやらかしていたので今回時間にはかなり敏感になっていたせいか、かなり早い時間に先輩と合流することができた。……ガラ空きの西武線。A先生はパソコンでお仕事。神ワザだ。僕はそんなに要領のイイ器ではない。感動しているうちに拝島に着き、青梅線に鞍替え。そのとき。「ん? あれ、青梅行き?」……やられた。乗り遅れ。が、幸い次を待っても予定通りの時間に奥多摩に着けるらしく、一安心。次からは気をつけないと……。そして予定通りに奥多摩に到着。バスが来るまでの間にポリタンに水を詰めておき、完全武装でバスに乗る。バスの中では学院の教員を話の肴に、先輩達と大いに盛り上がった。
お祭でバスを降り、長〜い長〜い林道歩きが始まる。Tにカレー用タマネギを貢がれ、いっそう気合も入った……矢先、何か鈍い音がする。落石だ! トップのN澤先輩がすぐに気づいたから良かったものの、あと少しタイミングがズレていたら本当に危なかったかも知れない。モノスゴイ音をたてて岩は真っ二つに割れた。もちろんこんなことは初めてだ。波乱の予感……(実際にはこの後特に困ったことはなかったが)。
やっと林道が終わったところで、ヘッデンを着ける。時計を見ると、とっくに19時を回っている。暗いわけだ。前日の雨でぬかるんでいて道も状態がよくない。やっとのことで幕営地である三条ノ湯に着いた。しかし、そこで信じられない光景を目の当たりにしてしまった。……ザックで場所取りをしているパーティーがいるのだ! これには皆がブチ切れた。「こんなん知ったこっちゃねーよ! どかしちまえ!」とかなり頭にキテいた先輩もいた。結局テント場の隙間にテントを「張らせてもらう」感じになってしまい、2つのテントに距離ができてしまった。このことが情報伝達に支障を来し、あまり要領よく行動することができなかったように思う。ちなみに、夕食のカレーではお約束の強制お替りがいつものように発動された。とにかくTがモノスゴかった。(一体何杯食ったんだぁ?)K先輩が「その積極性はムダにはならないよ……」という意味深なコトバを残していった。
夕食を終えてから寝るまでの間、そのK先輩とA先生と僕のいるテントにはかなり和やかな空気が流れていた。「明日も早いからぼちぼち寝ましょ〜」といった具合に。
6月13日 〈2日目〉
……夜が明けた。外はもう薄明るい。ヘッデンが要らない。新歓のときの3時起きとは比べ物にならない明るさだ。朝食はスパゲティ。やはり強制お替りであった。そして、またTがやってくれた。朝っぱらからスゴイモノを見てしまったもんだ。
昨日が遅かったので今日はすべての予定が1時間繰り下げられている。それによると三条ノ湯6時発の予定だったが、撤収作業が非常に速かったので5時半に出発することができた。これは大きなプラスの要素になったと思う。最初の1本は割とスイスイ行けていた。Nもちゃんとついて行けているようだ、よしよし……。
しかし、2本目に入ってすぐに雨が降り出した。急いで雨具を着、ザックカバーを着ける。おそらく晴れ男があの中にいたのだろう、3年間で1度しか雨に降られなかった中学時代の運の良さを汗でムレる雨具に身を包まれながら痛感したのだった。そうこうしているうちに、最後の急な登りに入った。急。まったく息抜きができない。しかもそれがダラダラと続くのだから困ったもんだ。今自分がなぜこうして山に登っているのかさえも忘れさせてくれる、オソロシイ登りだった。しかしその登りも何とかクリアし、僕達は雲取山の山頂に立つことができた。一旦避難小屋に荷物を置き、三角点で写真を撮った。東京都最高峰のはずなのに埼玉県名義の看板が立っていたのには少し腹が立った(I先輩も同じようなコトを言っていた)が、きっとオトナの事情があるのだろう、と自分に言い聞かせてその場を鎮めた。
避難小屋に戻って第2の目的地・七ツ石山への出発準備をする。このとき僕はレーズンの塊を飲み込んでしまって(おえ〜)、かなりもったいない思いをした。ただその場を和ませることはできたので完全にムダではなかったと思う。さて、そんなこんなで雲取山を出発し、右手に雲海を眺めながら小雲取山を経由して、1本で七ツ石山の最後の登り坂のスタート地点に着いた。
ここで問題が起こった。荷物を置いてピストンで攻めるか、メインザックで攻めて山頂で昼食にするかで先輩の意見が分かれてしまったのである。結局そのままメインザックで攻めることになったが、前もって意思決定をしておくべきであったと思う。
昼食はパンにコーンスープ。驚いたことに、N持ちのパンは全く潰れていなかった。「どーやって持ってきたんだよ?」「えぇ? 普通に持ってきただけだよ〜?」お願いだからウソだと言って……。怖い……。
ここでも山頂で写真を撮った後、鴨沢に向けてひたすら下り始めた。すると……。痛い。ついにキたか……。僕の生まれつきの持病である股関節が痛み出した。トップを行くN先輩に頼んで休憩の間隔を短くしてもらうことでなんとかその場はしのいだが、これから夏合宿・1年生山行と山に入っていくのに影響が出ないか少し心配になった。
13時40分ごろ、鴨沢のバス停に着いた。時間になり、バスがやってきた。よくよく見ると後ろにもう1台空のバスがいるではないか! 感動モノであった(……やった! 座れるじゃん!)。案の定奥多摩駅まで僕は爆睡していた。
今回の山行では致命傷とまではいかなかったものの、小さなミスが割と多く見受けられた。小さな失敗も許されない夏合宿に向けて、もう1度気を引き締め直すよう自分に言い聞かせていきたい。
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《「稜線」第26号(2004年度)所載》
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