2003年 秋季第2回山行 山行記

筆者 Y・W (2年生)

11月2日(日)

 
「ジジジジジッ。」目覚まし時計がけたたましい音を響かせた。普段なら目覚まし時計の鳴る直前に覚醒するのだが、今朝は朦朧とした状態で勝手に手が伸びてベルを止めてしまったらしい。幸い最近の目覚まし時計にはよくついているスヌーズ機能のおかげで大事には至らなかったが、焦っていたせいで、そのとき2日目の飛龍山のピストンの時に必要な何かをザック入れるのを忘れていたことには気がつかなかった。

 昨夜、初めてのチーフリーダーということで、あれやこれやと考えていたのが悪かった。結局ベッドについたのは午後11時過ぎだった。だが、それから1時間もしないうちに目が開いてしまったのだ。興奮していたのだろうか。 私は、気を落ち着かせるために私はココアを飲もうと台所に向かった。やかんを火にかけてから数分、やかんから蒸気が上がるとそれをコップに注いだ。ココアには気を落ち着かせる効果があると聞いていたが、ココアを一口、また一口と口に含む度に不思議と気持ちはやすらいでいった。それから眠りにつくのにあまり時間はかからなかった。

 池袋駅に着き、仲間2人と合流すると、私たちは西武池袋線のホームに足を運んだ。 本当ならばそこでもう1人のメンバーと会うはずなのだが、彼の姿は電車が出てしまってからも見当たらなかった。これはおかしい。彼はひょっとすると電車に乗り遅れてしまったのではないか。私は、計画書に、もしもこの電車に乗り遅れてしまった時のための救済処置を書くことを忘れていた。もし彼がこのあとに乗る予定のバスに間に合わないということになれば、それは私の責任でもある。私の額には汗がにじみ出ていた。「トゥルル、トゥルル。」突然、私の持っていた携帯に1本の電話がかかってきた。公衆電話からだった。「はい。もしもし。」その電話は彼からだった! 彼は無事だったのだ! 電話の内容は、体調不良でこの電車には遅れたが、特急で追いつくことができるので心配はいらない、とのことだった。私はほっとしてひと時の眠りについた。

 そこからは早かった。あっという間に西武秩父駅に着き、三峰神社行きのバスを待つ間にポリタンに水をつめ、遅れてきた彼と合流した。バスが停留所に着くとわっと人が乗り込んだ。私は座席に座ることができず、通路にザックを下ろしそこに腰掛けた。ここからまた75分ほどかかるわけだが、バスではいろいろなおば様方との世間話に花が咲き退屈する事がなかった。そして、ところどころ顔を見せる山の紅葉の様が私たちをうきうきする気分にさせた。

 予定時間より30分ほど遅れて三峰神社行に着くと、私たちはさっそく山登りの準備を始めた。これから先頭に立って山を登ると思うと武者震いがした。歩き始めは自分が思っていた通りいろいろな面でメンバーの指摘を受けたが、次第に要領がわかってきた。三峰神社、地蔵峠、お清平、白岩小屋、大ダワと、景色を楽しむようなところはあまりなかったが、道はとてもいい道で歩くことを楽しむという感じだった。少し速いペースで登ったのでメンバーからは反感を買ってしまったのが心残りだが、順調に何事もなくその日は雲取山荘に着くことができた。また、幕場に着いてからも迅速にテントを立てることができてよかった。

 その日は雲ひとつない快晴で、夜になると空一面に今にも降りだしそうな星が輝いていた。星降る夜……、綺麗だった。光があふれ、耳をすませば、まぶしく輝く星の音が聞こえてくるようだった。



11月3日(月)

 シュラフに身を包み眠っていると、携帯のアラームで目を覚ました。時刻は2時半。朝食の雑炊をすすると、すぐにテントをたたむ作業にとりかかった。昨日と同様、作業は迅速に行われた。あたりはまだひっそりと静まり返っていた。

 雲取山荘から雲取山の山頂まではヘッドランプでの行動となった。ゆっくりと行けと先生からのアドバイスを受け、出発した。ヘッドランプ行動での先頭は少し緊張したが、とてもわかりやすい道だったので、助かった。雲取山の山頂に着くと、空には曇り空が広がっていた。その様子はとても幻想的だった。

 少し長めの休憩をとった後、私たちはまた歩き出した。狼平までは昨日と同じで景色を楽しむようなところはなかったが、三ッ山、飛龍権現までの道でところどころ見晴らしのいいところがありよかった。

 飛龍権現からのピストンはサブザックを忘れ、さらに帰り道ですこし道に迷うなど、踏んだり蹴ったりだったが、飛龍山からの眺めは聞いていたよりよかった。その後に行ったハゲ岩の眺めも絶景だった。崖の下を見下ろすと吸い込まれてしまいそうだった。

 ハゲ岩から戻ってくるとすぐに昼食を取り、また歩き出した。ここからは少し登ったがあとは下り道だった。ひたすらに下った。サオラ峠を見向きもせず下った。気がつくともうそこは丹波のバス停だった。

 本当に今回の山行は、景色を楽しむというよりは、歩くことを楽しむものだった。それでも、やはり皆なにごともなく下界に下りられたのでよかった。今回の山行は成功したと言えよう。


《「稜線」第26号(2004年度)所載》


飛龍山山頂 禿 岩



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