2003年 1年生山行 山行記

筆者 T・F (顧問)

9月2日(火) 〈1日目〉  曇り

 朝、東京を東北新幹線で発ち、福島で先着していたOBのUと合流、予約していた大型タクシーで、浄土平の少し先の兎平キャンプ場の入り口まで行く。

 針葉樹林の中の閑散としたキャンプ場で設営。1年生はスタードーム・テントの張り方を覚えた。それから、昼食。

 サブザックで、東吾妻山に登る。漆原がトップ。曇天で、山の上の方にはガスがかかっていた。広々とした浄土平の少し南を過(よぎ)り、姥(うば)ヶ原に至る。このあたりからガスの中に入った。針葉樹林の下の水の流れる歩きにくい道を黙々と登り、樹林が切れるとすぐに東吾妻山の山頂だったが、一面のガスで、何も見えない。風もあって、長居をする場所ではなかった。

 姥ヶ原まで下り、鎌沼への道を辿る。ガスは晴れ、気分のいい道だった。鎌沼は、静かな、雰囲気のよいところで、観光シーズンには観光客で雑踏するのだろうが、今は我々以外には誰もいなかった。

 吾妻小富士を左手に見ながら、往路で見送った分岐まで下る。OBのUは一人で吾妻小富士へ登りに行き、他のメンバーはそのまま兎平のテントに戻った。

 16:00の天気図を引くと、日本海中部に前線が停滞し、明日の天候にはあまり期待が持てそうになかった。夕食の炊事を1年生たちはまずまずうまくやっていた。



9月3日(水) 〈2日目〉  曇り一時雨

 朝食のメニューは蕎麦だったが、茹でた麺を冷水で冷やしてから食べたため、美味かった。
 メンバーの一人がパッキングに手間取ったため、出発は予定より遅れた。

 一切経山の登りは、標高差はあまりないのだが、ガスの中で左からの強風に煽られた。気を抜くとバランスを崩されそうになるほどの風で(ワンダーフォーゲル部の顧問になってからは、これほどの強風に遭ったことはない)、バランスを保つために強く踏ん張りながら登らなければならなかった。ただ、視界はそれほど悪くなかったため、十分余裕はあった。この強風の中で、1年生たちはよく頑張っていた。(明月荘に着いてから、16:00の天気図を引くと、これは寒冷前線の通過による強風だったことが分かった。)

 一切経山を越えると、強風からは解放された。相変わらずガスの中だったが、ガスの切れ間から見えた五色沼の眺めはなかなか神秘的なもので、印象に残った。五色沼までは私がトップを歩いたが、以後は1本ごとにTとKが交替でトップを歩く。家形山あたりから先は、針葉樹林帯の泥濘んだ歩きにくい道だった。アップダウンは大してないのだが、愉快な道ではなかった。兵子(ひょっこ)への分岐点で昼食。

 針葉樹林帯の単調な道を進み、烏帽子山に着くと、一時ガスが切れ、展望がひらけた。南東に東吾妻山や一切経山、南に谷地平の湿原、東にはこれから越える昭元山、東大巓方向が見渡せた。気持ちのいい休憩を取った。

 烏帽子山から先は、パーティのペースが上がらず、また、再びガスが巻き、ただ黙然と歩き続けるだけだった。昭元山、大倉新道分岐点で、それぞれ休憩を入れ、東大巓は小雨も降る天候となっていたため縦走路からすぐ近くにある山頂への往復はせずに巻いた。縦走路から北東に折れ、平坦な木道を歩いて、今日の泊まり場である明月荘(無人小屋)に着いた。

 この日、明月荘に泊まったのは我々だけだった。無人小屋を独占できるのは快適だった。皆で飲んだ温かい紅茶は美味かった。第1次水場往復隊(KとT)が往復20分ほどの水場に行く。夕食の作業にはやや手間取ったが、美味い食事が作れた。夕食後、第2次水場往復隊(OBのUとU)が水場に行く。



9月4日(木)
 〈3日目〉  晴れ

 待ち望んだ晴天となった。
 この日は、昨日までの単調な樹林帯から解放されて、好展望の縦走となった。

 明月荘から縦走路に戻り、平坦な弥兵衛平を木道に乗って歩く。弥兵衛平は周囲がひらけ、静寂で、美しいところだった。この早朝の歩行は爽やかだった。

 展望のよい人形石で休憩し、中大巓の左を巻いて下る。この道も気持ちのいいところだった。大凹(おおくぼ)の水場で水を補給。大した登りもなく、吾妻連峰の最高峰・西吾妻山に着く。しかし、ここは針葉樹林の中で展望はなく、何の変哲もない山頂だった。写真を撮っただけで、西吾妻小屋(無人小屋)に下る。

 小屋に荷を置き、サブザックで西大巓を往復する。快晴の西大巓の頂からは好展望が得られた。北東には飯豊連峰、東には西吾妻山のおおどかな山容、南東には安達太良山、南には大きな猪苗代湖の湖面……。ここで昼食。

 西吾妻小屋から白布温泉への下りに入る。針葉樹の中のあまり歩きやすいとは言えない道を下る。一応尾根を下っているつもりだったが、数メートル左を沢が流れているところもあった。尾根なのか沢なのか分からないような地形だった。いかにも平らかな山容をした吾妻らしいことだと思う。

 若女(わかめ)平が近づくと、樹相はダケカンバやブナのきれいな広葉樹林に変わる。広葉樹の中の道は、明るく、爽やかだった。
 若女平からは、ほぼ1本で、白布温泉に下り着いた。メンバーはバス停の前の旅館でひと風呂浴び、バスで米沢に出て、解散となった。

 吾妻連峰は、明月荘から西の山域(今回3日目に歩いた部分)がいい。吾妻連峰に行くことがあるなら、一切経山〜東大巓の縦走路は敬遠して、例えば谷地平を経由して明月荘に入り、そこから西に縦走するといいのではないかと思う。


《「稜線」第26号(2004年度)所載》

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