2000年 夏合宿 山行記

筆者 S・E (3年生)

 3年生6人により編成されていたワンゲル部に1年生が入部して早4ヶ月。ここに無事に平成12年度の夏合宿が行えたことを感謝したい。さて、今年の合宿は3年生のM、1年生のWの不参加により、3年生5名と1年生4名と教員3名の計12名で実行された。



7月29日(金)
〈1日目〉

 新宿に集合、遅刻した者はいない。3年生はとても成長したものである。そこからはバス、タクシーを乗り継ぎ、難なく塩川小屋に到着、私達以外にはその日の宿泊者はいなかった。だが、ふとんは食事付きの人のためだけらしい。このときふとんは輝いて見えた。



7月29日(土)
〈2日目〉

 この日から本格的に合宿に突入。しかもこの日は5時間で1300m登るという一番大変な日であった。だが、そんな苦難もリーダーである私の快適なペース作りのお陰で(?)スイスイと乗り越えていき、この日は三伏峠を越えて、三伏小屋の幕営地に泊まった。三伏小屋幕営地はまるで「キャンプ場」のようで、雰囲気は素晴らしいものであった。ただ一つ気になったことと言えば、隣の高校生のパーティが「きんぴらごぼう」を作っていたことである。「おふくろの味」は山では効果絶大なのであろうか。



7月30日(日)
〈3日目〉

 この日も私の快適なペース作りのお陰でスイスイと乗り越えていった、と言いたい所だが、さすがに塩見岳の岩場歩行の楽しさにぐいぐいと引き込まれてしまい、自分を見失ってしまい突き進んでしまった。プーブーと不満を言われたが許していただきたい。歩行2日目なんだから。

 塩見岳を越え、雪投沢源頭で幕営の予定であったが、水を発見できず、北荒川まで歩き続けた。その幕営地には管理人がいないばかりかトイレもない。ここ最近そのような山行はなかったので少しさびしかった。トイレがないのには。だが無事に3日目も過ぎた。



筆者 T・N (3年生)

7月31日(月) 〈4日目〉

 さて、4日日は本来の計画では雪投沢源頭幕営地から蝙蝠岳のピストンをやってから熊ノ平小屋幕営地へと向かう予定であったが、前日、雪投沢に水場が存在してないことがわかり、急遽予定を変更して、北荒川岳キャンプ指定地までいって幕営したために、蝙蝠岳のピストンはすでにカットになっていた。さらに、歩行時間調整のため農鳥小屋まで行き、天気がよければ農鳥岳のピストンもやるという大幅な変更がなされていた。

 5:09に北荒川岳キャンプ指定地を出発。前日から降っていた雨も上がり、適度な風でなかなか快適であった。順調な歩行で小岩峰に到着。ここは展望が開けた場所であり、天気もいいので長めに休憩を取ることにした。考えそみると、夏合宿で晴れたのは今日がはじめてである。そう考えると、夏合宿というのは例年本当に天気に恵まれないんだなと思った。写真も撮り、景色を堪能したので20分後に出発した。視界はないものの、天気がいいので気持ちよく歩けた。休憩を1本はさみ8:50に熊ノ平に到着。立派な小屋があり、近くには沢が流れていた。周りに目をやれば、これから登る道が延々と続いていた。いつもなら、この急な道を見ただけでうんざりしてしまうのだが、今日はそれよりも農鳥岳からの眺望に対する期待の方が大きかった。

 9:03に出発。三国平までの登りは確かに急であったが、Eリーダーのペースのおかげでぜんぜん疲れなかった。そのため、なんなく三国平に到着。時刻は9:44。ここで昼食を摂ることにした。この昼食の準備中に、Eに「今のペース完璧だった」っていったらEが少し照れていて面白かった。そのあと、しばらく各自時間をつぶしていたのだが、若干1名肌を焼いている人がいてみんなの注目を集めていた。

 10:30に出発。こっちからは視界をさえぎるものもなく、でっかい右の上を歩く感じであったので、スリリングでなかなか面白かった。途中の沢で水を補給し、最後のつらい急な登りをがんばれば、農鳥小屋はすぐであった。時刻は12:30。農鳥岳のピストンも十分可能であったが、最後の登りが相当きつく、みんな相当バテていたので明日に持ち越しとなった。

 楽しみにしていた農鳥岳からの眺望であったが、明日も晴れてくれることを願い、すんなりとあきらめることにした。



8月1日(火) 〈5日目〉

 朝は早いがもう慣れているので、寝坊はしなかった。外の天気が気になっていたので、起きてのぞいてみる。ふきつける雨、強風、農鳥岳には濃い霧がかかっていた。まさに、最悪の状況であった。話し合いが持たれ、しばらく様子を見てから決めるということであった。が、一向におさまる気配はなかった。そうこうしているうちに、7:00になろうとしていた。これ以上のばすと、あとの行程がこなせなくなるということで、最後の話し合いが持たれた。結局、リーダーの意思を尊重して登ることになった。

 6:55出発。荷物が軽いのと、リーダーが頂上まで1本で行くといっていたので、ペースはほんとにメチャクチャな速さであった。本来なら1時間30分かかるところを1時間10分でついてしまった。心配された天気であったが、時間がたつにつれ太陽が姿を見せ始めていた。そして、頂上に着いた時は快晴であった。そこからは北岳、間ノ岳が見える。そして360度のパノラマ。やっぱり3000m級は違う。ずっとここにいたい程であったが、残りの行程もあるため30分後に出発。きた道を引き返す。

 9:28にテン場に到着。すぐに昼食をとり、重いザックを背負い10:30に出発。歩いてすぐに雷鳥に出会ったが、みんなあまり関心を示さずにさっさといってしまった。せっかく出会ったのに残念であった。間ノ岳までの登りはそんなにきつくもなく、別に面白い道でもなかったので、淡々と登っていた気がする。

 12:04に間ノ岳に到着。このとき既に濃い霧が周りを覆っていたので眺望はなし。雨がぽつぽつと降ってきたので雨具を装着。しかし、ザックカバーはとりあえず大丈夫だろうという判断であった。12:20に出発。次第に雨が激しくなっていた。13:23に中白根山に着いたときは、どしゃぶりであった。間ノ岳での判断ミスは致命的であった。ザックはすでにびしょびしょで、最悪である。北岳山荘には13:55に着いたが、間ノ岳から北岳山荘までの道は別の意味で非常に過酷なものであった。しかしながら、北岳山荘についたときは雨はやんでいたので、雨のなかテントを建てるという最悪の状況は回避できた。

 テントの中で飯を作っていると、そういやテントでの生活もこれが最後だなと思い、妙にさみしかった。



8月2日(水)
〈6日目〉

 朝、天気は良好。目の前には北岳がそびえている。すばらしい日の出を見た後、出発。北岳まではごつごつした岩の連続でペースも一定じゃなかったが、何とか登りきった。思ったよりは楽であった。北岳はさすがに日本第2位の高さを誇る山だけに、登山者の数はとんでもなく多かった。あちこちで、おばさん、おじさんのけたたましい声が聞こえてきた。個人的には、もっと静かな場所で景色を眺めるのが好きなだけに、少し残念であった。

 最後の写真を撮り、この景色を目に焼き付けた後、出発する。時刻は6:44。北岳からは右俣コースをとったのだが、下から登っで来る登山者が多く、ペースはゆっくりであった。途中二俣で昼食をとり、その後もひたすら下った。しばらくして降ってきた雨も、これが最後の歩行だと思うとぜんぜん気にならなかった。北岳から下ることおよそ3時間30分で広河原に到着。例年のように温泉組とそのまま帰る組にわかれ、この夏合宿は無事終わりを迎えることができた。



《「稜線」第22号(2000年度)所載》

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