小 説 空手の記 (25) by あき よしき

この物語は作者の実体験に基づいてはいますが,フィクションです。

じりリリリッという音と共に、朝が始まった。
体が異様に重く感じた。
「仕事か。」
うめいて彼は、体を起こした。ベッドから這い
出し、鏡の前に立った。
ポサポサで,寝癖のついた髪の毛を見ながら、
歯ブラシに歯磨き粉を塗りたくり、口の中へ突
っ込んだ。
ジャジャジャ、とブラシを上下に動かした。
「ちぇ、行きたくねぇな。」
思わず呟いていた。
からだも頭も別の所にあるように思えた。
シャワーを浴びた。
体のあちこちが痛んだ。
タオルを頭からかぶりだらだらとキッチンに行き
インスタントみそ汁をお椀にあけ、湯を注いだ。
パンをトースターに突っ込むと、着替えにかか
った。
テレビが今日の天気をさえずっていた。
「なんか、痛え。重いわ。」
着替えが永遠に続くような気がした。
もよおして便器に座ろうとしたが、かがむのが
つらい。それでも組み手の満足感が感じとして
残っていた。
それは,体の動きとは別のものらしかった。


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