じりリリリッという音と共に、朝が始まった。
体が異様に重く感じた。
「仕事か。」
うめいて彼は、体を起こした。ベッドから這い
出し、鏡の前に立った。
ポサポサで,寝癖のついた髪の毛を見ながら、
歯ブラシに歯磨き粉を塗りたくり、口の中へ突
っ込んだ。
ジャジャジャ、とブラシを上下に動かした。
「ちぇ、行きたくねぇな。」
思わず呟いていた。
からだも頭も別の所にあるように思えた。
シャワーを浴びた。
体のあちこちが痛んだ。
タオルを頭からかぶりだらだらとキッチンに行き
インスタントみそ汁をお椀にあけ、湯を注いだ。
パンをトースターに突っ込むと、着替えにかか
った。
テレビが今日の天気をさえずっていた。
「なんか、痛え。重いわ。」
着替えが永遠に続くような気がした。
もよおして便器に座ろうとしたが、かがむのが
つらい。それでも組み手の満足感が感じとして
残っていた。
それは,体の動きとは別のものらしかった。