よしきは、中段突きを打った。
入った、と思った。
デソーザの突きはよしきの頭をかすって逸れ
て行った。
よしきの突きは真っすぐに、デソーザの中段
を突いていた。
「やめっ」
開始線に二人とも戻った。
「不十分、取りません。」
(えっ)
よしきは思った。不満を面に表し師範を見た。
(入ってる、しかもデソーザの突きは避けた。
なんで?)
「続けて、始めっ」
二人とも再び構えた。
「えいやっ」
デソーザの気合いがほとばしり、突きが飛ん
できた。
(痛っ)
体のどこかに当たった。
デソーザの突きはどこに当たっても痛いと感
じた。しかし、師範は取らなかった。
(当たっちゃいけない。)
痛みに対する恐怖が走った。
(先に撃ち込まなければやられる。)
デソーザの必死の目が迫っていた。
右拳を高く構えた。
太い腕が伸びてきた。
「とおっ」
気合いを放った。
デソーザの面包が、パアアンと鳴った。