(4)
その夜の夢もいつも通りだった。
はじめのうちは。
くちゅくちゅと音を立てて耳孔を執拗に舐られ、イルカはビクビクと身体を震わせた。あまりの刺激に反射的に逃れようとするイルカをその腕に抑えこんで、男は更に激しく耳元を弄った。
「あああァッ....!」
イルカは堪えきれなくなって声をあげた。耳はイルカの一番弱いところだ。それを熟知する男はいつもイルカがすすり泣くまで耳を責め立てるのだ。今も充分過ぎる愛撫にイルカの目尻には涙がうっすらと浮かび、身体は快楽にわなないていた。
「か〜わいい.....」男はふっくらとしたイルカの耳朶を甘噛みしながら、うっとりと囁いた。
男の手が無遠慮にイルカの下半身へと滑る。耳への愛撫だけで既に張り詰めていたイルカ自身を確認すると、ズボンの上からゆっくりと擦りあげた。
「...ハッ....やっ、...アアッ...!」
やわやわと焦らすようにゆるく揉まれ、イルカが眉を寄せる。耐えられない。
「もうこんなに固くして....」
イヤラシイなぁ、と男が意地悪く言うと羞恥にイルカの頬が赤く染まった。
「...も、...やめて、くださ...」イルカが全てを言い終わらぬうちに、男の手が素早くズボンの中に入り込んで強くイルカ自身を扱いた。
「ひああぁぁ....ッ!!」突然施された強い刺激に、イルカの体が大袈裟なほどビクンと跳ね上がる。
「やめて、って...何言ってるの。」見てごらん、と乱暴にズボンを脱がされると、見せつけるように下肢を大きく開かされた。男に背後から抱きすくめられる形で開かされた腿の間には、先走りにぬらぬらとしたものがそそりたっていた。イルカは思わず目を背けたが、男はそれを許さなかった。
「ホラ....よく見て?」
ソレに手を添えてわざと的を外した動きでイルカを誘導する。たまらずにイルカは淫らにも腰を揺らめかした。もどかしい愛撫に喉がひくひくと鳴る。
「ね....?こんなに汁を零してびしょびしょにしておいて、やめてはないよね?気持ちいいんでしょ?」
「.....!」
優しく囁く声が小憎らしい。身体がもっと強い刺激が欲しいと叫んでいるのに、イルカは必死で我慢した。ここで頷いたら相手の思うつぼだ。
黙っていると、返事を待たずに男は欲望を握る手を激しく動かし始めた。ぬちゃぬちゃとイヤラシイ音を立てながら緩急をつけて巧みに扱かれる。その動きに連動して、イルカは「あッ、あッ」と声をあげた。恥ずかしい。男に握られて、こんなよがり声をあげている。快楽に溺れながらもイルカは、混濁する意識の下でそんなことを思った。
その時男の指がぐりぐりと鈴口を容赦なく弄った。
「ひあぁぁぁ....ッ!」イルカは一際甲高い叫び声をあげて、白い汁を勢いよく撒き散らした。
脱力して思わず、背後の男の胸に頭を預ける。それを待ちかねたかのように男は受け止め、イルカの額や頬、首筋といったところに優しくキスの雨を降らせる。
「こんなに気持ちよさそうなのに」強情だねえ、と男がわざと愁眉の面持ちで溜息をもらす。でも、その声は表情とは裏腹に楽しげだ。
男はまだ呼吸の整わないイルカを布団の上に横たえると、膝を抱えて腹につけるような形で大きく曲げさせた。
「あ....やぁッ....」蕾を男にさらけ出す恥ずかしい格好にイルカがもがくのをお構いなしに、先ほどのイルカの精液で濡れた指を1本ずつ、ゆっくりと慎重に埋めこんでいく。
「あ...ふぅっ....」いつまでたっても慣れない異物感にイルカはきつく歯をかみ締める。
「あ〜、駄目でしょ、そんなに力をいれちゃあ。」そう言いながら男は締まる後孔をこじ開けるように、ぬちゃぬちゃと指を抜き差しする。
時々いいところをぐりぐりと擦られ、イルカはひっきりなしに嬌声をあげた。精を放ったばかりのイルカ自身がまた首をもたげる。
そんな自分の浅ましさに涙しながらも、イルカは足りない刺激に苦しげな喘ぎ声をあげた。もっと奥まで弄って欲しい。そんな淫らな欲求に正直な身体が、男の指を強請る様に締め付けては離すまいと絡めとる。もっと深くくわえ込もうと腰が勝手に揺れる。
「俺...も....ォ....!」何がなんだかわからなくなって、イルカは男にしがみついた。
仕方ないですねェ、男はのんびりとした口調で答えながらも、その表情は真剣で余裕がなかった。
イルカから指を抜くと、大急ぎで自分の前を寛げ、いきり立った己自身を取り出す。
熱い肉塊がヒタリとイルカの後孔にあてられる感触に、イルカは粟立った。いつまでたっても慣れない感触。
ググッと男が腰を進めた。
「あっ..ふぅッ...」男の質量がイルカの中を侵食してくる感覚に、イルカの腰が痺れるように疼く。
男は全てをおさめると、最初はゆっくりと腰を回してイルカの反応を確かめ、律動を開始した。
「アァッ....アッ....ハアッ....」
がくがくと身体を揺さぶられ、奥をこじ開けるように突き上げられる。パンパンと肌がぶつかりあう音にぐちゅぬちゅと淫らな水音が混じる。
たまらなく淫靡だ。
「イルカ先生....」と突然男が呟いた。
イルカはビクリとした。今名前を呼んだ?
「イルカ先生、イルカ先生、イルカ先生......!」男はたまらない、といった様子でうわごとのようにイルカの名前を繰り返した。
イルカを穿つ動きがよりいっそう激しくなる。イルカを今まで感じたことがないほどの熱の高まりが襲った。
今まで閨の最中に男に名前を呼ばれたことはなかった。
それなのに。
名前を呼ばれただけで。
たまらなく、感じた。気持ちいい。
こんなに気持ちいいなんて。
中を犯しながら男は体を倒してイルカの唇を貪った。深い口付けに唾液が口の端から零れ落ちる。
上も下も同時に犯される快感に、イルカは2度目の精を放った。
まもなく、男の熱い迸りを身体に感じた。
荒い息の整うまで、二人は重なり合ったままだった。
汗にぬれた体が何故か気持ちよかった。
いつもは不快だったのに。今は離れがたい、とさえ思う。
ああ、まずい。
イルカは顔をしかめた。
俺、夢にはまってるよ.....
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