(13)

殺していい、とイルカが言った。
イルカも解放されたがっているのだと思った。
俺から、解放されたいと。

イルカがゆっくりと目を閉じた。

イルカは待っている。この苦痛が終わるのを。

でも、もう俺には。


いつまでたっても降りてこない手をいぶかしんで、イルカが薄く目を開けた。
カカシはもう一度目を閉じるのを促すように、イルカの目蓋を親指の腹で撫でた。

俺には、できない。

カカシは再び目を閉じたイルカの目蓋に口付けを落とした。
イルカが吃驚したように体を震わせる。そんなイルカの目蓋にもう一度口付けを落とす。

手に入れることも。
手放すことも。
殺すこともできない。

カカシはそのまま鼻や頬に口付けを落としながら、最後に辿りついたイルカの唇をそっと啄ばんだ。カカシは優しく何度か啄ばむようにするとイルカの口の中に舌を忍び込ませた。ゆっくりとなぞり上げては絡ませる。角度を変えて、何度かそうして口付けてからカカシが口を離すと、イルカが不思議そうな顔をしてカカシを見上げていた。
顔を見るのは辛いな、とカカシは思った。視線を避けるようにイルカの体を裏返した。背中の傷から流れ出した血が、イルカの上着を赤黒く染めていた。カカシはそうっとイルカの上着をたくし上げ、血に濡れた背中を露にした。出血する傷跡をカカシはじっと見つめた。

ナルトを庇ってできた傷跡。
ナルトのために、イルカが刻んだもの。
俺がイルカに刻んだ傷とは全く違う。
どんなに刻み直しても、これはナルトのものなのだ。
イルカがナルトに与えたものなのだ。

俺も、欲しかったな。

カカシの小さな呟きが聞こえたのか、イルカがカカシの方を振り返った。目を何回も瞬かせる。
イルカが何かを言おうとして口を開いたのが見えた。
だが、聞くつもりはなかった。
開きかけたイルカの口を塞ぐように口付けると、カカシは前に手を回してイルカのものを愛撫した。緩急をつけて扱いては、先の敏感な部分を親指で円を描くように撫でると、イルカからぬるぬるとしたものが零れ出す。イルカの口からは紡ごうとした言葉の代わりに、熱い吐息が漏れていた。今度はちゃんと解してイルカに挿入した。なるべく長くイルカの中にいたくて、ゆっくりと出し入れをしていたが、やはり我慢できるはずもなく、気がつくと激しく腰を突き入れていた。自分の限界が近いのが分かった。イルカの腰を引き寄せて一際大きくイルカの中を穿つと、そのままぐっと腰を押しこんでカカシは全てを吐き出した。

これで最後だ、とカカシは思った。

イルカを抱くのも、これで最後だ。
俺はイルカを手放すことも、殺すこともできない。
イルカを苦しめることしかできない。
でも、俺にもできることがあった。
イルカのために。

俺が、消えればいいのだ。

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