green 四日目

イルカ先生の誕生日には俺が腕によりを振るいますから!俺、イルカ先生の家で先に準備して待ってます。

カカシの言葉を思い出して、イルカは顔を顰めた。

「いい加減なこといいやがって・・・」

就業ベルと共に職場を後にして急いで帰って来たのに、ドアを開けたそこにカカシの姿は無かった。少しだけ待ってみた。コチコチとやけに耳につく時計の音を聞きながら、なかなか進まない時間を辛抱強く待った。30分・・・1時間・・・2時間・・・。2時間を回ったところで、流石にこれはおかしいだろうとイルカも気付いた。ひょっとしてカカシは今日来ないつもりなんだろうか。任務が入っていないことは分かっている。何かあったんだろうか。それとも。

もう終りにしたいんだろうか。

考えてきゅっと唇を引き締める。イルカは堪らず玄関から外へと飛び出した。とても家の中でじっとしていられなかった。

カカシ先生の本当の気持ちを知りたい。俺の誕生日が楽しみだといっていたのは嘘だったのか。今日来ないのはもう俺に気がないからなのか。本当のことを。こんなもやもやとした気持ちは嫌だ。

夜の道をイルカはカカシの家へと走っていた。カカシが家にいるという保証はなかったが、他に取り合えず思いつかなかった。

もう終りにしようといわれたら、俺はどうするつもりなんだろう・・・

走りながらイルカは心を暗くした。

なんて誕生日なんだ・・・!もし今日でカカシ先生との関係が終りだとしたら、俺は毎年自分の誕生日にこのことを思い出して、悲しい気持ちになるんだ・・・最悪だ、畜生・・・・

カカシの家に着くと窓に明かりがついていた。イルカは夢中でその扉を叩いた。

「カカシ先生、俺です!カカシ先生・・・」

どんどんと激しく扉を叩いていると、キイと躊躇いがちに扉が開いた。

「カカシ先生、あんたね・・・!」一体どういうつもりですか、と怒鳴りつけようとして、イルカは呆気に取られてその言葉の続きを失った。だって扉の向こうでカカシが泣きそうな顔をしている。

「イルカ先生・・・お、俺、俺・・・・」言いながら本当に瞳に涙を浮かべるカカシに、イルカは先程までの憤りが急速に萎えていくのを感じた。

・・・泣きたいのは俺の方だよ・・・・

イルカは思いながらも、「どうしたんですか?俺、待ってたんですよ・・・」と控えめに言葉を選んだ。

カカシはしょんぼりと肩を落としながら、家の中にイルカを促した。玄関には豪華な食材がパンパンに詰まった買い物袋が無造作に転がっていた。靴箱の上には誰が食べるんだという、大きなケーキ。それを見て、イルカは自分の取り越し苦労に気付いた。

なんだ・・・やっぱり本当に祝ってくれるつもりだったんだ・・・そうか・・・

心底ホッとして緊張に顔も心も緩む。

だったらどうして来てくれなかったんだろう・・・?

その謎はすぐに解けた。カカシは項垂れながら緑の葉が元気に茂る鉢植えをイルカに差し出した。

「イルカ先生に・・・今度は俺が花をプレゼントしようと思って・・・一生懸命育てたんですけど・・・」

カカシの話にイルカは仰天した。あの朝寝坊でだらしのないカカシが、何と種から育てたらしい。毎朝早起きをして水をあげて。そうか、とイルカはようやく理解した。

そうだったのか・・・鉢植えが心配で毎日家に帰って・・・そうだったのか。

「だけど花が咲かなくて・・・俺頑張ったんですけど・・・他にプレゼント考えてなくて・・・それで・・・」

カカシの言葉尻が段々小さく途切れがちになる。

「イルカ先生の喜ぶ顔が見たかったのに・・・」

その消沈した背中にイルカは自分の疑心を恥ずかしく思った。こんなにこの人は俺のことを思っていてくれたのに。寝坊すけのカカシが毎朝目をこすりながら鉢植えに水をやる姿を思い描いて、イルカは思わず小さく笑った。似合わない。だけどすごく。

愛しい。

笑いながらイルカは少し泣きたくなってしまった。こんなに嬉しい誕生日は初めてだった。

「カカシ先生・・・これはね、葉っぱを選定しなくちゃいけなかったんですよ・・・葉っぱが茂りすぎて花を咲かせる栄養が足りなかったんです・・・・」

「そうだったんですか・・・!」

更に肩を落とすカカシにイルカはそっと口付けた。そんな事滅多にしない。それだけで頬がすごく熱くなった。カカシも同じだったようで、滅多にないイルカからの口付けに耳まで赤い。

「イ、イルカ先生・・・・!?」

おろおろするカカシが少しおかしい。ああ、この人はこんなことくらいで動揺するほど俺のことが好きなんだ。そうなんだ。
イルカは益々口元を緩めながら言った。

「・・・俺には今まで一番のプレゼントです・・・別に花をつけなくても俺はこの緑の葉っぱが好きですよ。だって、永遠に変わらない緑のように、俺のことを好きってことですよね・・・」

満面の笑顔を浮かべるイルカに、

「イルカ先生・・・!」カカシは突然イルカを抱き寄せると、ちゅっちゅっと口付けの嵐を降らせる。

「うん、そうです。俺はあんたのことが・・・好き。ずっと、ずっと・・・この気持ちだけは変わらない、絶対・・・」

「・・・プレゼントありがとうございます・・・」

イルカも言いながら、カカシに口付けた。 

 君を想う心。

その気持ちはever green。

 

イルカは一番欲しかったものを手に入れた。

 

HAPPY BIRTHDAY,
イルカ先生!!

 

end

 

 

 

 

おまけ

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