話の舞台
百人一首にある持統天皇の歌
「春過ぎて 夏来にけらし 白妙の 衣干すてふ 天香具山」
そのまま解釈すれれば単に風景を読んだだけの歌である。しかし神領である天香具山に干してある衣が天女のものであるとすれば、違って見えてくる。
持統天皇は天智天皇の娘にして天智の弟・天武天皇の后でもある。壬申の乱で天武天皇は天智の皇子から皇位を手に入れる。それは持統天皇の異母兄弟から叔父に系統が流れたことを意味する。このままでは父・天智の血が皇統から絶えてしまう。持統天皇はあらゆる手を使い、自分の孫を皇太子に指名することに成功したのだった。
絵について
春から夏というのは権力の移動を表したのである。歌の中で、持統天皇は皇位を天女になぞらえた。天女は羽衣を奪われると神通力を失う。衣を奪うことは皇位を奪うことである。絵では持統天皇が孫の軽皇子に衣を奪いように仕向ける様子を描いた。
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