第15回

第15回

59. < G-Gプロット (摩擦円) >

これまでウィリー限界、リヤリフト限界、ロール角と横Gの関係について書いてきましたが今回はそれらをまとめて実際にバイクは何G出てるかを見たいと思います。

図にあるグラフ、これをG-Gプロットと呼びます、摩擦円とかフリクションサークルとか言ったりもしますね。
横軸に横G、縦軸に前後Gを実際に走った時のデータでプロットします、これを見ればバイクが前後左右に何G出てるかが分かります。
右下にドライの時とウェットの時のデータを挙げましたがウェットのデータの赤は全方向で発生Gが小さくなっているのが分かります。
ドライとウェットで形も点々の分布も同じになっていて走り方に変わりはなくて単純に限界が全方向に6割くらいに低くなっているのが興味深いですね。

さてデータはスーパーバイククラスのデータです、つぶれたハートみたいな形をしていますね、この上にバイクのスペックからこれまで解説してきたウィリー限界、リヤリフト限界、最大ロール角から横Gを計算してみて線を引いてみました。
どうです? まあそこそこ合ってますね。 信号はばらつくもんですから濃いところが一番データがばらつきの中間になります、目を細めてみると「おー まずまず合ってるじゃん」って言ってもらえると思いますよ。
本来タイヤのグリップはどの方向にも同じで摩擦円っていうくらいで円になるのが基本なんですが、2輪の場合はウィリー限界とリヤリフト限界のせいで前後方向には限界が低くなってしまいますので円の上下を水平に切ったような形になります。
この上下が平らになった円がバイクの限界になりますからすべての点がこの円に沿っていればバイクの限界を駆使して走っていることになります、円の内側に点が少ない程ライダーがタイヤグリップを無駄にしていない良いデータということができます。

加速方向を見てみましょう、横Gがゼロ近辺では加速Gがウイリー限界より低くて軌跡の上半分がVの字みたいな形になっています。
これはコーナーの立ち上がりにバイクを起こしながら加速して行き、バイクが起きて直線に出た頃には高速になって加速は鈍くなって(加速Gは低くなって)ウイリー限界に届かないからです。
バイクってサーキットではあまり直進ってしてないもんなんですよね、いつもどっちかに寝かして走っています、だから横Gゼロの所の点の塊の両脇は点が薄いですよね。
横Gゼロの点の塊がほんとの直進です、もう直線の終わりあたりなので加速度も低くなります。

次に減速方向を見てみると横Gゼロのあたりでは加速のような点の塊がありません、ちょっとずれたところに薄い塊があります、直線でブレーキングして放してターンインなんて古い話で減速は倒し込みながらなのがよくわかります。


では2輪と4輪の比較もしてみましょう、走り方の違いが出て面白いですよ。
2枚目の絵を見てください、青がスーパーバイク、赤がスパーフォーミュラです、もう全然違いますね。

フォーミュラの横Gは3G越えてます、これはダウンフォースのお陰さまさまです、もう車重の何倍ものダウンフォースが押さえつけているのでこんな高Gが出るんですね、首も太くなるわけです。 ブレーキングはもっとで3.5Gくらいです、これは注意が必要で3.5Gはストレートからのブレーキングの初めに出るGでそこから減速していくと当然ダウンフォースも減るのでそこまでのGは出ません。
一方加速は2輪の方が高いGが出ています、ダウンフォースを得るために空気抵抗もすごいですしそもそものコーナリング速度が高いのでそこからの加速はそれほどでもありません。

走り方を見るとブレーキングからミッドコーナーまでの点が少ないのが2輪との大きな違いです、2輪はブレーキを弱めながら横Gをだんだんに高めていき摩擦円の縁を沿うように点が並んでいますが4輪はブレーキングをあっという間に終わらせていきなりミッドコーナーにジャンプします、4輪はハンドルを切ることでコーナリングフォースを得ますから横Gのレスポンスが速いです、たいして2輪は寝かしていくことでコーナリングフォースを発生させそれとバンク角をバランスさせなくてはいけません、どうしても時間がかかります、その違いが点の分布の違いに出ています。
2輪と4輪のG-Gプロットがこんなに違うとは私も予想しませんでした、やっぱり2輪と4輪両方比べてみるのは面白いですね。



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