第5回

5. < ロール荷重移動 (2) >

では前回の図にタイヤ横力(タイヤコーナリングフォース)を入れました、タイヤ接地点に横向きに掛かっているのがそれです。
大きさは遠心力”m x a”の半分ずつが両輪に掛かります。
これで車両に掛かる右行きと左行きの力が釣り合ってどっかに行っちゃうことはなくなりました。

式(1)は前回出てきたロール角の式と同じです、ロールモーメントの釣り合いの式です。
(ロール角)= (ロールモーメント)/ (ロール剛性)

モーメントになるとややっこしく見えますがばねで言えば (変位)=(力) /(ばね定数) と同じことです。

式(2)はロールセンターまわりのモーメントの釣り合いの式です。
右回りと左回りのモーメントの合計も釣り合わないと車がひっくり返っちゃいます、
ここで説明してるのは“定常”です、定常旋回中ロールモーメントは釣り合って、ロール角は安定しています。
逆にロールモーメントが釣り合っていないとロール角が変化している途中ということになります、これが“過渡”です。

(1)のロール角Φを(2)に代入します、そして整理します。
あらかた+-帳消しになって(3)の結果になります、ほら前回の荷重移動の式と同じになったでしょ。
ロールセンター高さもロール剛性もいなくなっちゃいました。

注)車体がロールしたことで重心が中心からずれたことによる左右の荷重移動はごく小さいため無視します。

ところがですよ、そこのジムカーナのおじさん、
車は平たい2輪じゃなくて4輪なんですよ、当然ですよね。
ブレーキの話の時にも車には右側と左側があったんですが車の右と左は対称じゃないですか、ばねもアームも重量も、対称じゃないのはNASCARの車くらいです。
ロールはそうは行きません、ロールセンター高さも、ロール剛性も、コーナリングフォースも前後で違います。
結果として前後のロールの荷重移動量も違ってきます、これがアンダーステア、オーバーステアのキモですよ、おじさん。
荷重移動の前後の配分がアンダーステア/オーバーステアを決めるのであってロール剛性配分だけで判断するのは不十分です、ロールセンター高さの前後の違いも考慮に入れないといけません。
ロールはそんな簡単には済ませられません。

あっ、でもロール角は前後同じです(笑)、でも「フロントのアウト側がぐーっと深くロールしてる時があるぞ」とかフロントとリヤのロール角が違うと思ってる人って意外にいると思います、気持ちは分かりますよね。
車がねじれない限りロール角が違いようがありません、前後のロール角が違う気持ちになっちゃうのはロールとピッチが一緒に起きてるからです。
ロールしながらピッチングで前下がりになるとフロントのアウト側が一番低くなるのでまるでフロントの方が大きくロールしてる“気がする”のです。

というわけで次から数回は “運動性能、気持ちは分かるけど” から外れてまっとうなロールの解説になります。
前後に分けた荷重移動の計算の話なのですが、その前に前後のタイヤ横力を各々求めないと、ということで次回です。


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