第46回

46. < バイクのアンチダイブ(プロダイブ)率 >

駆動方向のアンチジオメトリーを書いたら制動方向も書いておかないといけません。
今回と次回でバイクのアンチダイブ、アンチリフトを説明します。
以前にも近いことを書いていますがアンチダイブ率まではきちんと説明していなかったのでここでまとめておきます。

考え方は駆動とほぼ同じです、駆動力の代わりに制動力になります、気をつけないといけないのは制動力が一つではなく前後に配分されるところです。
それではフロントのアンチダイブです。 フロントフォークは往復運動です、その回転中心はどこにあるのでしょう?
それは無限に遠い所です、無限大の半径の円の円弧は直線である、ってことですがわかりにくいですね。
どの方向に無限に行ったとこに中心があるかっていうと円弧に直角に方向ですよね、ですからフォークに直角で無限に遠くに中心があります。
ではその中心からタイヤ接地点に線を引きます、角度は? フォークに直角に引いた線と平行です。 無限に遠い点から引いた線は平行線ですね、太陽光が平行なのと同じです。

今引いた線のアーム周りのモーメントからアンチダイブ力を求めると図のようになります、やり方は駆動の時と同じで駆動力がフロントブレーキ力に変わっただけです。
そうです全部のブレーキ力がフロントに掛かるわけではありません、リヤにもブレーキ力が掛かります、ブレーキ配分ですね例えばフロント60%、リヤ40%のブレーキ力でフロントブレーキ配分60%です。
フロントのブレーキ力は全ブレーキ力にフロントブレーキ配分を掛けた値を使わないといけません。
そして全ブレーキ力は減速の加速度と質量を掛けたものと等しいわけです。

もうひとつ、アームの赤い線が接地点から地中へ下がっています、駆動の時は接地点からアーム中心へ上がっていっていましたから逆向きです。
つまりブレーキ力によるアンチダイブ力はフォークを縮める方向に働くのです、マイナスのアンチ力です。
これはもはやアンチ力ではないのでこの場合プロダイブと呼びます。
ブレーキングによる荷重移動でフロント荷重は増えてフォークは縮みます、それに加えてプロダイブ力がフォークをさらに縮めようとします、ただでさえ前のめりになるのにもっと前のめりにしようというのです、ヘンテコですね。

駆動と同じようにフロントブレーキ力による荷重移動に対するプロダイブ力の比率をプロダイブ率といい図にその求め方を書きました。
ポイントはプロダイブ力に出てきたフロントブレーキ配分がホイールベースに掛かってきてωの線がホイールベースのブレーキ配分の所からの線になる所です、図の式の展開を注意してください。
ωの線の求め方は違いますが最後の式は駆動と同じωとβの角度の比になります。

バイクでブレーキングしてコーナーに入っていくときフロントに荷重が乗っていないと怖くて曲がれる気がしません、ラジエタ-を湾曲させ、エクゾーストを曲げ曲げして少しでもエンジンを前に載せようとするのも前輪荷重がほしいからでしょう。
アンチダイブだろうがプロダイブだろうが制動Gによる荷重移動は同じです、つまりタイヤ荷重の点ではアンチも何も関係ありません、アンチ力はサスペンションに掛かり姿勢を変化させるものです。 逆に言うとプロダイブはブレーキによる荷重移動に加えて姿勢変化を大きくすることによる前への重量配分の移動によりタイヤ接地荷重を増やそうとしているのではないかと思うのです。
プロダイブにより更に前のめりになりその姿勢のおかげでフロントの荷重が増える、それのためにプロドライブは必要なのではないかということです。
以前にも書いたように4輪は制動時フロントはアンチダイブジオメトリーでダイブを抑えるのが普通で私の関係したレース車はアンチダイブ率が100%でした、ブレーキングでフロントサスペンションが全然縮まないということです(サスペンションは縮まなくても荷重移動でタイヤはつぶれますから多少ダイブはします)。
なんで2輪と4輪でこんなに違うか、2輪は姿勢変化も使ってフロント荷重をかせでいるのでは、と思うわけです。
BMWのテレレバーもツーリングではブレーキング時姿勢変化が少なくてヘコヘコしなくていいですが攻めだすとフロントに荷重が乗ってる感じがしませんしスーパースポーツにはテレレバーは付いていません。
この件についてはどこかで制動Gによる荷重移動と姿勢変化による荷重移動について考えたいと思います。



Copyright(C) 2007-2019   富樫研究開発