第39回

39. < エアロバウンシング、ポーポジング (1) >

ツーリングカーでもダウンフォースの大きいGT500やDTM、それにWECのLMPカーなどのレースで車両が直線でフロントが激しく上下に振動してるのを見たことがないでしょうか?
直線の後半ぐらいに差し掛かると突然フロントがバタバタと上下し始めて1コーナーのブレーキングまで続いています、なんでしょうあれ?

あれはエアロバウンシングとかポーポジングとか言われるものです。
なぜ起きるのかきちんと説明しているものがないし、エアロダイナミストと呼ばれる人でも良くわかってない人がいたので説明しておきます。

前回使用したエアロマップですがあそこに表示した範囲の外に車高が行ってしまったらどうなるでしょう?
大体は同じ傾向で延長していけばいいんですがフロントが低い方向へ行くときは例外です。
フロントが低くなっていくと車両前端のスポイラーはもっと低くなってあるところまで行くと空気がスポイラーの下へ流れなくなってしまうからです。

現代のエアロカーはダウンフォースの大部分をフロアの下を流れる空気の圧力で出しています、正確にはフロア下の圧力が低くなって車両上下面の圧力差で車両を地面に押し付けているのがフロアでのダウンフォースです。
狭いところを空気が流れると流速が早くなって、流速が早くなると圧力が下がる、圧力が下がるとダウンフォースが大きくなる、これがフロントの車高が低くて隙間が狭いほうがダウンフォースが大きくなる理屈ですね。
なので世のレースエンジニアたちはとにかく車高を下げて走らせようとするわけです、どれだけ車高を下げれるか勝負でばねをすごく固くしてみたりばね特性をすごくプログレッシブにしたりしてダウンフォースによる車高変化を小さくして静止時の車高(イニシャル車高)を低くしようとするわけです。

そしてやりすぎるとフロント車高が下がりすぎてスポイラーが地面に擦れて削れちゃったり、上に書いたように空気が入ってこなくなっちゃったりします。
空気が流れなくなるとどうなるでしょう? 空気の流れを使ってダウンフォースを出していたのですから空気が流れなくなると途端にダウンフォースがなくなっちゃいます、車高が下がるほどダウンフォースが大きくなっていったのにあるところでストンと落ちてしまうのです。
エアロマップにすると図のようにだんだん赤くなっていったのに急に青に戻っています、3Dで描くと崖のようになります、ここがフロントスポイラーに空気が流れる限界ということです。

みんなこれがエアロバウンシングの原因だと言います、スポイラーが下がって空気が流れなくなってダウンフォースがなくなり車高が上がりまた空気が流れて車高が下がると。
まあこれもバウンシングの大事な理由の一つですがこのエアロマップを使ってライドハイトのシミュレーションをしてもバンスしません。
そもそも崖のふちにきてダウンフォースが下がり始めると車高がすぐ上がり始めるので崖の下のダウンフォースが抜けちゃう状態に入り込みません、崖のふちにとどまる感じです。

そりゃシミュレーションは路面からの入力がない鏡のような所を走っているからだろうということで路面入力を入れてみます、バンプを1つ入力しました、だいたいエアロバウンシングっていつも同じ場所から始まるのでそこに小さいバンプがあるからだろうと思われるからです。
すると確かにバンプ乗り越しでスポイラー高さが限界高さより下がって一瞬バウンスしますが続きません。

これまでに見たエアロバウンシングの説明はここまででその通りにシミュレーションしてもバウンシングは起きません、星飛馬の消える魔球のようにもう一つ理由があるのです。


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