第37回

37. < エアロマップ & ライドハイトシミュレーション (1) >

4輪のツーリングカーでもフォーミュラでも上位カテゴリーでは空力が最も重要なことは間違いないでしょう。
今回は空力の話ですがウイングの枚数とかボディ形状の話ではありません、ダウンフォースと車高の話です。

今どきのレーシングカーはダウンフォースの多くを床面で得ています、特にフロントのダウンフォースはそうです。DTM, GTそれにWECなどの車はフロントの床下にいかに空気を入れて、またそれを抜くかに努力しています。
そうすると勢い車高によって床下の空気の流れそして圧力が変わってしまい、ダウンフォースも大きく影響を受けます。
ダウンフォースをうまく使うには車高をきちんとコントロールしないといけません。

車高とダウンフォースを表すデータにエアロマップというものがあります、まあ一般には出回りませんからあまり見たことがないかもしれません。
風洞あるいはエアロテストと言われる直線走行で測らないといけないし車高を細かく変えて何回も測らないといけないのでとてもお金のかかる計測です、エアロマップの計測をしてるのなんてF1と車メーカーのワークスの戦いのあるカテゴリーぐらいでしょう。
ワンメイクカテゴリーでもスーパーフォーミュラになればシャシメーカーから提供されます、でもチーム外にはあまり出回りません。
GTとかでもメーカーは持っていてもチームには出さないんじゃないでしょうか。
かようにエアロマップには秘密の香りがプンプンです、「俺はチームの最新のエアロマップ持ってるけど教えてあげないかんね」って感じです。
まあどれだけダウンフォースが出てるか丸わかりですから秘密にしたい気持ちもわかります、でもそれ以上に「俺にはよく分かんないんだけど、秘密だから大事なデータなんじゃね」な人達もたくさんいる気がします。

説明用にエアロマップを出したいんですが手持ちのエアロマップそのままを数字入りで出したらやっぱり怒られそうな気がするのでちょっと昔のツーリングカーのマップを数字を消して特性も単純なパターに変えて作ってみました、それが図にあるものです、エアロマップってこんな感じです。
“フロントダンフォース”、“リヤダンフォース”、“トータル”、“バランス” のグラフがあります、それぞれ縦軸にフロントの車高、横軸がリヤの車高です、それぞれの車高位置での数値を等高線で結んで色分けをしています、赤い方がダウンフォースが高くなります。
実際の風洞やエアロテストのエアロマップは車高とダウンフォース係数の数字だらけのただの表です、それだけだと分かりにくいので等高線と色で分かりやすくしています。

エアロマップは基本は縞模様です、縞が縦縞だったり横縞だったりしますが基本は縞模様です、まあ図のサンプルのようにきれいな縞にはならずもっと波打った縞になります。 フロントのプロットを見てみましょう、横縞で縞が細かいです。
横縞っていう事はフロントの車高の支配力が大きくてリヤの影響が少ないという事です、リヤの車高が変化してもダウンフォースの変化が小さいので横の縞になります、まあフロントですから当然ですね、でも多少斜め縞ですからリヤの影響がないわけではありません。
さらに縞が細かいという事は車高の変化によりダウンフォースが大きく変化することを表しています、低けりゃ低い程ダウンフォースは高いですね。
対してリヤを見てみましょう、今度は縦縞で縞が荒いです。
フロントと逆でリヤはリヤ車高が支配的です、リヤですからね、そして縞が粗いっていう事は車高が変化してもダウンフォースの変化がフロントと比べると全然少ないということが分かります。

これらから分かるのはリヤにはウイングがありリヤウイングによるダウンフォースは車高にあまり影響されないので縞が粗くなり、フロントはほぼ床によるダウンフォースなので車高により床下の空気の流れが変わるとダウンフォースも大きく変化するという事です。
では車全体としてどうなのよ、って言うところをトータルとバランスのプロットで見ていきましょう。

トータルを見てください、赤い方が高いダウンフォースです、基本は横縞ですが細かく言うとフロントが低くて、リヤが高い程濃い赤です。
フロントを低く、リヤを高くという事は前のめりの姿勢ですね最大ダウンフォースを求めると前のめりの姿勢になります。
もちろんどんな車もそうだという事は全然ありません、ウイングカーと言われた車、一世代前のスーパーフォーミュラのスイフト製もその部類、は前後とも低い方がダウンフォースは高くなります、でも今どきのF1、スポーツカーなどはきっと同じでしょう。
前のめりの姿勢をrake(レイク)といいます、「最近のF1ってレイクがすごくついてるのがトレンドだよね」とか知ってる風に使いましょう。

次はバランスです、バランスというのはフロントとリヤのダウンフォースのバランスです、フロントが全体の何パーセントかっていうことです。
フロントのダウンフォースが一番の高い「フロント:低い+リヤ:高い」車高ではバランスが一番前寄りです、ここが重要です、ダウンフォースは最大でもバランスが前過ぎかもしれません、タイヤや重量配分によりちょうどいいバランスは変化しますから最大ダウンフォースの車高でバランスもちょうどいいとは限りません。
ダウンフォースだけ見ててはいけないという事です、このバランスをエアロバランスといいます「重量配分とエアロバランスが合っていないので低速で高速でステアバランスが変わってしまう」なんて使い方をします。

しかしですよ、車高はいつも同じじゃありません、いつも一定の車高で走れるわけではありません。
ダウンフォースは車速でも変化しますよね、車速が上がるとダウンフォースが増えて車高も下がっていきます。 速度が上がる>ダウンフォースが増える>車高が下がる>ダウンフォースが変化する>車高が変化する>ダウンフォースが変化する・・・
というように計算が面倒です、でも低速コーナーで、高速コーナーで、車高がどこで、ダンフォースがいくつで、バランスが何パーセントって言うのは空力重視の車ではとても大事なことです、それがエロマップを使いこなすっていう事です。
というわけで車高シミュレーションを次回で。



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