第35回

35. < ブレーキ反力支持とアンチリフト >

フロントフォークのばね特性全理解までもうちょっとです、今回はリバウンドスプリング、2輪的にはトップアウトスプリングでしょうか。

リバウンドスプリングはなぜか難しいです、引っ張りながらばねを押していくっていうのが素直な感覚に反してますよね、更に全域ではなく伸び切り付近だけで働くっていうのも場合に分けて考えなきゃいけないので混乱します。
もう一つ訳が分からなくさせるのが全長がリバウンドスプリングのつぶれ具合で変わってきてしまうので、どこがストローク位置の基準だかわからなくなってしまいます。

でも変位、力の向きと正負の符号をきちんとして座標を固定しておけば大丈夫です、ロッドを伸ばして行ってリバウンドスプリングに当たったところ、リバウンドスプリングのたわみゼロのところをゼロとします、ロッドを押し込む方向を“+”、引っ張る方向を“-”とします、これはどの状態でも変えません。

図はフロントフォークをひっくり返してアウターチューブを外した物と思ってください、この方が説明しやすいので。

(1) リバウンドスプリングしかない場合を考えてみましょう。押し方向には何もないので引っ張り方向だけ考えます。
リバウンドスプリングをつぶしていくにはロッドを引っ張らないといけません、つまり変位の方向は“-”です、さらに引っ張るわけですから力も“-”です。
引っ張るほどに強く引っ張らなくちゃいけませんから変位がマイナス方向へ進むほど力もマイナスが大きくなっていきます、単純でしょ。

それをグラフにしたのが図の(1)です、ゼロ点(ちゃんと言うと原点)から左斜め下へ伸びる線になりますね。
その傾きがリバウンドスプリングのばね定数になります、右上がりの線ですからばね定数はプラスで”+K2”です。
リバウンドスプリングが密着するともうそれ以上ストロークできないので垂直の線になります。

(2) メインスプリングを追加しましょう、スプリングはちょうどすっぽり収まる長さでプレロードは掛かりません、いきなりプレロード掛けると難しくなっちゃうので。
両方のスプリングは伸び切った状態なのでロッドを引っ張ったらメインスプリングは離れちゃうし、押したら今度はリバウンドスプリングが離れちゃうので“+”方向と“-”方向のストロークで片方づつのばねが働くだけです。

ストロークのゼロ点は同じ位置ですからストロークのマイナス方向は(1)と変わらずリバウンドスプリングの特性、そしてプラス方向がメインスプリングの特性となります。
プラス方向はよく見るプレロードのないスプリング特性ですね、傾きがばね定数でやっぱり右上がりの線で“+K1”です。
ストロークのマイナス方向とプラス方向で独立したばねの特性図ですから問題ないですね。

(3)さあいよいよメインスプリングにプレロードを掛けていきます。フォークの頭についてるアジャスターで掛けていくイメージです。
アジャスターでD ㎜プレロードを掛けていきます、するとロッドが伸びてきます、いやですねー、メインスプリングに掛けたプレロード荷重がリバウンドスプリングも押してしまうからです。
ストロークの基準のゼロ点は変えてませんからロッドがマイナス方向へd mm伸びたという事になります。

スプリングにプレロードを掛けるという事は(2)のグラフで言うと青い線を左へ横にずらしていく事と同じです、Dmmプレロードを掛けるという事はDmm左へスライドさせます。
(3)の図を見てください、青線を左へDmmずらしました、するとメインスプリングの青線とリバウンドスプリングのオレンジ線がダブっている部分が出来てしまいます、ここが頭痛の種です。

でも簡単です、各変位でメインスプリングとリバウンドスプリングの両方の力を合計すればいいのです、「ロッドを押し返してくる力と引っ張り込もうとする力が。。。」とか考えると訳分からなくなります。
各位置でのロッドに対する力の符号が合っていれば2つの力を合計すればいいだけです、ここではメインスプリングはプラス、リバウンドスプリングはマイナスの力です、これをリバウンドスプリングの力を「プラスの力が反対方向から掛かる」と思ったらもう終わりです。

青とオレンジの力を合計したのが赤の線です、傾きが元のメインスプリングの青線より急です、メインとリバウンドスプリングの両方が働く時のばね定数は両方のばね定数の和となります、そうですメインスプリングだけよりリバウンドスプリング分固くなるのです。

もう一つ大事なものはロッドの伸びです、ロッドはdmm伸びたところで止まっています、これは図(3)で黄色の点になります、この点ではメインスプリングとリバウンドスプリングの力が釣り合っていてどちらにも動きません。
黄色の点ではロッドは宙ぶらりんな位置で止まっていてリバウンドスプリングはまだ縮みきってはいません、なのでロッドを引っ張ればまだ伸びてきます。
これを全長が最大だと勘違いすると(0G-1G)のリバウンドストロークがおかしなことになります、引っ張って伸ばしきって全長を測らないといけません。

これがリバウンドスプリングです。
リバウンドスプリングの効用ですが例えば右上の図のような状況を考えてみてください、バイクは加速していてフロントがリフトしてきます、この時の荷重移動がΔWだとします。
グラフでΔWの所に線を引きました、ばね特性がこの線と交差する所までフロントがリフトします。
リバウンドスプリングがあった方がリフトが少ないのが分かります、リバウンドスプリングには姿勢変化を少なくする効果があります、その代りばね定数が固くなるので路面追従性は悪くなります。
この姿勢変化抑制と接地性のちょうど良い頃合いをリバウンドスプリングが効き始めるストローク位置やばね定数を調整するのがサスペンション屋さんの腕の見せ所でしょうね。



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