第34回

34. < スプリングを切ってもいいのか? >

あるホームページに2輪のフロントフォークのスプリングを切って2段ばねのばね定数を変更する手順を詳しく説明していました。
確かに市販車は2人乗りや過積載も考慮しなくてはいけないので極端な2段ばねになっていることがあります、サンプルで私が調べたバイクのスプリングはばね定数が柔らかい方と固い方で倍も違っていました。
これでは1人乗りで高負荷の時に固い方に入ってしまいふん詰まり感が出てしまいます、乗り心地がいいと思っていたら大きくストロークするような場面でぐっと固くなる感じです。

そこで2段ばねの柔らかい方のコイルをある程度切り除いて柔らかい方の1段目のばね定数を上げてあげようという記事でした。
何巻きカットしたら希望のばね定数になるかの計算は正しかったですし、その結果ばね定数の変化も小さくなりいい感じの改造に見えました。

しかしちょっと待ってくださいよ、ばねを切っちゃって応力は大丈夫なの?という疑問を持ちました。
ばねを切っちゃうと当然巻き数が少なくなりますから同じストロークで使うには1巻きあたりのストロークが大きくなります、つまりはたくさん捩じられるので辛くなってくるのです。

第31回で作ったフロントフォークばね計算シートをばねカット対応にしてみました。
記事にあったように密に巻かれた部分の大部分を切らないといい感じのばね定数にはならないようです。
そしてその時の応力はかなり高くなってしまいました。

まあメーカーも安く作りたいし、軽量化もしたいわけです、応力に余裕を持たせておくということは線径が太くなって重くなるし高級線材を使えばコストが高くなるしそんなことはしないものです、何ミリもボアアップしても平気なエンジンを作ったりするのと違ってスプリングはそんな作り方になってないのが普通です。

応力が高いと何が問題なのでしょう?
応力が高いと長く使うとへたります、極端に高いとすぐへたります。
へたってもばね定数は変わりません、へたるというのは短くなるという事です、つまりは車高が下がるという事です。
市販車の場合100万サイクルでへたり何%というように耐久要件が決まっていると思います、耐久要件といえば車の寿命を想定しているのでしょうから相当安全な設定になっていると思います。
多少ばねを短く切ってもすぐ見て分かるほどへたりはしないと思います、というか当分大丈夫だと思います。
要は分かっててやるかどうかだと思います、自己責任ですね、たぶん記事を書いた人は応力までは考えていないようです、いろんな拾ってきた情報を鵜呑みにするとおかしなことになる時があります。
それよりも切ってみて試乗してよかったらそのばねをばね屋さんに持って行けば新しく計算して特性は同じで応力を下げたばねを作ってくれます、その方がいいと思います。
そしてワンオフのばねはそれほど高くはないです、アフターマーケット用のばねと同じかちょっと高いくらいの値段で作れます、お試しあれ。

というわけでカット対応のばね計算シートを作ったのですが出番はもうなさそうです、でもまだ改良していきます。



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