第27回

27. < スーパーバイクは加速の限界に達した? 物理式 >

今回は全く畑違いの事柄ですが個人的にとても興味があったのでちょっと掘り下げてみました。

先日モータサイクルダイアリーというwebに面白い記事があったんです。
“Have We Reached the Practical Limits of Sport Bike Acceleration?”(u.r.l.は下記)っていう記事なんですが、“もうドラッグレーサーじゃなくて普通のかっこしたスポーツバイクはどれも120mphまでならもう加速の限界に達していて加速のタイムも同じようだ”
http://www.motorcycledaily.com/2015/05/youtube-video-raises-question-have-we-reached-the-practical-limits-of-sport-bike-acceleration/

私も何となくそんな風に思えました、2輪のホイールベースに200馬力もあったら低いギヤではウィーリーするばっかりでスロットルを全開にできないんじゃないかと。
というわけできちんと検証してみましょう。

とはいえ0-400加速、それも2輪の計算は畑違いなのでちょっと手こずりましたがまあ今回の目的には使えそうなものができたので3回に分けて解説していきます。

まずは物理式からです、まあ見ただけで嫌気がさしてる人がいっぱいいると思いますので必要な人だけ詳しく見てもらうとして何を計算しないといけないかだけ書いておきます。

式(1)
これはあんまり関係ないです、単にパワーも計算しておこうってだけです。
トルクに回転数を掛けたのがパワーですね、力に速度を掛けたのが仕事率(パワー)って高校で習いました、その回転版です。

式(2)
エンジンのトルクがタイヤに伝わってどれだけの力で路面を蹴るかの式です、ギヤ比を勘定に入れてタイヤ径で割ればよしです。

式(3)
空気抵抗の式です、ドラッグですね、バイクを押し戻す方向に働きます、これを入れないとどこまでも加速して行ってしまいます、ダウンフォースも同じ式なのでこの式一つ覚えておけばあなたもエアロダイナミストになれちゃう魔法の式です。
今回転がり抵抗は無視しました。

式(4)
そして式()と()を合わせると実際にバイクを押し出して加速させる力が求まります、空気抵抗は逆向きの力なのでマイナスです。その力を質量で割れば加速度です。

ここからは加速のための式というより加速の限界を求めるための式です。
式(5)
加速している時の慣性力による荷重移動です、この講座の第1回で荷重移動の減速版をやりましたが今回は加速ですので荷重移動の方向が減速とは逆になります、加速の時は前輪の荷重が軽くなります。

式(6)
後輪トルクリアクションによる前輪の荷重変化です、トルクリアクションとは後輪を回そうとしたら車体が回されちゃった、ヘリコプターがプロペラを回そうとしたら機体が回っちゃった、みたいなものです。
これの激しいのがウィリーですね。

式(7)
()と()をたしたのが前輪のトータル荷重変化です。

式(8)
前輪の静的荷重から荷重移動分を引いた物がその時の前輪荷重です、これがマイナスだとウィリー状態です、というより離地するのでマイナスはなくて”0”になったらウィリーですね。
これが今回の加速限界説の大事なファクターです。

さてこれでネタは揃いました、これらの式を使って0-400m加速のシミュレーションを作っていきましょう。


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