第26回

26. < ばねの計算方法 >

ばねに関してはもうたくさんの記事が雑誌やらインターネットに載っていてもう宗教かっていうくらいの神がかり的な記事もあったりしますが今回ちょっと違う切り口で解説したいと思います。
自分でばねを設計してみれば何が大事か分かるんじゃないかと。

さあ自分のばねは自分で設計しましょう、吊るしのばねを買ってきて「やっぱ○○のばねはタイムでるよねー」なんて言ってちゃプロっぽくありません。

(1) まずはばね定数を決めます、ばね上共振周波数から求めてもいいし、今ついてる物の20%増しとかでもいいです。

(2) 次にそのばねで使う最大荷重を求めておきます、この見積もりはとても大事でこれを大きく取りすぎるとばねが重く長くなり、小さすぎると応力が高すぎてへたったりするので慎重に見積もります、一つの方法としては図のXYグラフにあるように1Gの時のばね荷重にばね定数xバンプストロークをたします、1Gで車重が掛かってるわけですからそこからフルストロークまで押したら何キロ?みたいなもんです(モーションレシオ=1.0として)。
フルストローク時の荷重ですからそれ以上にならないはずです、だからバンプとリバウンドのストローク配分は大事なんです、だいたい車高はダンパー全長で変えるもんでプレロードで変えるもんではないと思います。

(3) 式3で欲しいばね定数になるように線径(d)、コイル径(D)、巻き数(n) をいろいろ調節します、初めてやると訳わかんなくなりますが地道にやりましょう。
コイル径(D)は大体決まってると思います、ダンパーに乗っかるようにしなくちゃいけませんから。
線径が太いと固くなる、巻き数が少ないと固くなると思います、昔の「俺のセドリックは2巻カットだぜ」みたいなばねは車高も低いけどばね定数も固くなっていたのが分かったりします。
「太い線径で多い巻き数」でも「細い線径で少ない巻き数」でも同じばね定数にすることができます、でも次で違いが出てきます。
(4) 式4で最大応力が材料の許容値以下に収まってるかチェックします。(3)で良くてもここで全然ダメなことはよくあります、「細い線径で少ない巻き数」は応力が高くなります、高すぎたら(3)に戻ってやり直しです。
実際には応力だけでなくばねがフルバンプで密着しないか、伸び切りでダンパーに収まるかも関係してくるのであちらを立てればこちらが立たずで何回も何回も計算しなおすことなります。

この時いちばん楽なのは「良い材料を持ってくる」という事です、良い材料とは許容ねじり応力が高い材料です、ばね屋さんはこれが良くなるように日夜研究しているわけです、別に「シリコンをちょっと入れると乗り心地が良くなる」なんて考えてません、強くて粘りのあるばね材料を探してるわけです。
良い材料を使えば「細い線径で少ない巻き数」で作れます、そうすると軽いばねが作れます、軽いばねはとっても大事です、ばねは重い部品ですからね。
あと式4でわかるのは応力は最大荷重次第でもあることです。
(2)で最大荷重に余裕を見込みすぎて応力が高くなっちゃって「線径が太くて多い巻き数」(重い)ばねにしてはいけません。
これが「吊るしのスプリングを買ってくるな」につながります、吊るしのばねはだいたいばね定数○○N/mm、ストローク△△mmみたいに売られています。
欲しいばねがそんなにストロークがいらなかったら使わないストローク分の応力まで見込んだばねを買うことになります、つまりは重いばねを買うことになるのです。

レースでばねを作ろうとなったら「どれだけいい材料を持ってるばね屋さんに頼むか」、「どれだけ最大荷重の見積もりの安全分を減らすか」「どれだけ許容応力のギリギリを狙うか」をして軽いばねを設計するのです、どれだけ安全余裕を減らすかです。
「コーナーで踏ん張りの効くばね」とか考えて設計するわけではないのです、式のどこにも「乗り心地係数」とか「ハンドリング指数」とかはないのです。

ばねは最悪1レース持てばいい訳です、レース後へたって車高が下がっても車検に落ちないくらいが最高です、吊るしのばねは誰がどう使うか分からないので密着までを100万回ストローク保証して余裕をたっぷり盛り込んでいるので安心ですがその代り重いのです。

今回説明したばねの設計方法は基礎なので密着余裕、ピッチ、縦横比、その他いろいろチェックしなくちゃいけない項目は省いています、でもばね設計の大事なところは説明したつもりです。

ちなみにばね定数の式3を見てください、どこにもばねの長さは入ってません、という事はばねがへたって短くなってもばね定数は変わらないという事です、そんなことも分かります、「俺の車、サスがへたってふわふわすんぜ」とか言わないようにしましょう。


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