第25回

25. < ストラットサスペンションのアンチダイブ >

瞬間中心は何に使うってそりゃアンチダイブ、リフトを求めるためですよ、アンチダイブについては第2回を参照してください。
ストラットのアンチダイブ角を描いてみましょう、普通は上の絵みたいになるでしょうね、瞬間中心からタイヤ接地点へ引いた線の角度がアンチダイブ角です。

ストラットでアンチダイブ角を大きくしようと思ったら2つ方法があります、一つはストラットを寝かしていく方法、もう一つはロワアーム側の軸線の後ろ上がり具合を強くする方法です、どちらも瞬間中心がタイヤに近づいていくので結果としてアンチダイブの線が立ち上がっていきます。
乗用車を見ると大概2番目の方法のロワアームでアンチダイブを設定していますね、ストラット軸はキングピン軸と重なっていてロワアームの後ろ側の取り付け点が上がっています。
前側の取り付け点を下げてもいいんですけどそうすると縁石とかにぶつけやすくなっちゃいます、昔のテンションロッド式のロワアームはアンチダイブ角を設定するのにテンションロッドの前側の取り付け点を下げないといけないので駐車場の輪留めにぶつけてボコボコになっちゃいました。
なぜストラットを傾けないかというと傾けていくとストラットに横力が掛かるのでフリクションが大きくなってしまうからです、乗用車で乗り心地は大事ですからね。

じゃあなんでWRCはあんなすごい角度でストラットが付いているんでしょう?
まず初めにもっとアンチダイブが欲しいのは確かでターマック仕様なんてツーリングカーレース車みたいなもんですからね、アンチダイブを大きくするのにロワアームとストラットの取り付け位置を変えたいんだけどレギュレーション上 出来ないみたいなのでしょうがないからストラットの角度でやっているのだと思います。

下の図を見てください、ストラットを傾けることでアンチダイブ角を大きくする方法を示しています。
ロワアームの軸線は変わらないのでアンチダイブ角を大きくするには瞬間中心を車輪に近い方へ動かす必要があります、そうすることでアンチダイブの線が立ち上がって行きます。
でも元々ロワアームの線が低い所にあるのでストラットをかなり傾けてもアンチダイブの線は大して立ち上がりません。
図はありませんが逆にロワアームの軸を持ち上げて交点(瞬間中心)を車輪に近づけていくとストラットの線が高い所にあるのでアンチダイブの線の角度は大きく変わります。

という事でアンチダイブを大きくするためにストラットを傾けるのは効果は少ないしフリクションは増えるしあんまり効率的とは言えないことが分かりました、でもそれしか方法がないんだからしょうがないじゃんてとこだと思います。
それともほんとにストラットが長くなりすぎちゃって収まんなくなったから傾けて収めただけなのか?
フォードのリヤストラットはフロントみたいに後傾してるんですよね、つまりアンチリフトがマイナスなんですよ。
通常ありえない設定ですからもう収まればなんでもいいや、なのかもしれません。



ちなみに2輪のフロントフォークですがこれはストラット式からロワアームも取っちゃったものですからフォークの作動軸しかありません。
瞬間中心はフォークに直角で無限遠にあります。
そしてアンチダイブの線は接地点からフォークに直角に引いた線になります、地面に潜っちゃってますね、つまりアンチダイブ角が“-”です。 つまりは制動力がフォークを縮める方向に働くという事です。
重心も高く、ホールベースも短い2輪のアンチダイブがマイナスでいいっていうのはどういうわけなんでしょう?
昔流行った油圧式アンチダイブはいなくなりましたし、BMWのテレレバーはアンチダイブが“+”ですが超マイナーです。
でもサイドカーになるととたんにアールーズフォークみたいなアンチダイブのあるサスペンションに変わるのはどういうわけなんでしょう?
自分の感覚としても2輪でブレーキでフロントが突っ張ったらコーナーに入って行けないような気がします、なんででしょう? 2輪は面白いですね。


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