第24回

24. < 瞬間中心 >

雑誌にWRCのヤリスの記事が載っていてそこにストラットの傾きについて書いてありました。
その記事ではショックアブソーバーが長くなるのでそれを収めるために傾けて配置しているという内容でした。

でも長いものを収めるのならオフセットしてドライブシャフトを避けて配置してもいい訳で傾きにはそれなりの理由があると思います。
というわけで今回は瞬間中心、次回にストラットのアンチダイブです。

アライメント変化の中でアンチダイブ、リフトを割り出すのに”IC”(インスタントセンター)というのを使います、これは車輪が動いていく軌跡の瞬間, 瞬間の回転中心を表します、なので瞬間中心といいますが正面視と違って今回の側面視の場合ICは動かないので回転中心でいいと思います。
どんな動きにも瞬間中心は存在します、「まっすぐ動いたら?」って思うでしょうがまっすぐ動いてる時は無限遠に回転の中心があるとします、「無限大の半径の円の一部は直線」っていう事ですよ、「円の一部は円弧だろう」って言ったって直線として扱っていいんだという事ですよ、水面は文字通り水平でまっすぐじゃないですか、でも宇宙からみた地球の海は丸い、なんて例えでいいかな。

ダブルウィッシュボーンの車輪の軌跡の瞬間中心(IC)は上下アームの車体取り付け点を延長したその交点になります。
車輪のついてるアップライトを支える2点のうち上側の点(A)はアッパーアームはアームの取り付け点を結んだ線を軸に回転しますよね、A点の軌跡の瞬間中心は軸の無限に遠い所にあることになります、どっち側の遠くかって?どっちでもいいです。
アップライトの下側の点(B)は同様にロワアームの取り付け点を結んだ軸の無限に遠いとこを中心に回転します。
でもA点とB点はアップライトで結ばれています、自分勝手に動くわけにはいきません、相手がいるからには妥協しなくちゃいけません。
というわけで両方を立てて2本の軸の交わった点を中心に回転することとしましょう、めでたしめでたし、となったのでした。

という事は車軸から瞬間中心(IC)に引いた線が車輪の回転するアームになる訳です、これをサイドビュースイングアーム(SVSA)と言います。 2輪のリヤサスペンションは瞬間中心がスイングアームピボットでスイングアームがそのまま実在するので分かりやすいですね、ダブルウィッシュボーンの場合仮想の点、仮想のアームになるので分かりにくいですが同じことです。

さてストラットの瞬間中心はどうでしょう?
アッパーアームがないので軸線が1本しかありませんから交点もありません。 じゃあ無限遠になっちゃうかっていうとそうではありません。
ストラットの伸び縮みする軸はもちろん直線ですよね、この直線は無限大の半径の円の一部な訳ですよ、てことは中心点は円周から直角方向に無限に遠い所にあるってことですね。
これでもう一本軸線が引けます、ストラットの取り付け点からストラットに直角に伸ばした線です。
そしてロワアームの軸線と交わった点が瞬間中心となります。

ここで注意しないといけないことがあります、直角に引く線はストラットの軸に直角です、キングピンに直角ではありません。
間違っちゃってる人がたくさんいます、サスペンションにくわしい、でも雑誌で勉強したひとなんかは間違っちゃってます、気をつけましょう。


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