エアスプリングのばね特性は自由自在に設定できる?
よく聞く事に「エアサスはばね定数の設定とばね特性の立ち上がり具合が自由に設定できる」って言うのがあります。
確かにばね定数は圧力と空気容積と受圧面積の関数ですからそれら3つの値を変えてばね定数を変更することができます、式は下記で表されます(ダンパー講座のno.64参照)。
k= 1.4 x A^2 x P / V
ばね特性の立ち上がり具合はどうでしょう?
始め柔らかくて後からぐっと立ち上げたい、もっとリニアにしたい、そんな時どうすればどうすればいいんでしょう?
今回は3点のパラメータを変化させてばね定数と立ち上がり具合がどう変わるか見ていきます。
まずはばね定数ですが上の式で注意しないといけないのは”A(面積)”と”P(圧力)”は別々に設定できないことです。面積が2倍になれば圧力は自動的に半分になるので圧力はそのままでなんてわけにはいきません。
せっかくですから今の例でばね定数はどうなるか見てみましょう、図のⅡのイメージです。
上の式のAに2A、Pに1/2P、Vはそのままとすると
K= 1.4x (2A)^2x (1/2P)/ V になります、Aは2乗でPは1乗なので2が残ってばね定数は元の2倍になりました。
つまり面積2倍でばね定数も2倍、ということは面積とばね定数は比例関係という事ですね。
つぎに容積を変えてみましょう、容積を2倍にします、Ⅲのイメージです。
式にVの代わりに2Vを代入します、AとPはそのままです、これは簡単ですねばね定数は半分です。
つまり空気容積2倍でばね定数半分です、ということは空気容量とばね定数は反比例という事ですね。
ついでだから面積と容積両方とも倍に変えてみましょう(Ⅳです)、倍と半分で打ち消してばね定数の変化なしです。
ちょっと付け加えるとここでの圧力は絶対圧です、真空で0Pa、大気圧で100kPaです。 圧力の高い時は大気圧分を無視してもいいですが低い時、例えば2輪のフロントフォークのエアばね特性を計算する時はゲージ圧に100kPa加えて計算しないといけません。
ここまでは「ふんふん、そうだね」ってとこですね、問題はそのあとストロークしていってどう立ち上がりが変化するかです。
ここは計算が面倒ですがダンパー講座のno.65で使ったエアばね計算エクセルを使います、断熱変化は1.4乗なので手計算が面倒ですから地味仕事の得意なエクセル君にやらせておきましょう。
手順を振り返ると、ストロークする、容積が変化、PV1.4=const
を使って圧力を計算、面積を掛けて力に、これでストロークと力の計算ができます。
結果をグラフにして図に載せました、Ⅱは全域固く、Ⅲは全域柔らかく、Ⅳはベースとほぼ同じ、でした (Ⅳが全く同じにならないのは絶対圧で比べると倍にならないからです)。
つまりは最初固けりゃそのままぐんぐん固く、最初柔らかけりゃそのまま柔らかく、最初同じならずっと同じってことです、線の角度が大きかったり小さかったりするだけです。
「この車のエアサスペンションは最初柔らかくて後でぐっと踏ん張るようにエアボリュームと圧力を設定してあるので乗り心地が良好であるのにコーナーでは踏ん張りが効いている」なんて雑誌で見るようなうまい話はありません。
グラフを見てもゆるーく反りあがってる位でこれを変えることはできません。
まー実は方法がない訳ではありません、それはエア容量とか圧力とかではなくストロークに応じて受圧面積(A)が変化していく構造です、図の左下の写真を見てください、(1)コンチネンタルと(2)アウディA8のエアばねです。エアばねを押していくピストンの形状がテーパーと逆テーパーになっています。この形状次第で立ち上がり具合を変化させることができます。
例の場合(1)はプログレッシブ、(2)はリニア特性になります。
これをさらに進めてテーパー形状の所を膨らませたり縮めたりしてばね定数を可変にしているエアサスもあります、残念ながら絵が見つかりませんでした。
更に付け加えておくと以上の話はエアばねだけで車体を支えるいわゆる“フルエアサス”の話です。
2輪のフロントフォークのように金属ばねとエアスプリングを組み合わせて使う場合ぐっと自由度が増します。
(1)柔らかい金属ばねと立ち上がりのきついⅡのようなエアばねの組み合わせ、(2)固い金属ばねとⅢのようなリニアなエアばねの組み合わせ、を比べれば(1)の方が始め柔らかくて奥で固くなるグラフの赤の点線のようなエアばねだけでは不可能な特性も可能になります。
http://www.konstruktionspraxis.vogel.de/themen/konstruktionsbauteile/articles/249827/
http://www.conti-online.com/www/automotive_de_en/themes/two_wheelers/elektonische_luftfedersysteme_en.html