第15回

15. < ブレーキ反力支持とアンチリフト >

前回は駆動の話でしたが制動でも全く同じことが起きます、ブレーキの反力をどう支持するかという事です。

もう大分昔のことですがバイクのリヤブレーキを改造してトルクロッドをフレームに繋ぐのが流行ったことがありました、フローティングキャリパーって言ってたかな、そうするとブレーキング中にもサスペンションが自由に動けるっていうんです。
その頃は「すげー」とか思ってましたし、今でもそう思ってる人はたくさんいると思います。

ブレーキキャリパーがスイングアームに直付けかトルクロッドでフレームに繋いであるかの違いは前回の‘駆動反力をスイングアームで受けるかシャシで受けるか’と全く同じ違いになります。
前回の絵をちょいちょいと変更してブレーキの絵にして力の向きを逆にしました、説明は前回と同じなので省略です。

キャリパーの取り付け方の違いつまりはブレーキ反力の支持のし方の違いによりブレーキのアンチリフト角が違ってきます。
ブレーキを掛けている時のリヤの浮き上がりに違いが出てくるといってもいいでしょう。
キャリパー直付けの方がアンチリフト角が大きいのでリヤの伸びは小さくなります。

百万回でも繰り返させてもらいますが、アンチリフトで車両荷重移動が変わる訳ではありません、変わるのは姿勢です。アンチリフトが大きかろうがゼロだろうがリヤが浮く時は浮くので変わりはありません、荷重移動が軸重を超えれば浮く、それだけのことです。
例えばアンチリフトが100%だとしたらブレーキングでリヤは伸びあがってきません、荷重移動とアンチリフト力が釣り合うからです。 それはサスペンションに掛かる力が差し引きゼロになってるという事であって車両としては荷重移動しているのです。
ですからアンチリフト100%でバイクでハードブレーキングをするとリヤのサスペンションは伸びないままタイヤが離地します。
いや違うか、離地した瞬間にリヤの制動力がゼロになるのでアンチリフト力もなくなりサスペンションは伸びていくのか、そして結局サスペンションは伸び切るのかも、いやいやそもそも離地に近づいた時点で接地荷重が少ないのでロックを防ぐにはろくにリヤブレーキを掛けられなくなりますからアンチリフト力も少なくなりサスペンションは伸び始めるのか。

バイクレースの場合リヤは離地するか、していなくても離地ぎりぎりだと思うのでリヤのブレーキなんてちょっと掛けたらすぐロックしてしまうわけですね、だからレース用バイクのリヤブレーキはすごく小さいしほとんど使わない人がいるのも納得ですね


じゃあ話を戻してアンチリフトの小さいフローティングキャリパーはサスペンションが自由に動くのか?
アンチリフト角が違うとサスペンションを縮めようとする力が違ってきます、その力が大きいからってサスペンションが固くなるわけじゃありません、制動力に比例した力がサスペンションを縮めようとするだけです。
例えば一定の制動力で減速していたらそれに応じたアンチリフト力の分だけリヤの伸びあがりが減ります、そこで路面の凸を乗り越えたらアンチリフトの大小にかかわらずサスペンションは同じように動きます。

ちょっと注意しときますが、ここまで書いてきたのはキャリパーの支持に違いによるアンチリフトの違いの話です、スイングアームの角度を変えてもアンチリストはもちろん変化するわけですがその場合は乗り心地とかサスペンションの動きに違いが出てきます、簡単に言うとアンチダイブ、アンチリフトの大きい車両は乗り心地特にハーシュがよろしくない。

最近はフローティングキャリパー少なくなっちゃいました、でもかっこよろしいので好きです。

もう一つ付け加えると4輪のインボードブレーキ、今はほとんどないですが、はブレーキ反力をシャシで受けるのでフローティングキャリパーと同じアンチリフトになります


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