第14回

14. < サス形式とアンチスクォート >

以前アンチダイブ、アンチスクォートについて書きましたがちょっと補足しておかないとアンチxxについて十分ではないと思いまして追加です。

ここではサス形式が違って駆動力がどうアンチ力に影響するか説明します。

サスペンション形式には2種類あります、駆動反力がサスペンションに掛かる形式とシャシが駆動反力を受ける形式です。
駆動反力というのはドライブシャフトがタイヤを回そうとする時デフを反対に回そうとする力っていえばいいでしょうか、ヘリコプターの羽を押さえたら機体が反対に回るのと一緒です、ヘリコプターは回されちゃわないように小さい羽根、テールローター、で踏ん張ってるわけです。
その駆動反力がサスペンションに掛かるのはリジッドアクスルですね、なんといってもデフがサスペンションに乗っかっちゃってますから。デフが反対に回らないようにしているのはサスペンションアームです。(でもドデオンっていう特殊なリジッドアクスルはデフがシャシ側についてますからこれは次のグループに分類されます。)
一方駆動反力がシャシに掛かるのは独立懸架です、デフはシャシにぶら下がっていてデフが回されちゃわないようにシャシが支えてます。


では上側の図を見てください、駆動反力がシャシに掛かるタイプです、駆動反力はタイヤ接地点で車を押しています、それをアクスル中心に置き換えると前後力’F’とモーメント’Md’の二つになります。
‘F’は車を前に押す力です、’Md’は駆動反力トルクです、このトルクを支えているのがデフケースでありそのデフケースを留めているシャシになります。よってサスペンションに掛かるのは前後力の’F’だけです。
以前にも説明しましたが繰り返しておきます、アンチスクォート力というのは加速の時に荷重移動で車の後ろが沈みますが、それに対抗して後ろが沈むのを減らす力のことです。
図でいうとスイングアームを反時計方向に回そうとする力、そうするとスイングアームの角度が急になって車体を持ち上げますね。
アンチスクォートモーメントは前後力’F‘に垂直分のレバー長’h’を掛けた’Fxh’です。アンチスクォート力はモーメントを水平方向のレバー長’l’で割れば良しです。
図の式にあるように’h/l’はtanθです、この’θ’をアンチスクォート角と言います。

次に下の図です、駆動反力をサスペンション(スイングアーム)が受けるタイプです。
上と同じようにアクスル中心には前後力’F’とモーメント’M’が掛かっています、でもMを支えているのはスイングアームです。
絵の右側の式を見てください、スイングアームを反時計回りに回そうとするモーメントは上と同じ’F x h’だけではありません、駆動反力の’Md = F x r’の合計です。
そのモーメントを水平方向のレバー長’l’で割ったのがアンチスクォート力でしたね、式(2)のようになります、式のβをアンチスクォート角と言います。

上と下の図のアンチスクォート角を比べるとリジットアクスルの角度はずいぶん大きいですね、そうですリジットアクスルのアンチスクォート効果は高いのです。
例えばシャフトドライブのバイクです、アンチスクォートが過大で加速時にリヤが持ち上がったりします、それでは乗りにくいのでBMWの“パラレバー”やモトグッチの“CARC”はトルクロッドをフレームに繋いでスイングアームに駆動反力がかからないようにしています。



一つ注意しておきます、駆動反力がサスペンションを通ろうが直接シャシに支持されようが結局はシャシがこれを受けます、そしてそのモーメントが大きければ前輪が浮きます、ドラッグレースカーやバイクのウィリーがそれですね。


Copyright(C) 2007-2015   富樫研究開発