第13回

13. < CPなのか? >

雑誌等によく”CP”“コーナリングパワー”って単語が出てきますけどなんか使い方がおかしい場合が多いという話です。

雑誌なんかでコーナリングの説明に「ステアリングを切るとCP(コーナリングパワー)が立ち上がって...」みたいな使われ方をしてると思うんですがCP本来の意味で使ってない場合がたくさんあるように思います。
というのも最近買った雑誌でCPが多用されてるんですけど違和感を覚える場合が多かったからです。
まずはCPとは何ぞやです。
「自動車の運動と制御」(安倍正人)15ページには“タイヤ横すべり角が小さいときの単位横すべり角当たりのコーナリングフォース、つまりコーナリングパワー”とあります。
さらに「Race Car Vehicle Dynamics」(SAE) 25ページには図のような説明があります。
つまりは“タイヤ横すべり角-コーナリングフォースのグラフの線形部分の傾き“ということになります、傾きですから横すべり角が1度増えた時にどれだけコーナリングフォースが増えるかの値です。
この数字は舵の効き方、車のキビキビ感に効いてくる部分です、ステアリングをグルグルしたり、車を振り回したりして滑り角を大きくしなくてもコーナリングフォースが出れば車はすいすい曲がります、これがCPが大きいということです。

さて買った雑誌は「モーターファン・イラストレイテッド、ミッドシップの戦闘力」というものですが58ページから61ページまでの“なぜミッドシップなのか”の章に10回“CP”が出てきますが全部“CF(コーナリングフォース”の意味で使っています。
さらに55ページでは「フロントミッドシップであれば、そこまで意図的にリヤのCPを上げなくてもバランスが確保できる。舵角の増加に対する前輪のコーナリングフォースの増加が操舵初期の動きから想像したものと一致していて、大変動きが分かりやすい。」とあります。この場合の“CP”は“最大グリップ”の意味だと思います、興味深いのは“舵角の増加に対する前輪のコーナリングフォースの増加”の部分でこれこそほぼCPと同義なのにそこにはCPを使っていません。
(一言付け加えておきますが上の指摘は「CPの使い方が違うよ」というだけのことで雑誌の趣旨、著者についての他のいかなるものも否定するものではないのは当然のことです、最近の一つ悪い所を見つけたら過去のすべてまで洗い出して人間性まで否定してみたいな風潮に乗るつもりは毛頭ありませんので。)

多くの場合CPはコーナリングフォースの意味、あるいはタイヤグリップ総量の意味で間違って使われていると思います。
タイヤの本を見ると“スリップ角-コーナリングフォース”、“荷重-コーナリングフォース” 、“荷重-コーナリングパワー”とかのグラフがいっぱい出てくるんで記憶がごちゃまぜになってコーナリングパワーもコーナリングフォースも大した違いはないと思っちゃうのかもしれません。
でもこれってCPって言った方がかっこいいからじゃないでしょうか。CPって言った途端専門的に聞こえますよね。


CPってcornering power の頭文字ですが英語ではcornering stiffness って言います(図にもそう書いてあります)。
外国行ってかっこよく決めようとして「シーピーが...」って言ってもてんで通じなくて、「だからコーナリングパワーがさー」って言っても通じなくて「あいつ全然わかってないよ」なんて失礼なこと言っちゃわないようにしましょう。


今回出てきた2冊の本はこの2冊持ってれば(読めば)車両運動性能はOKくらいの良い本なので購入をお勧めします。


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