田名部祭 一日目(八月十八日)
一日目は各町内をできるだけ細かく回ります。小川町(こがわまち)で言うと、恐山街道を上がったり、金谷(かなや)まで足をのばしたり。
小川町二丁目にある恐山街道の入り口横に、それまでの傾斜よりも緩やかでカーブも少ない新街道が出来て、山車が上るのが少しだけラクになりましたが、一丁目にある急な坂を下る時は、上り以上に気が張ります。
旗持ち
木の車

山車はタイヤじゃないんです。木の車なんですよ。
だから曲がるのが大変。
ところで山車の横に長い棒を持って、車の下にかませている人がいますね。

先頭を行くのは「旗持ち(はだもぢ)」。
風を受けて、重そうです。

てんびんの先
てんびん
この長い棒は「てご」と言います。
てごはいったい何に使われるのでしょう?
車の下に噛ませて微妙な軌道修正をしたり、「てこ」のように使って山車が曲がるのを助けたりします。
ちょっと判りにくいですが、しばらく使ってるとこんなふうに先がバサバサに割れてしまうんですよ。
ちぎれたてんびんの先
路上の車の跡
点々と落ちている白いもの。これは使っているうちにばさばさになってちぎれてしまった、てごの先です。 道路の上に付いているのは、山車の車の跡です。
ちょうど90度のカーブなのですが、山車の重さや曲がる時の勢いをよく現わしていますね。
予備のてんびん
歩道橋前の山車
山車の下に収納された、予備のてご。毎年祭の前に山に入って、何本も切り出すんだそうです。
てごの先がばさばさに割れてしまったら、この予備のてごを出して使います。
おっとっと、街路樹にぶつかりそうになって、軌道修正するためにいったん山車を停めました。後ろに見える歩道橋に山車がつかえてしまうので、この歩道橋の下は通れません。大きく迂回します。
義勇組 若衆
山車の綱を引っ張る、義勇組(ぎゆうぐみ)の若衆達。綱の中、山車のすぐ真ん前にいる二人を、「べんじゃ」と言います。綱を引く時の掛け声をかけたり、かじ取りをしたりする、大事な役目です。ところで若い人しかいないのでしょうか?いいえ‥‥‥‥‥。
猩猩山 送り絵
組のOB達は、山車の後ろを押して行きます。そういう決まりがあわけではないらしいのですが、若い衆がギリギリと引っ張って、OBがぐぐっと後押しをするという光景が、各組で見られます。
義勇組 OB

日ざしが強くなると活躍するのが組の手ぬぐいです。
お薦めのかぶり方は、やはりあね様かぶりでしょうか。
このお父さんのかぶり方も、素敵です。

猩々山(しょうじょうやま)の見送り。
描かれているのは、中国の神様だそうです。
さすまだ 自動車誘導係
この長い棒は「さすまだ」といいます。山車の運行に邪魔になる電線を、山車が通る間、上に持ち上げるんですね。普通、道路の右と左に一人ずついて、息をあわせて持ち上げます。
列の最後尾の自動車の誘導係。左手に持ったトランシーバーで、はだもぢの前にいる誘導係と連絡を取り合いながら自動車を誘導します。右手のライトは以前は昼は白いすえひろ(扇子)、夜は提灯でした。
ベテラン笛吹き
二階に乗る女の子
ちょっと判りにくいんですが、このお父さんの襟のところに、笛が挿してあるんです。このお父さんは笛も歌も上手くて、夜は笛を吹くか歌を歌うかしながら、山車を押して歩きます。 ちょっと遅れて来た女の子が、山車の外から二階部分に引き上げられています。上に乗りたかったんですね。いつもはこんなふうにはしないんですが、今日はちょっとだけ特別でした。よかったね(笑)
山車参社
郷社(ごうしゃ=田名部神社)前に到着。これを「山車参社」と呼びます。こうして神社正面を向くんですよ。山車の引き手達は、郷社で参拝中です。
点灯
稲荷山 山車退社
夜、郷社前です。同じ猩猩山ですが、山車の様子が昼間とは全く違いますね。お囃子も昼間には奏でない情熱的な「ヤマヤレ」に変わり、気持ちはどんどん高まっていきます。

花火の合図で猩猩山のすぐ前の「豪川組 稲荷山(ごうせんぐみ いなりやま)」が、郷社前を出発します。これを「山車退社」と呼びます。猩々山もそろそろ出発です。

猩猩山 額送り絵
猩猩山 額
ゆらりと動き出しました。この絵灯籠のような部分は、「額(がく)」と呼ばれるらしいです。
「ヤマヤレ」を奏でる時は、一階部分の垂れ幕は上げておきます。
義勇組 乗子 90°回し
90度のカーブを曲がる直前。カーブのギリギリまで山車を前に出して、一気に曲がります。
タイヤじゃないので、曲がるのが大変なんですよ。
山車の一階部分に乗っているのは、「乗子(のりこ)」と呼ばれる囃子方です。
三車別れ2 義勇組組頭
三車別れ1 猩猩山と大黒山
三車別れ」の所定の位置についた猩々山の前を通る「共進組 大黒山(きょうしんぐみ だいこくやま)」。 山車の前に並んで他町(ほがちょう=よその町)の山車の準備が終わるのを待つ組頭(くみとう)達。
三車別れ4 笛
三車別れ3 堤灯
提灯をかかげて、挨拶を始めます。 提灯をかかげる時に、笛を吹きます。現在はホイッスルですが、昔は時代劇で聞くような笛だったのかも。
三車別れ6 共進組の帯
三車別れ5 裃

共進組の華やかな黄色の帯。
手ぬぐいも同じ色です。

組のOBには、こうして裃(かみしも)を着て山車の運行に携わる仕事があります。でも本当はみんな、半纏を着たいみたい(笑)
田名部神社 半纏
夜の闇と猩猩山
山車の一階部分、乗子や太鼓が見えますね。
これは何本目のてごでしょうか。
右側の人が着ている半纏の帯には、「田名部神社」と書かれています。半纏の柄も、ちょっと違うでしょ。
夜の闇に浮かび上がる、猩々山。
なんて美しいのでしょう。
乗子と笛
乗子は交代制です。中学生になると乗子になれるようですよ。
ただし、笛だけは、大人が奏でることが多いようです。