1996年 7月山行 山行記

筆者 K・S (2年生)

7月22日(月) <1日目>

 富士見平小屋でテントの設営、水汲みなどの仕事をすませ、瑞牆山へ向かって出発したのは13:15ごろだった。

 石がごろごろした平らな道をしばらく歩いた後、急な下りにさしかかった。いつも思うが、登りのとき、このように下りに出くわすと、少しいやな気がする。下りが終わると、細い川が流れていて、その向こうには人が集まっている。その人達から、「エラい?」とか「エラくない?」などと聞かれた。「つらいか?」ということを聞いていたのだろう。

 さて、その川から登り始めて、この山は少し変わった山だな、と感じた。大きな岩があり、それを回りこむように、木の階段がつけられている。奥秩父の山は深い森でおおわれているのが特徴らしいが、この山は岩ばかりで、例外に属するのだろう。この日は、運悪く小学生の林間学校と重なってしまい、道は渋滞し、いたるところで立ち止まって待つことになる。小学生の波が完全に過ぎ去ってしまった後は、先頭のNが速めのペースで、ぐんぐんと登っていった。道は意外と急で、息が切れる。樹林帯を抜け、岩場を歩いていたとき、雨がポツポツと降り出した。休憩を取り、雨具を着て、再び出発する。

 その後、二つの岩の間のような所を通り、そこからはさらに道が急になった。登る、というより、よじ登る、と言った方がよさそうだ。山頂はもうすぐだ。

 結局、出発から1時間半ほど経ってから瑞牆山山頂に着いた。ガイドブックには、「360度の大パノラマ」などと書いてあったので、かなり眺望には期待していたが、雲のせいで残念ながら目にすることはできなかった。


7月23日(火) <2日目>

 この日は、夏合宿前に、早起きを経験しようということで、2:30に起きた。朝食はチキンラーメンで、スープの味が濃く、スープまで飲み干すのがつらかった。この日の朝、T・Kが体調を崩し、前日足を捻挫したY・Kと共に、K先生に連れられて山を下ることになった。天気のことといい、いろいろな点で、ついていないと感じた。

 富士見平小屋を出発したのは4:45ごろで、予定より少々遅れてしまった。まだ日の出前で、暗く、また前日の天気予報に反して朝から雨が降っていた。
 大日小屋の少し先の地点で休憩を取り、その後かなり急な登りにさしかかった。先頭のNのペースが速いせいか、大分息が切れる。急坂を登り切ると、そこは大日岩だ。そこからは平凡な道が続く。道のそばに幹の赤い、背の低い木が生えていたが、F先生にダケカンバという木であると教えていただいた。形がどことなく白樺に似ているような気がし、ひょっとしたら仲間かもしれない、などと思った。

 砂払ノ頭に出ると、そこは森林限界だ。風と雨がもろに体と顔に当たり、目を開けるのが少しつらい。霧が濃く立ちこめ、下界の方は雲でおおわれてしまっていてさっぱり見えない。ほんの数分前とは全く別の世界にいるように感じられた。足もとには大きな岩がゴロゴロしている。そこに、へばりつくように生えているのが、ハイマツだと、再び先生に教えていただいた。山に登り始めてからこのときまで、木や植物には殆ど関心を持たなかったことを、我ながら恥ずかしく感じた。

 砂払ノ頭から50分近く歩き、7:45ごろ金峰山山頂に着いたが、相変わらず濃い霧が立ちこめていて、全く眺望がきかない。普段ならば素晴らしい景色を見ることができるであろう方向を見つめて、何ともやるせない気分になった。そうこうしている間にも、風は一段と強さを増し、どんどん体温を奪われていく。結局、着いてから10分ほどで、後ろ髪を引かれつつ、下山することとなった。

 今回の山行では、景色を全く楽しむことができず、大変残念であったが、2500m程度の山二つに登ったというのは、夏合宿前の練習として、意義深かったと思う。それに、山に登っていれば、たまにはこんなこともあるだろう。去年、一度も雨らしい雨に降られなかった方がよっぽど珍しいことだ。そう自分を慰める。だが、もし機会があれば、天気の良い日に、金峰、瑞牆山に再び挑戦したい。



《「稜線」第18号(1996年度)所載》

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