1996年 1年生山行 山行記

筆者 K・H (1年生)

 この山行は、1年生だけで行われたので、2年生がいない分心配もあったが、いつもとはまた違う楽しさがあった。

9月5日(木) <1日目>

 朝、7:00、新宿6番線ホームからスーパーあずさ1号に乗り茅野まで行き、そこからタクシーで唐沢鉱泉まで行った。スーパーあずさはなかなか揺れるので、何人かは酔った。さらに、息つく暇もなくタクシーに乗りかなり揺さぶられたので、とてもきびしかった。おかげで、唐沢鉱泉で昼食をとりたいという者はおらず、体操をして歩き始めた。

 しばらく歩く。道は山道の入り口らしく、木がうっそうとしている森の中を進んだ。天候は晴れているのに涼しいという、とても良いものだった。しかし、Kはかなりの乗り物酔いのため、ややつらそうに見えたが、いつものことのような気もするので、大丈夫だと思った。行けども行けども眺望がなく、所々急な登りもあったりして、楽しくはなかった。尾根に出てもひたすら登りが続いた。

 13:30、西天狗岳山頂に着く。オーレン小屋へのルートを見おろしてみると、まだありそうだ。目の前の東天狗岳は、道の関係でいやがおうでも登らなければならないので、少し悲しかった。そして、その日の最後の30分の下りで、自分の後ろで何か音がしたので振り返って見ると、M・Sが腹ばいになって寝ていた。しかし、すぐに立ち上がった。転んだらしい。しかも、頭から行くとは、なかなか危ないと思った。

 オーレン小屋はきれいな所だった。便所に書いてある文句(「もう一歩前へ。最後の一滴が垂直に落下する。」)が大変興味深いものだった。カレーはいつもよりはうまくできた。



9月6日(金)
<2日目>

 3:30、起床。天気晴れ。朝食のお茶漬けは普通の味がしてホッとした。

 5:10、出発。最初はなだらかな道であり、時折上を見上げると乾いた川のような感じでずっと続いていた。いつものことだが、自分は早朝の1本目は足がフラついてしまい、ひどくつらかった。

 夏沢峠を越え、歩き続ける。いつの間にか、周りには木がなくなっていた。そして冷たい風がもろに当たった。しかし、かえって疲れを忘れさせてくれたので、1時間以上も1本で歩いた。もうすぐそこに硫黄岳の山頂が見えている。止まっていると寒いので歩きたかったが、少し疲れていたので、休憩を入れた。みんなかなり元気な様子だったので、頼もしく感じた。10分ほど休んだ後、15分ほどガレ状の山肌を登ると山頂に着いた。とても寒かった。

 下りはズルズルと滑り、膝に負担がかかり、苦しかった。下っているときに人とすれ違ったが、登る人は下る人の倍以上疲れるだろうと思わせるように苦しそうに登っていた。大ダルミに出てもパーティは好ペースで歩いた。横岳は鎖場があり、危険だということで、少し気が引けていたが、大した所はほんの数ヶ所だった。しかし、気を抜けば生死にかかわるような所では気を使った。そして、一ヶ所、F先生が以前に通ったときとは変わってしまった梯の道があった。しかし、昔の梯の道もまだ通れたので、自分はそっちのルートを通った。そこは本当にスリルのある所であった。

 横岳も無事通過することができ、そのまま尾根づたいに赤岳へ向かった。そこでも、スリルあるポイントがあり、登山者を退屈させないようになっていた。赤岳の山頂まで歩いて、後は下るだけになった。赤岳の山頂には小屋があった。自分としては、よくもこんな所に作ったものだと感心させられてしまった。さらに、その小屋では何故か温水シャワーがあった。わかさぎの天ぷらも食べられるようになっていた。ビール、コカ・コーラ、CCレモンなどを売っていた。

 しばらく休んだ後に、出発した。下りだった。その下りは想像を絶していた。果てしなく岩場を下った。けれども、必要以上にビビる必要はないと思い、階段を下りる感じで下った。すると、岩に足の裏がミートする感覚と、スリルと、アスレチック・コースの要素などがあって、むしろ楽しかったのではと思う。しかし、下りは膝に負担がかかり、結構苦しくもあった。

 そんなふうにして黙々と下っていると、「キレット小屋閉鎖」と書かれた看板が立っていた。多少心配しながら、キレット小屋まで下った。水はチョロチョロと流れていた。ライト・エスパース(ジャンボ)も無事張ることが出来、小屋が閉鎖されていてもキャンプは出来た。夕食を食べ、18:00に就寝。しかし、なかなか寝つけなかった。



9月7日(土)
<3日目>

 3:30、起床。相変わらず、うどんは良く出来た。

 天気は、強風プラス小雨。歩き始めて間もなく、急な登りに入った。所々に岩場があった。岩が濡れて、よく滑る。まだうす暗い。風が強い、というより、最悪のコンディションだった。景色などなく、ひたすら登った。休憩もあまりに寒いためうれしくない。そんなふうにして登っていくと、高さ……落差15m!?ほどの梯があった。自分は梯がとても嫌いなのだが、その上雨でつるつる滑り、ひどく恐ろしく感じた。精神的疲労が溜まっていった。そこから少し登ると、いくぶん平らな道になった。途中立て札があったが、よく注意せずに進んでしまった。パーティは権現岳山頂を通り過ぎてしまったのだった。自分は少し残念に思いつつも、後は下るだけだ、と少し気が楽になった。

 下りはそれほど問題がなかった。ただ、ややパーティの雰囲気が緩んでしまったので、そこは問題であったと思う。ずんずん下った。そして、車道に出た。そこはもうペンションだらけで、今までの山道と違い、とてものどかであった。あっという間に甲斐大泉に着いた。千露里庵へ立ち寄ってから、帰路についた。

 2年生がいなかったのだが、無事山行も成功に終わり、長い夏の休みの計画も全て終わった。1年生山行はとても充実していて良かったし、とても自信がついたと思う。


《「稜線」第18号(1996年度)所載》

▲1996年度の山行一覧に戻る▲

△以前の山行・目次に戻る△

■ワンゲル・トップページに戻る■