2023年 個人山行 八ヶ岳 山行記

筆者 K・S (3年生)

9月23日(土) 〈1日目〉 曇り

 この日の集合場所は高尾駅、予定通り集合し、6:14発の松本行きの電車に乗った。

 8:48に茅野に到着し、バスに乗り込む。出発を待っていると、バスはガラガラであったが、なぜか調べていた時刻より10分程早く発車した。臨時のバスでも出るのだろうか。それにしては人が少なすぎるような気もするが……。なんにせよ早く目的地に着けるのはありがたかった。

 30分程揺られ、美濃戸口バス停に到着。いつも通り準備運動を済ませ、9:45歩行開始。ここからはしばらく舗装路を進んで行った。やまのこ村、赤岳山荘を通過し、美濃戸山荘に到着。ここで第1回休憩を取り、手短に昼食を済ませた。

 歩行を再開し、赤岳鉱泉を目指す。途中、堰堤広場で第2回休憩を取った。そこからは川沿いの木道を歩いた。今まで歩いたことの無い雰囲気の道であったため、新鮮な気分になった。

 赤岳鉱泉に到着。時刻は12:53であった。すぐに二手に分かれ、作業を始める。丸田には場所取りをお願いし、その間に受付を済ませに行った。設営を終えれば、後は夕食まで自由である。

 最初は折角だし、温泉にでも入ろうかと考えていたのだが、いざ登ってみるとそこまで汗もかかず、疲労もなかったため、温泉に入るのはとりやめた。というのも、この日は涼しく、歩行時間も3時間しかなかったため、当然と言えば当然のことであった。

 その代わりにラーメンを食べることにした。何気に初の山小屋の食事である。注文を待つ間に翌日使うヘルメットも借りておく。ラーメンはあっさりした醤油味で自分好みの味だった。

 余談だが、ラーメンを食べていると、思わぬ出会いがあった。電車でずっと向かいの席に座っていたグループも赤岳鉱泉に来ていたのだ。話を聞くと、夜20:00から演奏会をするために来たとのこと。是非聴いてみたいと思ったのだが、個人山行とはいえ、就寝時間はずらしたくなかったので断念。

 17:38に夕食開始。この日の夕食は個人山行ではお馴染みのフリーズドライであった。調理しようかと思うこともあるが、やはりお湯をかけるだけという手軽さには敵わない。現代技術様様である。夕食を終えた後はテントに戻り、翌日の準備を済ませ、19:30に就寝した。



9月24日
(日) 〈2日目〉 晴れ

 3:30に起床。すぐに朝食の準備に取り掛かった。この日の朝食は久しぶりのチキンラーメンであった。それなりに食べ慣れた味でもあったため、少食な丸田も問題なく完食していた。

 支度を済ませ、4:35に出発。手早く準備をしたつもりだったのだが、何故だか、少し予定より遅れてしまった。個人山行ということもあって少し気が緩んでいたのかもしれない。しかし、歩行開始が遅れたこと以外は問題なく、サブザック行動ということも相まって軽快な足取りで登って行った。

 歩き続けること1時間と少し、赤岩の頭に到着。ここで第1回休憩を取った。北の方面は良く晴れており、北アルプスの山々も見ることができた。私は山の位置関係に明るくないのでほとんどはどの山かわからなかったが、特徴的な姿の槍ヶ岳は私でもはっきりと分かった。また、反対側には横岳や赤岳など、歩く予定の稜線も見えた。

 歩行を再開し、ほどなくして硫黄岳に到着した。一通り写真を撮った後はすぐに出発し、横岳を目指す。硫黄岳山荘を少し過ぎた辺りで第2回休憩をはさみ、しばらく進むと段々と登山道が硫黄岳のおおらかな雰囲気とは打って変わって険しい雰囲気を纏うようになってきた。そのため、前日に借りておいたヘルメットを着用し、慎重に進んで行った。

 稜線上からは赤岳と富士山が正面に見え、抜群の景色を見ながらの歩行を楽しむことができた。鎖場や梯子も特段危険な個所はなく、経験を積むにはもってこいの登山道だったと思う。

 第3回休憩を8:18から取り、次の1本に向けて気合を入れ直す。8:40には赤岳展望荘を通過し、いよいよ赤岳直下である。遠目に見てもわかる通りの急登であり、登りが苦手な私にとっては今回の山行で一番つらい場所であった。

 9:04、何とか登り切り、赤岳頂上山荘に到着。ここで昼休憩を取った。昼食は各自買ってきた菓子パンであったが、今回は珍しく潰れずに持ってくることができた。やはりパンは潰れていない方が美味い。

 この日は晴れていたが、前日に引き続き涼しく、秋の訪れを感じさせる気温と天気であり、眺望も素晴らしかった。そして、昼食を食べ終え、赤岳山頂へと向かった。山頂は山荘のすぐ側にあったのだが、日曜日ということもあって人が多く、写真撮影には時間がかかってしまった。

 9:38に山頂を出発し、下山開始。「ワンゲルの事故は下りで起こる」という先生方から何度も言われた言葉を思い出し、気を引き締める。地図からもわかる通り、なかなか急な下りで鎖場もあったため、ペースを落とし、慎重に下って行った。

 一区切りついたところで第4回休憩を取った。正面には阿弥陀岳のこれまた急な登山道が見えた。今度は阿弥陀岳まで縦走したいものだが、なかなか厳しい山行になりそうである。一体いつになったら行けるようになるのだろうか……。

 休憩を終え、赤岳鉱泉を目指す。よく整備された階段を下りきると樹林帯に突入した。10:45に行者小屋を通過し、そこからは平坦な道が続いた。登山道は苔の緑と木々の白い樹皮のコントラストが美しく、岩稜帯とはまた違った良さがあった。

 赤岳鉱泉には11:20に到着し、第5回休憩とテント撤収を行い、12:10まで滞在した。やはり不慣れなベースキャンプであったため、撤収には時間がかかってしまった。特に、サブザックからメインザックへの荷物の入れ替えには改善の余地が大いにあったと思う。

 赤岳鉱泉を出発し、1日目の行程を逆に辿っていく。堰堤広場を通過し、13:01から第6回休憩を取った。13:33には美濃戸山荘に到着し、舗装路歩きが始まった。下りの舗装路というのはやたら長く感じるもので、戻ってきたという実感が湧くのと同時に、少し辟易した気分になった。しばらく舗装路を歩き、美濃戸口バス停には14:13に到着した。

 トイレや水分補給を済ませバスに乗り込み、往きと同じく30分ほどバスに揺られ茅野駅へと向かった。

 今回の山行は計画が二転三転し、どうなることかと思っていたが、何事もなく行程を終えることができて良かったと思う。初めてヘルメットを着用して歩行したが、鎖場や梯子も落ち着いて通過することができ、少しずつだが着実にレベルを上げられていることを実感できる山行だった。とはいえ、まだまだ体力面・技術面などにおいて足りていない部分も多く見られたため、この経験を活かし、また次回につなげていきたいと思う。


《「稜線」第45号(2024年度)所載》



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