2023年 個人山行・北岳 山行記

筆者 H・M (3年生)

8月23日(木) 〈1日目〉 晴れのち雨

 集合場所は八王子駅、集合時間は6:30であった。

 先週の金峰・瑞牆山と同じく、八王子駅6:35発の松本行に乗った。八王子始発ということもあり、中央線の登山の時はよくお世話になる列車である。いつも通り先頭に乗って、甲府駅を目指す。今回はボックスシートであったので、会話が弾んだ。

 甲府駅には8:09に着いて、広河原行のバス乗り場に向かう。朝ラッシュの甲府駅のバスターミナルは慌ただしかった。雨も降っており、天気が不安になるバスの待ち時間であった。バスの時間まで余裕をもって到着したので、先頭で乗れることになり、座れてよかった。結果的には全員が座れたものの、早めに動くに越したことはない。

 2時間バスに揺られ、広河原に着いた。広河原のインフォメーションセンターで昼ごはんを食べ、行動を開始した。広河原を出ですぐに橋を渡ったが、この橋は写真で見たことがあったので、実際に渡れて興奮した。いよいよ南アルプスの登山が始まる。

 広河原から白根御池小屋まではひたすら登りであり、は北アルプスの合戦尾根よりもきついと言っていた。私も合戦尾根より大変な登りであると感じた。

 雨はパラパラ舞っていたものの、雨具を着るほどではなかった。登りが終わり、残りはトラバースで白根御池小屋に向かうが、上下に登り下りがあり、近いようで遠かった。

 小屋に着くと、池の奥にはテントが張ってなかったので、張る場所を自由に選べ、いいところにテントを張ることができた。

 16時までゆったりとした時間を過ごし、調理を開始した。前回の金峰山では火がつかなかったのでとても心配していたが、今回はライターを変えたのでうまくいった。「さとうのごはん」を湯煎しながら、レトルトカレーも湯煎をし、カレーライスを食べた。耐熱袋をさらにかぶせることで食器が汚れずに済んだため、片付けが楽であった。

 食事が終わり、明日の用意をして、18時に就寝した。外はまだ明るかった。



8月24日(金) 〈2日目〉 晴れのち雨(風強し)

 今までで一番早い2時起きであった。朝食はコーンスープとパンであった。

 満天の星空のもと、我々だけが起き、朝の支度をする。3時過ぎにはテントの撤収が終わり、行動を開始した。こんなにも朝が早いのは、過去の山行記に「草すべりは暑くなる前に登り始めるべき」という先生の助言が書いてあったからだ。

 思いのほかテントの撤収が早く済み、予定よりも行動を開始したので、なかなか明るくならない。真っ暗な中、草すべりの急登を登っていく。ヘットライトをつけて歩いているものの、一面が真っ暗で野生動物が出そうで恐る恐る歩いていく。テント場から離れるにつれて怖さが増していく。4時前が怖さのピークであった。3人だけだと少し心細かったので、ラジオをつけて歩いたが、Jアラートが沖縄県に発出されたとの速報が入ってきて、さらに怖くなった。

 草すべりを終わりに差し掛かるころ、東の空が明るくなってきて怖さが一気になくなり、足取りが軽くなる。日の出の時刻に稜線に乗れそうだったので、少しペースを上げて稜線まで登ったところで日の出を見た。稜線から見る日の出はとても良かった。北岳の山頂はガスで見えなかったので、小太郎山分岐で日の出を見ることができてよかった。

 肩の小屋に着く頃にはガスの中に入り、雨も降り出してきた。風も出てきて、とても寒かった。肩の小屋から山頂までの最後の登りはとてもつらく、一歩一歩着実に前に足を進めて、山頂に向かっていった。

 山頂に着くと休憩をとったが、ますます雨風が強くなり、とても寒かった。指がかじかみ、夏山でも手袋を持ってくるべきだと後悔した。

 山頂でガスが晴れるのを少し待ったが、まったくガスが消える気配がしない。しかし、真上には青空が広がり、若干太陽が差し込んだ際には、少し寒さがやわらいた。

 とにかく寒かったので幕営地である北岳山荘に歩みを進める。稜線はとにかく風が強く、ザックカバーが飛ばされそうになり、岩陰で風をよけながら、ザックカバーをしまい、再び稜線上に出る。風にあおられないように歩き、なんとか北岳山荘に着いた。

 チェックインをして、すぐにテントを張った。8時にテント場に着いたので、われわれ以外にほとんどテントがなく、場所は選び放題であった。一番利便性が高いところに張ることができた。

北岳山荘は稜線上にあるためとても風が強いと聞いていたが、風はそこまで強くなく、なんとかテントを張ることができた。
 夏合宿では常念小屋でテントを張るときにあおられ、テントのスリーブに穴が開いてしまった。そこでマイテントは吊り下げ式をえらんだので、強風のなかでもうまく設営できた。いつもよりペグを丁寧に打ち、テントの中に入った。

 北岳の稜線の寒さでパーティーが疲弊したので、間ノ岳のピストンは取りやめることにした。

 そのため、9時過ぎからまったりとした時間を過ごした。いつの間にか寝てしまい、12時ぐらいに起きたら暴風がやんでいた。そのすきを見てお湯を沸かし、カップラーメンを食べた。沸点が低く熱々でなかったが、ちょうどいい温度でよかった。

 昼ごはんが終わったあとも、テント内でのんびり過ごした。13時過ぎにテント場が慌ただしくなってきた。それはヘリが来るからだった。荷物を下ろすのかなと思ったら、山梨県警の救助ヘリが来たので驚いた。救助ヘリは救助者を乗せて、すぐに飛び去った。

 その後も急に天気が悪くなったりもしたりしたが、テント内で再びまったりとした時間を過ごした。夏合宿ほどテント内が暑くなく、過ごしやすかった。

 17時になると夕飯を作った。夕飯はアルファ米とフリーズドライのおかずであった。お湯を沸かし少し待って食べた。少しガスがあったものの、南アルプスの絶景を見ながら夕飯を食べることができた。テントの整理をしたうえ、19時前には就寝した。



8月25日(金)
〈3日目〉 晴れ

 先日の悪天候が嘘のように雲一つない登山日和となった最終日。

 2時半に起床し、朝食の棒ラーメンを作る。昨日と同様にきれいな星空が見える。昨日と違う点は甲府盆地の夜景が見える点だった。山の上から見る夜景は格別である。

 棒ラーメンを作るが、麺をゆですぎてしまい、麺が伸びてしまったが、暖かいスープで体を温めて、テントの撤収に入る。テント内は暖かいが、外はとても寒く行動が鈍る。

 テントを撤収して出発の準備をする際に、ハイテクな公衆トイレに入ったが、風がしのげるトイレの建物は暖かく、しばらくトイレの建物にいてしまった。

 4時に出発し、歩き出したが、稜線上の岩場の道は暗いから、正しいルートを見つけるのが大変であった。慎重に道を確認しながら、北岳の山頂を目指して歩く。昨日歩いたところを登ってみて、ガスがない分高度感があり、下りよりも怖く感じた。

 5時過ぎに山頂に着き、ギリギリご来光を見ることができた。仙塩尾根のほうに北岳の影が映っており、かっこよかった。北岳の山頂からは八ヶ岳や仙丈ヶ岳、甲斐駒ヶ岳などたくさんの山々が見え、最高の景色が見られた。

 山頂からは肩の小屋まで下り、肩の小屋でも休憩をとった。肩の小屋のトイレは洋式でとてもきれいだった。

 肩の小屋からコースタイム通りに歩けば、広河原10時発のバスに乗れそうだったので、少し飛ばして下っていった。草すべりもテンポよく下り、8時前に白根御池小屋に着いた。

 草すべりを明るい時間に歩くと結構な急な斜面であることが分かった。また、白根御池小屋のテントが見えてから、白根御池小屋までが長く感じた。

 10分休憩して、出発する。出発してすぐに登ってくる人が次々とやってきて、思うようにペースが上がらない。譲り合いながら、広河原目指して下っていく。第1ベンチで最後の休憩をとり、広河原に向けてラストスパートをかける。コースタイムよりも若干早く下り、広河原にはバスの30分前の9時30分に着いた。広河原のインフォメーションセンターで、着替えなどをし、10時のバスで帰路についた。

 はじめての3000m越えの山行であったが、白根御池小屋で高地順応したので、高山病にならずにすんでよかった。間ノ岳のピストンは取りやめたので、いつか白峰三山を縦走するときに訪れたい。いろいろと学ぶことが多い個人山行となったが、修正して次の山行に活かしたと思う。最終日の景色は格別であった。


《「稜線」第45号(2024年度)所載》



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