2023年 個人山行 本社ヶ丸 山行記

筆者 H・M (3年生)

 しばらく山に行けなかったと久しぶりに2人で行く予定であったが、ワンゲルの冬山行が中止になったので、それに同行する予定だった3年生のも加わり、夏に北岳に行ったメンバーでの山行となった。

12月18日 (月) 快晴

 いつも通り八王子に集合。6時35分の松本行で笹子駅へ向かう。冬の平日であり、登山客はちらほらいる程度で車内は他の季節に比べて空いていた。ただ平日ということもあって山梨県内では多くの高校生が乗ってきたのが休日とは違うところだ。

 笹子駅に着くと準備をして、7時50分に出発した。水道が凍結防止のために水を出しっぱなしにしているのを見ると、冬が始まったなと感じた。

 手袋、ネックウォーマー、ニット帽、バラクラバなど、各々が防寒対策をしっかりとして、笹子駅を出発した。耳を出していると耳がとても痛かった。1か月ぶりの登山であり、興奮していた。

 林道を順調に進み、登山道に入った。登山道では渡渉ポイントがいくつかあり、道を見失わないように、丁寧に歩いていった。無事に沢から尾根に登る登山道に入ったが、ものすごい急登であり、落ち葉も積もっていたことから、大変であった。

 半分以上進んで尾根が見えたころ、事件は発生した。

 ある大きな岩を境に、はっきりした登山道が見えなくなったのだ。落ち葉も多く、踏み跡もないなか、右側の木に手ぬぐいが括り付けられていたことを先頭のが発見し、道がわからないので、手ぬぐいの方に進んでいく。最初は硬かった道も手ぬぐいが近づくにつれて、どんどん柔らかくなっていって、抜け落ちそうになったことで、手ぬぐいに近づく前に道に迷ったことに気が付いた。

 とりあえず、地面が固く安定しているところまで進み、態勢を整えた。幸いにも尾根までわずかであったことから、抜け落ちそうな道を下るよりも道なき道を直登したほうがリスクが低いと判断し、先頭のは慎重に登っていった。私はトラバースして地盤が安定しているところから尾根に乗ろうとした。本当に土がもろく、トラバースするにも一苦労であった。幸いにしてソールが固い靴であったことから、靴で斜面を蹴って足場を自分で掘ってトラバースした。滝子山でほかの人がやっていたことが参考になった。

 と私はなんとか尾根に乗れたが、道なき道を直登するのはものすごく危険であったので、尾根から下る登山道を道を間違ったところまで下り、にもそこまで下りてきてもらい、正規の登山道に合流した。

 土が柔らかい斜面をトラバースした際に、一歩でも踏み外したら死ぬだろうなというすごい恐怖感があった。斜度にして60度以上で高低差400mぐらいあり、沢底が見えなかったので、覚悟を決めてトラバースした。人生で一、二を争う恐怖感であった。映像で見た厳冬期の富士山の斜面みたいであった。

 道を間違えた地点まで戻ると、大きな石があり、手ぬぐいとは逆側からそこに下りついた。登山道が大きく手前に張り出しており、トラバースした後の正規の登山道が死角になっており、手ぬぐいを信じてしまいやすい状況であった。私の過去の経験からしても、正しい道を選べたかと言われたかと考えても見落としてしまうだろうなと思った。

 ここを間違えない方向に行くのは極めて難しいと、我々のパーティーは結論づけた。過去にもつづら折りの登山道において、折り返した先の道が出っ張っていて死角になっていたことがあったので、つづら折りの登山道において注意しなければいけないポイントだと気づく機会になったと思う。登山開始から1時間程度のことであり、すごく精神がすり減った。

 尾根に出たところで休憩したのち、ここを除いて登山道はそこまでわかりにくくないことから山行を続行することにした。

 稜線に出るまではいつもよりもゆっくり、慎重に登っていった。この一件で精神的ダメージを受けてしまったので、普段より登りがきつかった。

 稜線に出ると北側斜面では当たらなかった日が照ってポカポカしていた。稜線は整備が行き届いており階段も多くあったが、霜柱が解けて滑りやすかった。落ち葉も多く積もっていたので、気を抜かずに本社ヶ丸まで歩いた。

 角研山あたりでは三ツ峠に隠れて富士山が見えなかったが、本社ヶ丸山頂に着くと、とてもきれいな富士山が見ることができた。牛奥ノ雁ヶ腹山よりも素晴らしい富士山を見ることができたのではないだろうか。滝子山ではガスって見ることができなかった富士山もこの山行で見ることができてよかった。

 ほかにも、雪の積もった南アルプスや赤岳なども一望することができた。この山域で見てきた中では一番きれいな山頂だと思った。

 そんな景色を横目にカップラーメンを作り、食べた。そこまで広くない山頂を1時間貸し切りにできたのは冬の平日であったからであろう。

 そこから清八山までは岩が多めの登山道に変わったが、丁寧に下っていった。

 清八峠で休憩したのちは笹子駅まで下るのだか、落ち葉があるものの、テンポよく下ることができたと思う。荷物が軽いからかもしれないが、とても下りやすかった。最後は林道歩きをして、駅には16時前に着くことができた。

 多少のアクシデントはあったもの、無事に終えられてよかったと思う。
 この時期の富士山は空気が澄んでいてとてもきれいなので、また別の山でも見たいと思った。この3年間で大月市が指定する富嶽十二景も半分近く制覇してきたので、いつかは全部制覇したいと思う。

 大学生になっても、このメンバーで登山できるとことを心より願っている。もう卒業なのは非常に名残惜しいと感じた登山であった。


《「稜線」第45号(2024年度)所載》


 
 本社ヶ丸山頂から南アルプスを望む
遠景は、左から、聖岳、赤石岳、悪沢岳、塩見岳、農鳥岳、間ノ岳、北岳、鳳凰三山、甲斐駒ヶ岳
中景左は御坂黒岳、その右は釈迦ヶ岳

     
 
本社ヶ丸山頂から八ヶ岳と奥秩父の山々を望む
奥秩父は、左から、金峰山、朝日岳、国師ヶ岳
 
     
 
 本社ヶ丸山頂から富士 (富士の手前は三ツ峠)   清八山から富士
     
   
 本社ヶ丸山頂 (遠景は雁ヶ腹摺山)   本社ヶ丸山頂 



▲2023年度の山行一覧に戻る▲

■ワンゲル・トップページに戻る■