2021年 冬季山行 山行記

筆者 Y・T (2年生)

 今回の山行は、1年生にとってはもちろん、2年生にとっても初めての体験となった。昨年の冬季山行が新型コロナウイルスの感染拡大によって中止されてしまったために、先生方の引率なしで山行を行うこと自体、私たちにとっては初めてだったのだ。まして、2年生主体の山行がまだ3回目とあっては、そう楽観的に臨めるものではない。

 前日の準備会では、同行していただくことになった3年生の先輩方3人も交えて、前回の山行の反省点を踏まえながら、準備を進めた。どうやら、同行していただく先輩方の中でも冬季山行を経験しているのは1人だけだったらしく、他の先輩方は私たち同様、不安感を抱いているようだった。

12月15日(水)  晴れ

 いつものことではあるが、日が昇らないうちに家を出発した。集合場所の所沢駅に着くと、すでに10名弱の部員が集まっていた。参加メンバーは15名、集合時間の20分前なので、順調な滑り出しだと言えるだろう。まもなく、3年生1名を除いた全員が集合した。遅刻の3年生は、最寄り駅が飯能駅とのことなので、不幸中の幸いだった。

 以前のように遅刻者が続出するような山行は何としても避けたかった。パーティー全体の士気に関わってくるだけでなく、以前先生が仰っていたように、パーティーの雰囲気は不思議なことに山の天気や山行の出来栄えに影響してしまう。泥をはねながら山を登りたいとは到底思えなかった。

 その後は順調に進み、正丸駅に向かう電車の中では皆が座席に座れた。目的地に近づくにつれて、山が増え、民家は減った。外の地面を見ていると、どうやら、霜が降りているようだった。しおれた草木や民家の屋根が白く見えるので、一見すると薄く雪が積もったようだった。山の上を想像して不安になりながらも、ますますカップラーメンが楽しみになった。

 正丸駅に着くと、空気はツンと澄んでいて、空も青々としている。気持ちの良い天気だが、体はすでに冷え始めていた。手早く体操を済ませ、記録をとって歩行を開始する。帽子を被るべきか迷ったが、そこまでではなかろうと判断した。1年生も問題なく歩けているようだ。

 まもなく、登山道に入る。私たちが今まで登ってきた道とはまるで違って、むしろ原生林をかき分けて歩いているような気持ちがした。勾配がきつく、大岩や倒木も多い。一歩踏み誤れば、数メートル下の沢に落下してしまいそうだった。

 ゆっくりと歩を進め、ようやく登山道らしい道に出た。しかし、先ほどまでの道で足運びを間違えたのだろうか、A隊の最後尾の私は少し遅れ気味だ。少々ペースを速めて追いつく。また少し遅れる。追いかける。

 そうこうしていると、一度目の休憩になった。歩いているうちは意識していなかったが、やはり多少は汗をかいていた。腰を下ろすと、汗が冷える。途中で腹を下してしまってはかなわないので、タオルを取り出して汗を拭い、首にかけた。1年生から回ってきた水も、心なしか冷えているようだった。

 歩行を再開し、またしばらく歩くと、かなり急な斜面に出た。皆一様に足を空回りさせながら少しずつ、斜めに登っていく。登りきると、多少息が切れる。またしばらく歩くと、今度は頂上直下の広場に出た。十分な広さの、気持ちの良い広場で、早めの休憩をとった。各自菓子をつまむなどして休憩を済ませ、歩いていく。

 10時半頃、伊豆ヶ岳山頂に出る。あまり平坦ではない、岩場の多い頂上だったが、ここで休憩をとる。残念だったのは、眺望が良くなかったことだ。ここで写真をと考えていたので、いささか拍子抜けした。まだ昼食には早い時刻だったので、再び良い場所を見つけるまでは歩くことにし、歩行を開始する。

 古御岳、高畑山などを経て、休憩を挟みながら歩いていると、12時前になっていた。かなり腹が空いてきて、一歩一歩が心なしか重く感じた。考えてみると、伊豆ヶ岳山頂の時点で、朝食からすでに6時間ほどが経過しているのだ。

 半ば後悔しながら歩いていくと、12時頃、ついにおあえつらえむきの場所を見つける。巨大な鉄塔が立っている場所で、二人組の登山者もいて、切り株に腰かけて煙草をふかしているところだった。手早く、とはいかなかったが、火を起こせる場所を確保し、お湯を沸かす。カップ麺を片手に鍋を見守る。皆がしびれを切らした頃、湯が沸いた。年長者から順番にお湯をすくって入れ、適当に3分程度待つ。麺が伸びてしまっては美味しくないので、予め「いただきます」のあいさつを済ませ、各々麺をすする。少し手袋を外していた間に手は冷え切っていたので、温もりに感謝しながら急いで麺をすすり、スープを飲み干す。余った湯の片づけに手間取ってしまったのが反省点だが、これまでになく豊かな昼食だった。

 予定よりも20分ほど昼食の時間が伸びてしまったので、急いで出発する。またもや急な登り、下りを繰り返し、天目指峠に出る。ついに舗装路か、という淡い期待はすぐさま打ち砕かれ、地図が示していたのは細い登山道だった。

 その後、しばらく歩いて愛宕山山頂で休憩をとる。ここで他の登山者に追いつかれ、少し会話をした。どうやら、私たちと同じく正丸駅からの登山者のようだった。この時点で、予定時刻から1時間ほど遅れていた。やはり、先生方がいないからなのか、慣れていないからなのか、随所で時間を浪費してしまったようだった。

 2年生同士で反省を口にしながら、最後の歩行を開始する。15時過ぎに人気のない西吾野駅に到着し、解散式を行う。時間が遅れたほかは、トラブルはなかった。



 今回の山行は、思い出深いものとなったことは確かだが、それと同時に改善点を多分に含んだものとなった。計画書のミスをなくし、準備万端の状態で皆で登る、そうしたワンダーフォーゲル部のあるべき姿に到達するには、もう少し経験が必要だと痛感した山行だった。

 また、CL、SLについては、声掛けが足りないと感じた。反省会ではそれをきちんと認識しているようだったが、CL、SLに限らず、後輩を引っ張っていく立場として、2年生全体で部活の雰囲気を向上させていく必要があるだろう。

 また、主将である私個人としては、山行前の準備や普段の活動等において、もう少し自覚を持ち、責任ある立場として、任命してくださった先輩方に恥じぬよう、行動に気を遣い、部活をより良くしていくことに尽力していきたいと感じた。


《「稜線」第43号(2022年度)所載》


 
伊豆ヶ岳に向かって登る   伊豆ヶ岳山頂直下の岩場の手前で
     
     
古御岳付近から武川岳 (その奥に武甲山の山頂部が見える)   伊豆ヶ岳を振り返る 

 
伊豆ヶ岳山頂から北西を望む (左に前武川岳と武川岳。武川岳の奥に武甲山の山頂部が見える。右端は二子山)
 
 
伊豆ヶ岳山頂にて 


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