2019年 新歓山行 山行記

筆者 R・H (2年生)

5月18日 (土) 〈1日目〉 曇り

 新歓山行は1年生にとって初めての山行になる。私はそのことに少し不安を感じていた。ちょうど1年ほどまえ、私が新入部員として参加した新歓山行では、ほとんどの新入部員が疲れきってしまったからだ。今年の新入生は練習を見た限り、いずれも非常に優秀だ。しかしだからといって油断は禁物であることは、この1年間でよく学んだ。新入部員には怪我なく安全に、そして楽しく山行を終わらせて欲しい。体力のない自分には不釣り合いな、そんな思いを胸に、私は上石神井駅のホームに立った。

 しかし、「こんにちは」と綺麗なザックを携え、挨拶しながらホームに入ってきた1年生を見て、私は何故か安心した。SLだった、数少ない現2年夏合宿制覇者のという頼れる上級生が2人も来られず、さらに直前に同級生がひとり退部してしまうというアクシデントがあったにもかかわらず、彼らの顔はどこか晴れやかだったのだ。

 電車での移動を終え、川井のキャンプ場につくと、すぐに幕営を行った。そこでも1年生は活躍していた。テントの張り方を間違えたり、フライシートを表裏逆にしたりといったミスもなく、スマートに幕営を終わらせることが出来た。

 少しして、いつも通り係に分かれ、気象、食事、炊飯を行った。夕食の牛丼は美味しかった。ご飯に一部芯が残ってしまっていたところはあったが、あまり気にならなかった。少なくとも去年の新歓山行で食べたものよりは遥かに美味しかったように思える。みんなで山に行ってご飯もつくる。これらは、多くの部活が存在する学院のなかでも、ワンゲルでしか経験できないものである。これから先も美味しいご飯を食べ続けたいものだ。

 その後、片付け、ミーティング、ちょっとした自由時間を終え、それぞれテントに入った。テントの中は少し蒸し暑く、床はごつごつしていた。そういえばキャンプ場にテントを張るのは久しぶりだなと気づいたのはこの時だった。明日に備え、大きめの硬い石に体をくねらせながら、柔らかい寝袋の中で目をつぶった。最もその2時間後、爆竹の音で叩き起されることになるのだが。



5月19日 (日) 〈2日目〉 曇りのち晴れ

 3時きっかりに鳴った5台の携帯の目覚ましで私は目を覚ました。寝不足が心配だったが、特に体が痛むこともなかった。

 朝食、撤収を終え、川井駅に移動した。川井駅では先生が1年生にザックの調整について話されていた。そういえば去年私も言われたなとまた思い出した。1年生を見ていると本当に1年前の自分が思い起こされるものである。

 その後、奥多摩駅に到着、全員無事にバスに乗り込んだ。浮橋が使えず、予定されていたバス停の少し先(深山橋)で下車するというアクシデントがあったものの、それ以外は特に問題なかった。準備運動を終えて、いよいよ登山が始まった。

 下車するバス停を変えざるを得なかったせいで、登山ルートも異なるものになってしまった。私が入部して初めて山頂に立ったイヨ山には登らず、それを大回りするようなルート(ムロクボ尾根)をとった。私は、今回先生の二つ前、後ろの方で歩かせてもらった。

 木に手を着いてしまう癖がつきかけていた1年生はいたものの、1年生全体に苦戦しているようなシーンは全く見られなかった。いや、去年の私はもうこの段階で肩で息してたのだが、と心の中で激しく叫んだのを覚えている。また、それと同時に、今の自分はそんなに疲れていないことに気づいた。他の2年生、3年生と比べて体力がないのは相変わらずだが、どうやら私も絶対的には少なからず成長できていたのだろうか。そう考えると、少しだけ、嬉しくなった。

 そうして途中1箇所だけ厳しい登りがあったものの、それ以外は特に問題なく、三頭山山頂に到着することができた。

 昼食、集合写真撮影を行うとすぐに下山した。1年生の下山は思ったよりもちゃんとしていた。1年生の地力の高さを最も感じたのはちょうどこの下りの時であった。こと下りに関しては既に私より上手いのではないかと思わされる時さえあった。

 こうして、1年生最初の山行は、大きな事故もなく終わることができた。今年の夏合宿では去年の私のような1年生は出ないだろうと思われ、安心した。

 だが、今回の山行全てが大成功だったかと言うと、決してそうではない。「2年生全体でスマホは音楽と記録と非常時以外さわらないようにしよう」と決めたにもかかわらず、一部の2年生が電車の中やテントでゲームをしていたという話は私の耳にも届いているし、キャンプ場で注意を受けたこともあった。やった部員の名前を晒すつもりは全くないが、山行の中で多くの問題があったことは無視できない事実である。

 きちんとした山行を行えても、それら問題のせいでケチがつくことは非常にもったいない。自分達の成長や1年生の強さを知れた一方で、今後のワンゲルの課題も浮き彫りになった。そんな山行であったと感じた。


《「稜線」第41号(2019年度)所載》



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