2019年 個人山行・武甲山 山行記

筆者 Y・N (2年生)

 今回の個人山行は、これまで新歓山行にしか参加できていなかったと、新たに入部したの訓練を兼ねて先輩の発案で行ったものである。それゆえ参加人数も、先輩にCLの私とを加えた5人と少ないものであった。

 夏休みのうちにB先輩から山行の話は聞いてはいたのだが、夏休み明け、久々にKに会った際に私がCLだと聞かされて驚いた。まさかここでCLをやることになるとは思っていなかったのだ。

9月29日(日)

 午前6時50分。私は無事所沢駅に到着した。数分たったのち、が、続いて先輩とが来た。7時3分にはも到着し、所沢駅4番線に移動した。5人だけとはいえ、1人も遅刻しなかったのはとても良いことだと思う。特に1年の2人にはこれからも集合時刻より前の集合を頑張ってほしい。

 しばらく待つと、快速急行が入線してきた。この列車は池袋を7時5分に発車し、横瀬で分割されてそれぞれ長瀞・三峰口へ向かう列車である。しかしこの列車の混みようはなかなかのものだった。所沢までで停車する駅は石神井公園とひばりが丘しかないというのに、席はほとんど埋まっていたのだ。私たちはやむなく1時間立つことになる……と思いきや、高麗、武蔵横手と停車する間に乗客が次々と降りて行った。そういえば、この近くの巾着田は彼岸花の名所なのだ。結局無事座ることができたのだが、1年生2人が山に慣れていないのであれば、なるべく座れるように配慮すべきであった。池袋駅集合でもよかったのではないだろうか。これは私の失敗である。

 さて、そんなことを考えている間に列車は横瀬駅に到着した。準備体操をし、1年生の靴紐結びの指導を終えて歩行を開始したが、まあなんと道のつまらないことか。炭酸カルシウムの製造工場を見ているのはなかなかおもしろいのだが、ただただアスファルトの登り坂というのは足に負担もかかる上に登山に来たという気持ちが全くしない。このアスファルトを早く抜け出したいという思いもあってペースを少し早めすぎたような気もするが、案外2人ともついてこれているようで安心した。

 そうこうするうちに、登山道に入った。しかし、本当につらいのはここからだった。日曜日でかつ天気がかなりよかったためか、登山道にはかなりの人がいたのだ。中でも驚いたのは小学生の団体と思しき集団である。遠足かと思ったが、それにしては男子がほとんどいない。というより、ほぼ全員女子ばかりであった。しかし、ガールスカウトに男子がいるのはおかしい。結局、どういう団体なのかはわからなかった。

 それはいいのだが、この団体ときたら少なく見積もっても2.5Lはあるペットボトルを両手で持って歩いているのだ。それにも関わらず結構なペースで歩いている。一列に並んで進むその姿はどことなく旧軍の訓練を思わせるものであった。私たちは彼らを不動滝のところで追い抜いたのだが、その後、我々が休憩している間に抜かれてしまった。さらにこの時、キイロスズメバチと思しきハチが近づいてきた。悪夢の連続である。さらにがスポーツドリンクを飲み始めた。よりによってハチが来ているときにである。しかし、幸運なことにこのハチには襲われることはなかった。

 休憩を終え、私たちは歩行を再開したが、がいることを考えるとあまりペースを上げるわけにもいかない。しかし、小学生たちと抜きつ抜かれつを繰り返すわけにもいかないうえ、自分たちの後ろにもかなりの人がいたことを考えると、山頂にかなりの人が同一時間帯に到着してしまう。2人には申し訳ないが増速し、追い上げに入った。そうして小学生を追い越し、35歳くらいに見えるグループを追い越し、と次々追い抜いて行った。念のため言い訳しておくと、このペースはワンゲルにとっては比較的遅いくらいのペースであると自分では思っている。実際の山行ではテントや寝袋を担いでこれ以上のペースで歩くのだから、少なくとも荷物の軽いうちにペースに慣れておいてほしかったというのもある。

 気が付けば頭上に光がさしていた。山頂に近づいていたのだ。このころ、が足の痛みを訴えた。本人曰く皮がむけたような痛みだったそうだが、ここでとまっているわけにもいかないので山頂まで我慢してもらうことにした。これを時を同じくして、休憩中の中学生くらいの団体を追い抜いた。この調子で行けば山頂は比較的空いているはず、と思っていたのだが、甘かった。既に多くのお年寄りが山頂に到着していたのだ。とりわけ展望台付近は足場が悪く、正直なところ、お年寄りの方々にはあまり入っていただきたくないというくらい、見ていて危なっかしいものだった。

 展望台(1304m)からの景色はすばらしいものだった。山頂直下まで石灰石の採取のために削り取られているのもあって、秩父の街並みを堪能することができた。だが、あまりの人の多さには閉口した。

 ちょうど写真撮影を終えたころ、先ほどの中学生くらいの団体がやってきて集合写真を撮っていたが、彼らの掲げていた旗をみて驚いた。紺色の旗に中央に赤い線、左上に交差する黄色の万年筆のペン先……そう、慶應の校旗である。後でわかったのだが、見間違いでなければ、この団体はKeio Gijuku Chutobu Old Boys and Girls' Art Club (K.C.A.C) なるものらしい。どこに登山との関係があるのか理解できないが、EPIGasのガスカートリッジを持っていたり、登山靴を履いていたりとなかなかしっかりしていた。

 人の少ないところまで戻って昼食とした。日清食品によれば、カップヌードルは2分がうまいらしいが、私のはそうでもなかった。家で食べるときは2分くらいのはずなので、恐らくお湯の温度が上がりきっていなかったのだろう。

 さて、昼食を終え、体力も回復したところでの傷の様子を見たが、大した傷ではなかった。少し赤くなっている程度である。安心したところで歩行を開始したが、このとき帰りのルートがよくわからず、山頂付近をぐるぐるとまわるはめになった。さらに、初めにいったルートで私が時の消えかかった看板を見落としたゆえに、登り下りを繰り返す羽目になった。本当に申し訳ないです。

 下りでも抜きつ抜かれつはあったが、幸い相手も少人数であったため大きな負担とはならなかった。素晴らしいことに、は下りで全く引き離されずについてきた。しかし、が遅れ気味だったことが気にかかる。登りは体力と精神力である程度はどうにかなるが、下りは多少の慣れも必要である。ぜひ秋1山行で下りに慣れてほしい。

 下りはあっという間に過ぎ、気が付けば橋立鍾乳洞にまで下ってきていた。そこから浦山口駅を目指し、ちょうど来た急行池袋行きに乗ってGとKはそのまま沼袋へ、私と先輩は西武秩父駅で降りて祭りの湯に入り、疲れを癒した。

 今回の個人山行は思わぬハプニングもあったものの、けが人もなく、天気も良くとかなり良い山行となった。秋1山行でもこのくらい晴れてほしいものである。

 それにしても少人数で日帰りの山行というのはすばらしい。また機会があれば少人数の個人山行をやってみたいものである。



武甲山山頂から秩父の盆地を望む

武甲山山頂から秩父の盆地を望む

武甲山山頂



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