2016年 冬季山行 山行記

筆者 H・S (1年生)

 今回の山行はKが不参加の7人パーティーとなった。

12月14日  雨

 午前6時、始発電車の関係で後から合流のOを除いた部員6人が早い時間にもかかわらず、遅れる事なく新宿駅南口の改札外に集合することが出来た。

 この点は良かったのだが、ここで問題が発生。私が「ガスヘッド」と勘違いしていて「ガスカートリッジ」を持ってこなかったのだ。結局昼食で食べる予定だったカップ麺を駅のロッカーに置いていき、カロリーメイトとサンドイッチを買って昼食にする方針となった。部の雰囲気に慣れていたためか、気が抜けていたかもしれない。他の部員に大変な迷惑をかけてしまったことをこの場を借りて改めて謝罪したい。本当に申し訳ありませんでした。

 その後は山手線で品川まで向かい、湘南新宿ラインで終点の熱海まで乗っていった。熱海からは普通列車で伊東まで行き、そこからタクシーで天城山の登山口に到着。近くにある休憩場のような場所で靴紐のチェックと準備体操を行った。

 天城山登山口周辺は全体的に厚い霧に覆われていてかなり視界が悪く、道を見失うのではと不安であったが、歩行を開始した頃には大分晴れていたため、その心配はなかった。雨の登山道はどこか浮世離れした雰囲気が漂っていて神秘的な世界を創り上げていた。 「こういう天気の中での登山も乙なものだなあ」などと呑気なことを考えていたのだが、時間の経過とともに雨に苦しめられることが多くなっていった。

 歩行を始めてまず気づいたのは粘土質の土壌が濡れてかなり歩きにくいということだ。落ち葉がある場所はまだマシなのだが、粘土層が丸見えの場所は非常に滑りやすく、足を取られそうになる事が多々あった。

 次に寒さだ。季節が冬という時点で猛烈な寒さである。それに加えて、雨が絶え間なく降り続いているために、服に付着した水が身体を芯まで冷やし体力をガリガリと削っていく。雨具を着ていても水が少しずつ浸透するほどであった。

 それでも一行は足取りを緩めることなく好ペースで進み、無事1本目が終了した。到達した万二郎岳で記念撮影をして休憩をとったのだが、立ち止まると耐えられない程に寒い。雲取山と大菩薩峠を半袖で登った私も雨水には勝てず素直に防寒着と雨具を着た。このまま2本目も楽な道のりで済めば良かったのだが、雨は激しさを増し、早くも疲労の色がパーティーに現れ始めていた。道はほとんど小川と化していて足首が浸かるほどの水深がある場所もあり、急坂も相まっていつ滑落してもおかしくないような状況であった。

 悪路に苦戦しながらも一行はコースタイムに遅れることなく万三郎岳の頂上に到達。記念撮影と昼食を食べた。素朴な食事に、ガスカートリッジを忘れた事が改めて悔やまれる。食事中も雨は止む気配がなく、容赦なく降り続いていた。体の末端は寒さで感覚が鈍り、冬の恐ろしさを痛感させられる。山頂から八丁池までは7.1kmもあり現状では到底踏破できる長さではなかったため、食事終了後に2年生の先輩方はエスケープをして最初の登山口に戻ることを決定し、3本目の歩行を開始した。予定のルートを行けなかったのは残念であったが、適切な判断だと感じた。私も来年は、感情に流されずに正しい判断の下せる立派な先輩になりたいものである。

 3本目の道のりは階段が設置されていて親切……かと思いきや、地面が階段設置時より痩せているのか、ただの障害物となっていて正直な所歩きにくかった。ぬかるんだ地面に急な下りの相性は悪い意味でマッチしていて足を取られることも多くなり、膝への負荷もなかなかのものであった。何度も滑りそうになりながら3本目が終了。

 4本目に入っても大雨、小雨と交互に雨は降り続いていたが、道のりは比較的平坦で転びかけるということはなかった。歩き続けていると四辻に到達し、見覚えのある道となった。

 そのまま20分もしないうちに登山口に到着。休憩場で解散式を行った。

 今回の山行は極限とも言える状況の中で全員が力強く歩行を続け、精神的にも肉体的にも強くなったことを証明した山行であったと思う(私の失態を除く)。残念ながらエスケープとなってしまったが、雨の中を歩くいい訓練となったし、いつも以上に団結力の強まった、とても有益な山行でもあった。今回の経験を次の冬の山行でもしっかりと活かして、パフォーマンス向上に努めようと思う。


《「稜線」第39号(2017年度)所載》


万二郎岳に向かって登る 万二郎岳山頂にて

万三郎岳に向かう 万三郎岳山頂にて



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