2016年 秋季第2回山行 山行記

筆者 R・M (2年生)

 今回の山行は私にとって初めてのCLとなる山行で、正直な所「しっかり部員たちの先頭に立てるだろうか」という不安でいっぱいだった。部員たちは秋季第1回山行で東京都最高峰の雲取山に登っており、また主将の能登のお陰で近頃部活動におけるトレーニングの量やバリエーションも増加しているため、部員たちの実力に問題はないと踏んでいたので、歴史巡検への参加により秋季第1回山行に参加できなかった私の実力が問われる形になったのではないかと感じている。

11月5日 〈1日目〉 晴れ

 この日は電車の都合上12:50という通常時に比べ10分早い集合となった。Nがややぎりぎりだったものの全員問題なく集合することができ、予定通り12:58の電車に乗ることができた。今回同行されるA先生は都合上後から合流するとのことだったので、生徒のみでの行動となったが、電車の時間を間違えることなく塩山駅に15:20に到着できた。

 予約しておいたタクシーで福ちゃん荘へ向かい、到着したのは16:01。標高の高さも相まって刺さるような冬の寒さであった。時間の都合上1年生のNには到着次第気象記録を取るよう指示しておいたのだが、ザックの中に道具を入れっぱなしにしていたようで行動が遅れていた。もう少し気象係としての自覚を持つべきだと感じた。Nが気象記録を取っている間に会計を済ませ、残りのメンバーで幕営を行った。18分という時間で、ペグ打ちも行ったことを考えると、妥当な時間だったのではなかろうか。

 幕営と気象記録が無事終了し、各自食事と炊飯の準備に取り掛かった。今回は食事係の能登の発案で「クラムチャウダー」「ご飯」「味噌汁」というメニューになった。一般的にクラムチャウダーはスープのイメージだが、今回はシチューのようにおかずとして採用したと言う。

 11月、立冬を目前にし、18:10に食事を開始した頃にはもう外が真っ暗だった。前述のイメージからみな少し疑いのあったクラムチャウダーではあったが、いざ食べてみると食事係がじっくり煮込んでくれたおかげで絶品であった。秋になり、寒さが厳しくなる中、温かくて美味しい夕食を食べられることは体の面だけでなく精神的にも部員たちの大きな助けとなったことだろう。昨年度のワンパターンで味気ない食料計画と比べると、Nの計画性には脱帽するばかりである。1年生のSも、今回不参加のKの代わりとして、食事係をしっかりサポートしてくれていた。

 その後は18:38に食事を終了し、18:40にミーティングを行い、19:00に就寝という運びとなった。この日はもちろん医療品の貸出などなく、行動もすべて順調であった。登山する翌日が本番とはいえ、順調な滑り出しであったと思う。明日の行動を反芻しながら、冷える身体を丸くして眠りについた。



11月6日 〈2日目〉  晴れ

 この日の起床時間は3:00であったが、私がいたミドルテントは2:30起床となった。これは夏合宿で二度寝による寝坊をやらかした我々の反省からくる行動でもあった。しかし、余りにも早く準備を始めてしまったため、A先生からお叱りを受ける形となってしまった。登山には一定時間の休息が必要なわけであって、今度からは早起き以外で何か対策を考えねば、と朝から早々に反省させられるスタートであった。

 朝食は前々回にあたる両神山の仲秋山行より導入された「ビスケット」「スープ」というラインナップで、以前のうどんや棒ラーメンに比べると格段に手軽で食べやすく、今回も再びそう感じた。これもやはり食事係のNのおかげである。各自朝食を済ませ、撤収を4:30に開始し、11分で撤収を完了させた。上出来である。

 落し物確認と準備体操の後、パーティを組み、都会から見るよりも遥かに綺麗なオリオン座や北斗七星が輝く中、5:05に出発した。

 コースタイムでは大菩薩嶺山頂付近の雷岩まで1本と少しと言ったところであったが、1本で到着という良い滑り出しとなった。ここに来て、まず、私が初めてCLをして驚いたのが、「自分の歩く速さは他人から指摘されないと中々気がつくことが出来ない」ということであった。部活内の同級生に比べると体力のない私でさえ、最初の1本では「ペースが早いよ」という掛け声がSLのNから入ることが多々あり、ペースを作ることは並大抵の努力では出来ないのだなぁと実感した。今までCLをこなしてきた先輩方やN、Mの努力を思い知った。

 雷岩に到着後休憩を取り、荷物を置いてピストンで大菩薩嶺まで向かい、記念写真を撮った。景色としては雷岩の方が格段に良く、まるでカレンダーやコマーシャルで見るかのような美しい富士山が前方に聳え立っていた。

 部員達の日頃の行いに感謝しつつ記念写真を撮り、6:25に雷岩を出発。介山荘、大菩薩峠を通過したのが6:57頃であった。石丸峠で7:22に休憩を取り、7:32に再び歩き出す。

 急な下りが多くなってきた印象を受けた頃、「靴ズレの疑いがある」とNが申し出たため、連続する下りで疲弊しきっていたNのことも考慮し、8:21に小休止を取った。結果的には靴下の緩みから来る違和感だったようで、予め靴ズレ対策を取っていたおかげで大事には至らなかった。

 8:26には歩行を再開し、8:30に榧ノ尾山に到着、昼食を取った。今回の行程も相まって時間的には朝食のような形になってしまったが、皆早朝からの行動で空腹だったこともあり、この時間とした。

 昼食のメニューは「サンドイッチ」。前回の秋季第1回山行から導入した新たなスタイルのサンドイッチだ。最大の変更点としてカットサラダの小袋を持参することで、行動中の野菜摂取を可能にした点があるが、個人的にこれはかなり大きいアドバンテージであると感じた。ジャムを塗りたくっただけの以前までのサンドイッチと比べ、栄養面、部員達の精神面でかなりの違いが生まれたであろう。少し木々が開けた榧ノ尾山で紅葉を見ながら、束の間の楽しい時間を過ごした。

 記念写真を取った上で、出発は9:22となった。10:26には棚倉小屋跡を通過し、順調かと思われたその時、思わぬ事態が発生した。10:40に通過した分岐で方向を間違え、本来のルートとは違うルートに入ってしまっていたのだ。幸いすぐに気が付いたが、SLのNがGPSのデジタル地図を携行していなければこのまま間違ったルートで進んでしまっていた訳で、その先には九十九折の箇所があり、下りを苦手とするNをはじめとした部員達に迷惑をかけるところであった。

 初めてのCLであったとはいえ許されないミスを犯してしまった。ここに来てCLとしてのルートファインディングの難しさ・厳しさや、CLとSLの連携の大切さを思い知った。今回の山行中の様々な事においてサポートしてもらったSLのNには頭が上がらない。

 気を取り直して引き返し、林道終点を通過したのが11:37、そして小菅の湯に辿り着いたのが12:00。解散式を行い今回の山行は終了した。解散後は小菅の湯は名前の通り温泉なので、そこで各々の疲れを癒すことが出来たようだ。

 登山というのは下手すれば命に関わるスポーツであり、そのスポーツを先頭に立って率いるのであるからCLというのは大変な仕事だ。今回の出来事や、秋季第1回山行から導入したCLの腕章が尚更それを実感させる。

 今回が私たち2年生にとって最後の秋季山行であることもあり、個人的に思い出深いものだった。また部員達の体力やレベル、絆も格段にアップしてきており、医療品の貸出は2日通してゼロ、足がつったなどの報告もなかった。日々練習に励む彼らの姿を見て、ワンダーフォーゲル部の今後も安泰だと感じた。


《「稜線」第39号(2017年度)所載》



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