2015年 秋季第2回山行 山行記

筆者 R・N (1年生)

 秋1山行から二週間、今回は新体制となって二回目の山行として奥多摩の御前山・大岳山へ登る。新歓山行で三頭山に登頂したため、今回の御前山・大岳山へ登頂すると奥多摩三山を制覇することとなる。

11月14日(土) 〈1日目〉  雨

 学芸発表会と山行の日程が重なり、集合の遅延が懸念されたものの、集合時間内に全員が集合でき上々の滑り出しとなった。

 代替わりを経て少人数となった私達のパーティには、これまで以上に一人一人の「行動の質」が問われる事となる。今回の場合、乗る電車は13時18分の拝島行きなので集合時間に多少遅れても影響は無いのだが、部として設定した時刻に定刻通り集合する事は大切な事で、それを順守できた事はとてもいい傾向である。

 しかし、今回の山行は例年より1週間ほど遅い日程であり、気温の低下が心配される上に天候が振るわず、私達1年生にとって初の雨天の中での山行となる。そのため精神面・肉体面ともにより一層の注意が必要となりそうだ。また、Mは風邪で火曜と水曜の学校を欠席しているため体調面が心配される。

 氷川キャンプ場に到着すると早速幕営を開始した。雨天という事でキャンプ場内はテントが4張しかなかった。そのため水場に近い好立地な場所を確保する事ができ、部員全員の迅速な設営もあって、前回の17分を大きく上回る11分での設営を実現できた。
 その後早速、米の吸水に取り掛かろうとした時、問題が発生。Mが米1合を持参していない事が発覚した。幸い他の部員が1合ずつ持参していたため米不足は免れた。少人数であるがゆえ、忘れ物は一大事になりかねない。そのため各部員は準備会で確認した持ち物をしっかりチェックしておきたい。

 普段なら石切りをして暇を潰している時間なのだが、雨天のためそれが出来ない。そんな中、私はテントの中に入り、リアルタイムで山行記を書いていた、天気の好転と山行の無事を祈りながら。

 夕食の準備はテントの中で行った。今回のメニューは季節を感じられる、 きのこカレーである。私の発案でカレーの中にきのこを入れる事となったのだが、コッヘル内に水を張って舞茸を茹でていると、徐々に茹で汁が茶色くなっていった。少し心配になったものの、水を捨てるわけにはいかないため調理を続行した。一方、炊飯の方はMが一人で奮闘していた。途中一度だけ吹きこぼれそうになったものの、概ね順調に炊飯の作業を進めていた。

 その後も作業はスムーズに進行し、通常よりも少し早い17時17分に食事を開始した。当初茹で汁が茶色くなり、心配していたきのこカレーだったが、蓋を開けてみれば、史上最高の出来であった。下界でキッチンを使って調理をするよりも上手にできていたのではないかというくらい完成度が高かったのである。家庭科で学習したのだが、きのこ類には旨味成分であるグアニル酸というアミノ酸が含まれており、今回のカレーが普段以上に美味しくなったのは、舞茸からグアニル酸が豊富に染み出したためと考えられる。飯はMの努力の甲斐あり、多少の焦げができたものの美味しく炊き上がった。本人は満足していないようだが、なかなかの出来であったことに間違いない。

 食事の片付けが終わるとミーティングを行った。ミーティングでは、下山先のバスの時刻やエスケープの選択肢などが部員内で共有された。
 このあたりから徐々に雨足が強くなり、テント内が雨の音に支配されるようになった。明日の歩行に対する不安が広がる中、就寝した。



11月15日(日) 〈2日目〉  雨のち晴れ

 朝起きると学芸発表会から戻り、夕食を済ませ夜に合流したS先生の姿があった。雨の音がテント内に強く鳴り響く中、部員たちはせっせと朝食の準備に取り掛かった。朝食のメニューはうどんで、私は教員テントに伺い、M先生とS先生のお二人と朝食をとった。私が教員テントから帰るとMが朝食に苦戦していた。どうやら普段から朝食を食べる習慣がないようで、うどん一玉を完食するのは大変なようだ。
 その後、撤収まで1時間ほど時間があったので、片付けを済ませ、ポリタンクに水を満たした者から各自、追加で睡眠をとったり、音楽を聴いたりと思い思いの時を過ごした。そんな中、私とMのヘッドランプの電池切れが発覚し、2人とも予備電池を持参していたため、電池を交換することで対応した。

 撤収を開始したのは5時で、こちらも前日の設営同様、素早く終えることができた。そして氷川を後にして奥多摩駅へ向かい、バスで境橋へと向かった。

 前回の反省を生かし、現地で準備体操を終えると奥多摩都民の森としてコンクリートで舗装された道をひたすら歩いた。体調が心配されるMもSLとして順調に歩行を進めていた。しかし、ここで問題発生。ルートファインディングを誤り、舗装道路の側道に入ってしまい、それを1本目の休憩まで気付かなかったのである。しかし、後に合流することが出来ることも休憩中に同時に確認することができた。「秋1山行でもルートファインディングを誤ったから反省しないと」という言葉がO先輩から聞かれた。

 しかしその時、新事実が発覚。本来辿るべき正規ルートの道が崩落で通行止になっていたのだ。そのためルートファインディングを誤ることなく正規ルートを辿っていたとしたら、崩落箇所で行き止まりとなり引き返さなければいけない事態になっていたのだ。その崩落は昨年に起きていたようだが、山と高原地図には、先輩が持っている2014年版と1年生が持っている2015年版ともに未記載であった。ルートファインディングの誤りは結果オーライに終わったが、CLだけでなくパーティ全体が分岐や看板に気を配って山行を進めていくことがパーティ内で共有された。

 その後は順調な歩行が続いていたが、ここでまたまた問題発生。登山道が倒木により通行止となっていた。この倒木は今年の6月下旬に起こったようで、直近の出来事であったため部員は誰一人、情報を知らず、こちらはそばにあった舗装道路を通って迂回することで対応した。しかし通行止区間はとても限定的で舗装道路と登山道の交点で再び登山道へ復帰し、正規ルートで御前山を目指すことになった。

 暫く急坂を登っていると、御前山避難小屋が見えてきた。ここはキャンプ場以外で用を足せる貴重な場所ということでトイレ休憩がとられた。3分ほどのトイレ休憩の後に歩行を再開すると御前山の山頂へ15分ほどで到着した。

 CLの判断でここで昼食をとった。今回のパンの友はコーンマヨとブルーベリージャム、そしてハムである。Mの提案でツナマヨやコーンマヨなどの食品を秋1山行から持って行っているが、とても美味しくて大正解である。またこの際に山頂でスープなどの汁物を作成してもいいのではとS先生から提案があったため、今後の山行において検討をしたい。

 その後、CLのO先輩を中心にこれ以降のルートの検討が行われた。案としては、鋸山から奥多摩方向へエスケープする案と、白倉へエスケープを行う案の2つがあった。いずれも日没等を考慮しての検討だが、結論は鋸山付近の分岐を通過する時刻を見て出すこととした。

 御前山の山頂を後にすると鋸山までのアップダウンに満ちた登山道を歩き続けることとなった。下り坂を下りきった後に訪れる登り坂は普段の登り坂以上に傾斜が急に感じ、精神的に大変である。この頃から徐々に弱まっていた雨が完全に止んだため、部員は雨具を脱ぎ軽装での登山が出来るようになった。前日にMがとった天気図と天気予報が的中した形となった。しかし依然として地面はぬかるんでおり、歩行中に足を滑らせる者は非常に多かった。

 ここまでコースタイムよりも少し遅いペースで山行を進めてきたが、この区間ではコースタイムから大きく遅れることを余儀なくされた。理由としては度重なるアップダウンによって部員の足が著しく疲労した上に、雨でぬかるんだ地面を慎重に歩行していたためと思われる。

 そして、コースタイムが通常より延びると問題になるのは水不足だ。今回の場合、部員5人の水でなんとか下山まで足りたものの、かなり危なかった。実は先ほど通過した御前山避難小屋には水場があり、そこで水を調達することは可能だったのだ。事前に通過地点の情報を仕入れておくことの重要性を認識し、良い反省点となるだろう。

 部員たちの疲労がピークに達する中、鋸山前の分岐を迎えた。ここでCLのO先輩は、鋸山〜奥多摩駅へのエスケープはせず、代わりに時間短縮のため、鋸山頂上へのアタックは行わずにすぐに大岳山へ向かうという判断を下した。

 途中の休憩中に、私が喉の痛みを感じ、初期の風邪の症状と考えたため、風邪薬を3錠服用し大岳山とへ向かった。幸い痛みは治まり、歩行に影響はなかったが、山行中の体調管理は徹底したい。

 また、その後の歩行の合間の休憩でS先生が、私たちが登山道として歩行している道以外にピンクのリボンが続く側道があることを指摘した。確かに太い道の脇に細い登山道が確認でき、そこにはピンクのリボンが等間隔で吊られていることが確認された。そのためザックを休憩場所に置いて、脇の登山道を数人で歩行し、ルートの検証が行われたが細い登山道の方は途中で道がなくなってしまっていたため、本来の登山道を歩行することが妥当であると判断して歩行を再開した。

 歩行を再開してしばらくすると対向から登山者が歩いてきたため、「大岳山の方向はこちらでいいか」という旨の質問をしたところ、大丈夫であるとの返答があったため、登山道の判断は成功したと確認できた。

 その後は概ね当初の見込み通り歩行し、大岳山には14時ごろ到着した。すぐさま写真を撮り、休憩する暇もないまま白倉と上養沢への分岐を目指した。どうやらその分岐で下山先の判断を下すようだ。

 しかし、山頂を出発した直後に問題発生。ルートファインディングを誤り、時間短縮のために選択していた大岳神社の境内を通らない道への分岐を見落とし、時間のロスを起こしてしまった。大岳山の頂上において私とMは地図を開き、ここからのルートを確認しようとしたが、確認し始めて間もなく出発の合図がかかり、頂上を急ぎ足で出発してしまったのだ。頂上などのチェックポイントへ到着したらその都度地図を広げながら道を確認するという作業を決して怠ってはならないのだと強く痛感した。

 大岳山を登り終えると下りのみの登山道に入っていった。疲労困憊の中、部員たちは奮闘を見せ、コースタイムを大幅に上回る時間で下ってくることができた。慌てすぎは良くないが、コースタイムを意識しながら怪我なく歩行ができていたのではないかと感じた。

 白倉と上養沢の分岐では、上養沢へ行っても時間的には問題なかったのだが、疲労を考え、大事をとり白倉へのエスケープを決めた。白倉まではあまり時間がかからず、こちらもコースタイムを大幅に上回る時間で歩行した。白倉のバス停へ到着するとバスまで30分前後時間があることから、解散式を行った。

 この山行を振り返ると、代替わりしてから秋1山行、秋2山行と2つの山行を重ねた中で、前回の反省として注意されていた私語については、大幅に改善され、無駄な私語は皆無であった。その結果、雨の中で安全な山行を実現できた。歩行中の私語を無くすだけでパーティの集中力が一気に高まっていたため、これからも歩行中の会話は山行に関係する内容のみとすることをこれからも徹底していきたい。

 また、反省点として「景色へのアプローチ不足」が挙げられる。今回の山行では私語がなく、パーティ内部の雰囲気は非常に引き締まっていて、良かったと思うのだが、ルートファインディングの誤りが相次いでしまい、結果的に雨による歩行の遅延を助長してしまった面があった。そのため、各部員は集中力を持続させ、全体としての雰囲気を保つといったパーティ内部の様子を気にかけることの他に、山行中に移り変わる「景色」に積極的にアプローチし、前の部員を追尾するだけでなくパーティの外部の様子を一層気にかけていく事がこれからの大きな課題であると考えた。

 前回の山行と比較して、パーティ全体が一体となってきた印象があるため、新1年生を迎える用意をするためにも、日々の練習から部員同士でコミュニケーションを取り、パーティ自体の実力を高めていくことが重要だ。


《「稜線」第38号(2016年度)所載》


避難小屋から御前山に向かって登る 御前山山頂にて



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