2011年 新歓山行 山行記

筆者 Y・K (2年生)

 ついに誰も来なかった。というのも新入生歓迎山行ということで蕎麦粒・川苔を往くのだが、その歓迎すべき新入生がゼロだったのだ。憂々しき事態ではあるが、芽吹く新緑に期待を抱いて、奥多摩へ向かった。

5月7日 〈1日目〉

 集合は12時55分。いつも通りということで油断していると、生物の実験が長引いてしまった。小雨の中を石川と走る。しかし電車そのものには間に合ったようで、難なく奥多摩へ到着。そのまま氷川キャンプ場へ降りて行く。ここはすでに降りやんでいるようだったが、陰鬱な天気に普段は大学生で賑わう河原もテントを張れるところがすぐ決まるくらい空いていた。幕営は問題なく進み、少し時間が余ったので河原へ降りたりしてみる。多摩川の上流は今日も澄んでいる。

 それはともかく16時半にはカレーを作り始める。一行は上にある調理場へ向かう。ところがバンガロー使用者でないと使えないようだった。去年は問題なかったというのに。仕方なくテントに戻って調理を始める。毎年流動性に定評のあるカレーだが、今回は微調整を繰り返して作ったのでなかなかおいしかったと思う。カレーを食べた後は明日に備えて寝るだけだが、人が少なくてもここのキャンプ場はやはりうるさかった。



5月8日 〈2日目〉

 4時に起きて早速うどんを作り始める。今回は新食材のわかめ・笹かまが控えていて胸を躍らせ調理を進めたのだが、笹かまを再びうどんに投入することはないだろう。夏至も近づき食べ始めるころにはすでに明るくなっていて、撤収もやりやすかった。

 奥多摩駅でバスが発車するまでのんびり過ごす。バスも定刻通り発車。川乗橋で結構降りたが、今日は東日原まで来る人が割合多いように感じた。

 バスを降り早速歩き始める。登山口に入るといきなりマムシが出てきた。もう少し冬眠してもらいたかった。とはいえすでに5月であり、今日の最高気温は25℃にもなるそうだ。確かに朝日を浴びると袖をまくりたくなるが、日蔭は涼しくかなり歩きやすい環境だった。涼しさに加え、一本目のスローペースが幸いし、難関の急坂を無事登り切ることが出来た。ちょうど傾斜の緩くなった針葉樹と広葉樹の境目で休憩。広葉樹はちょうど芽吹いたようで、新芽が日に透け目に眩しい。実に颯爽としている。それに比べ針葉樹は鬱蒼と茂り暗いことこの上ない。ここまで来ると間伐もされないようだ。

 2本目もゆっくり登っていく。バードーウォッチャーなら誰しも歓喜するオオルリやキビタキのさえずりを聞きながら登る新緑の山行は今までで一番の心地よさだった。さらにどこからか桜の花びらも舞ってきて坂道も苦にならないほど陶酔してしまった。去年は気付かなかったが、5月の奥多摩は大変快適である。

 2本の歩行で尾根まで上がったようだ。風の吹く尾根を進むので、歩行速度も上がる。3回目の休憩の直後一杯水を通過する。このあたりの広い尾根道もなかなか快適だ。一回休んで蕎麦粒山の頂へ到着。相変わらず蕎麦粒への道は急である。お昼も近いので蕎麦粒で食事にする。新食材のツナも油が空き缶に残ることなく、おいしく頂けた。

 蕎麦粒を降りて一本で踊平に辿り着く。アップダウンの激しい道だった。踊平から曲ヶ谷北峰麓の分岐点まで行き、そこから川苔山へピストンすることに。曲ヶ谷北峰までの道は急だったが、馬酔木や赤八汐が綺麗だったので良かった。川苔山はやはり人気なようで、人も多かった。確かに御前山、大岳山、丹沢、雲取山、大菩薩嶺などが一望できるいい場所である。条件が良ければ谷川岳まで望めてしまうというから驚きだ。

 川苔から元の道を辿り、ザッグを背負い鳩ノ巣駅へ下り始める。比較的ゆっくりと下りて行ったため歩行には何の問題もなかったが、大根ノ山ノ神付近の車道が地震の影響で崩壊していたので迂回を余儀なくされた。改めて今回の震災は凄まじいものだったと思う。そこから鳩ノ巣までは1本かからなかったが、西日が暑かった。

 駅に着いたのは16時半を回っていた。かなり長い歩行であったと思う。しかしこれといった問題もなかったのでよかったと思う。個人的にはかなり快適な山行だったのだが、1年生がいないというのはかなり寂しいものがある。震災の影響など色々あると思うが、是非次回の山行には新しい顔が見たいものだ。


《「稜線」第33号(2011年度)所載》


蕎麦粒山山頂にて 蕎麦粒山から川苔山に向かう

川苔山山頂にて ヤシオツツジ (川苔山からの下りで)


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